収益改善のポイント|企業体力を抜本的に強化するためのステップを解説

会社を長く続けるには、売上だけでなく、稼ぐ力を底上げする視点が欠かせません。とはいえ、収益を上げようとしても、何から始めればよいのかと悩む人も多いのではないでしょうか?そもそも収益改善は、単純にコストを削減することではありません。ムダを削りつつ、利益を生み出す体質へと整える取り組みのことです。
本記事では、収益改善の必要性をはじめ、企業にもたらすメリット・収益改善の進め方について解説します。
「収益改善」の重要性
企業が成長し続けるために、収益改善は欠かせません。ここでは、収益改善の重要性・メリットについて解説します。収益改善の定義や、混同されがちな「売上向上」との違いについても見ていきましょう。
売上向上との違い
収益改善という言葉を聞くと、売上を伸ばすこと(売上向上)を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?しかし、収益改善と売上向上の両者の本質は異なります。まず売上向上は、販売量や顧客数を増やすなど、量を増やすことに焦点を当てています。一方の収益改善は、コストのかかり方や日々の仕事の流れといった、利益の質に着目することが特徴です。
収益改善に取り組めば、たとえ売上金額が同じでも、会社に残る現金は増える傾向にあります。質が改善されることから、財政基盤の強化にもつながるでしょう。
収益改善を図るメリット
収益改善がもたらす効果は、利益額が増えるといった表面的な内容だけではありません。ここでは、収益改善を行うことで、どのようなメリットがあるのかについて「3つの側面」から解説します。
競争力維持
金融