固定資産の「除却」とは?廃棄との違いから節税メリット、仕訳、税務調査対策まで解説

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使っていない機械に税金を払い続けていたり、高額な廃棄費用が気になり、機材をそのまま置いていたりしませんか?固定資産を「除却」すると、償却資産税の削減や法人税の節税といったメリットが受けられる可能性があります。しかし、ルールや注意点が分からない人も多いでしょう。

そこで本記事では、除却の基礎知識や廃棄との違いから、高度な節税手法や税務調査で否認されないためのコツまで解説します。除却について理解を深めたい場合には、ぜひ参考にしてください。

目次

固定資産の「除却」とは?

除却とは、企業や店舗で使わなくなった固定資産を、固定資産台帳や会計帳簿に記載するのをやめる会計上の手続きのことです。固定資産という価値が、企業や店舗内で無くなったことを、財務諸表に反映させます。

除却と廃棄の違い

除却は、廃棄と同じだと思うかもしれません。しかし、両者には違いがあります。除却はあくまで、帳簿上のデータから消す会計処理のことです。一方の廃棄は、現物をゴミとして処分することを指します。

つまり固定資産を捨てていなくても、一定の要件を満たしていれば、除却として処理を行えます。

除却が必要なタイミング

除却を行うとよいタイミングは、主に2つです。

1つ目は、資産を実際にゴミとして廃棄したり、売却したりするときです。2つ目は、現物は残っているものの、故障や型落ちなどによって、事業で一切使わないことが確定したときです。

特に後者の場合、帳簿に残し続けてしまうと、実態のない資産に対してムダに税金を払い続けることになります。経営判断を誤らせる要因にもなるため、早めに除却することが重要です。

なぜ除却が必要なのか?放置する2大リスクとメリット

使わなくなった固定資産をそのままにすることは、経営にとって、百害あって一利なしといっても過言ではありません。ここでは、使わない固定資産を除却しないリスクと、除却するメリットについて解説します。

リスク1:不要な償却資産税を支払い続けてしまう

固定資産台帳に資産が残っている限り、たとえ減価償却が終わって簿価が1円になっていたとしても、毎年「償却資産税(標準税率1.4%)」が課せられ続けます。一つひとつは少額でも、積もり積もれば大きな負担になることもあるでしょう。課税標準額150万円の免税点をわずかに超えているケースでは、不要な資産を除却するだけで、自治体に支払う税金をゼロにできる可能性もあります。

リスク2:税務調査で脱税を疑われる可能性がある

現物がないのに帳簿に資産が残っている状態は、不適切な減価償却費を計上し続けているとみなされがちです。税務調査では、経費の水増しを懸念され、脱税を疑われる可能性があるでしょう。

また金融機関からは、資産管理がずさんな会社と評価されるケースが見受けられます。すると、融資判断への悪影響も懸念されます。健全な内部統制をアピールするためにも、実態に合わせて台帳を管理することが大切です。

メリット:節税効果と社内スペースを有効活用できる

除却を行うメリットとして、法人税の課税所得を圧縮できる点が挙げられます。利益が出ている期に除却を行えば、大きな節税効果が期待できるでしょう。

また、除却をする際に現物も処分すれば、これまで占領されていた倉庫や工場のスペースが空きます。スペースが空いたことから倉庫を解約すれば、賃料の削減につながります。また、空いたスペースに他の備品を配置し直せば、オフィス環境の最適化が可能です。

除却の仕訳方法

除却を行う際には、資産の計上方法に合わせて、正確な仕訳が求められます。ここでは、基本の仕訳パターンに加え、廃棄費用が発生した場合や廃材に価値があるケースについても、仕分け方法を具体的に解説します。

除却の基本的な仕訳

除却の仕訳には、以下の2種類が存在します。

  • 直接法…資産の価値を直接減らす
  • 間接法…減価償却累計額を用いて相殺する

たとえば、取得価額100万円で、減価償却累計額が80万円(未償却残高20万円)の機械を除却する場合を考えてみましょう。直接法では、貸方に現在の価値である「20万円」を記入して資産を消し込み、同額の20万円を固定資産除却損として計上します。一方の間接法では、貸方に取得価額の100万円を、借方にこれまでの累計額80万円を記入して相殺し、差額の20万円を除却損とします。

いずれの場合も、期中に除却を行う際は、期首から除却日までの期間に対応する減価償却費を月割りで計算します。

廃棄費用が発生した場合の処理

資産を処分する際に、解体費や運搬費といった、廃棄コストが発生することがあるでしょう。これらの費用は、原則として「固定資産除却損」に含めて処理することが可能です。支払った手数料などは消費税の課税仕入れとなるため、経理処理の際は税区分にも注意しましょう。支払手数料としての処理よりも、除却損にまとめる方が、何のための費用だったのかを後から把握しやすくなります。

スクラップに価値がある場合の仕訳

除却する機械や設備を業者に引き渡す際、鉄くずなどの廃材として売れる場合があります。この場合、見積もられた売却可能価額を「貯蔵品」勘定などで計上し、その分だけ除却損から差し引きます。計算式は以下の通りです。

固定資産除却損 =(資産の未償却残高 + 撤去費用)- スクラップの見積価額(貯蔵品)

たとえば、未償却残高が20万円の機械を処分し、鉄くずとして2万円で売れる見込みがある場合、除却損は18万円です。除却時に価値が確定していれば、この計算に基づいた金額を除却損として計上します。後日、実際に売却して現金を受け取った際は、計上していた貯蔵品を取り崩します。見積額より高く売れた場合は、その差額を雑収入として処理しましょう。

形がないソフトウェアや、20万円未満の資産の除却ルール

物理的な形がないソフトウェアの除却は、「今後二度と使用しない」という社内の決定が根拠となります。たとえば、プログラムのアンインストールやサーバーからの削除が証明となります。

一方で、20万円未満の「一括償却資産」には注意が必要です。これらは税務上、3年間で均等償却することが義務付けられています。たとえ1年目で廃棄したとしても、残りの期間も強制的に償却を続けなければならず、一括で除却損を出すことはできません。

有姿除却で節税を成功させるための要件と注意点

有姿除却は、現物を廃棄せずに、除却損を計上できる方法です。節税として効果が高い手法ですが、税務署のチェックが厳しい項目でもあります。ここでは、有姿除却を認めてもらうための要件と、やってはいけない禁止事項について解説します。

有姿除却とは?捨てずに除却損を計上する方法

有姿除却とは、資産が実際に存在する状態のまま、帳簿から除却することを指します。ボイラーや大型機械のように「解体費用が膨大で今は捨てられないが、もう二度と使う予定がない」場合などに、例外的に認められた計上方法です。

有姿除却を利用すれば、高い廃棄費用をかけずに、今すぐ帳簿上の未償却残高を全額経費化できます。そのため、キャッシュフローの改善に寄与するでしょう。

使っていない証拠と客観的な証明がある

有姿除却が認められるには、今後一切使用しないことを、客観的に立証する必要があります。たとえば、以下のような状況証拠をそろえます。

  • 最新モデルへの買い替えにより旧型が不要になった
  • 部品の製造終了によって、修理不能になった

実務においては、役員会での除却決定稟議書や、製造ラインから切り離された状態の写真を保管することが大切です。

有姿除却を適用した資産を二度と使えない理由

有姿除却を適用して損失を計上した後に、その資産を再び稼働させることは許されません。もし再稼働が発覚した場合、税務署からは「最初から使うつもりだったのに、経費を水増しするために嘘をついた」とみなされるでしょう。すると、重加算税などの重いペナルティを課されるリスクがあります。

そのため、現場の人間が「予備機として使えるかも」などと勝手に再稼働させないよう注意が必要です。再稼働を防ぐよう、使用禁止のラベルを貼るなど、厳格に管理しましょう。

有効な税務調査対策と証憑管理のポイント

税務調査において、固定資産の除却は、架空の損失計上ではないかと疑われることがあります。ここでは、税務調査における対策と、証憑管理のポイントについて解説します。

廃棄証明書と写真を保存する

実際に処分した場合には、産廃業者が発行する「産業廃棄物管理票(マニフェスト)」が証拠になります。いつ、どこで処分されたかが公的に証明されるからです。

また、現場担当者に「処分前の姿」「解体作業中の様子」「トラックへの積み込み完了時」の写真などを、スマホ等で撮影してもらうことも有効です。その際には、日付もメモするとよいでしょう。

固定資産台帳を定期的にチェックする

少なくとも年1回は、固定資産台帳と現物を、1対1で照合する作業を行いましょう。タイミングは、決算前や業務の閑散期がおすすめです。

その際には、台帳にあるのに現物がないものや、現物があるのに台帳に載っていないものを洗い出します。除却漏れがあれば、事実確認をしたうえで、適切な対応を行いましょう。また、定期的に確認している事実自体が、税務署に対して「資産管理が適切に行われている」という信頼感を与えることにつながります。

顧問税理士と連携する

特に数千万円単位の高額な資産や、判断が難しい有姿除却を行う際は、独断で処理せず顧問税理士と協議することが大切です。不適切な処理が利益操作と疑われれば、重加算税などの重いペナルティを課される恐れもあるからです。

また税理士は、除却理由が税務署に通用するかについて、プロの視点で判断してくれます。赤字転落による銀行評価への影響など、経営面のアドバイスも期待できます。

適正な除却処理で健全な財務管理を

固定資産の除却は、節税や社内スペースの有効活用につながります。また、適正な処理を行うことで、税務調査のリスクを回避できます。

特に、現物を残したまま節税を行う有姿除却や、高額な設備の除却判断は、一歩間違えると利益操作とみなされる危険もあります。実務において少しでも迷う点がある場合や、税務調査を見据えた確実な処理を行いたい場合は、専門家への相談をおすすめします。

二見達彦税理士事務所では、各企業の状況に合わせた適正な除却アドバイスや、複雑な税務判断のサポートを行っています。プロの知見を活用し、適正な除却処理を行いたい場合には、二見達彦税理士までお気軽にお問い合わせください。

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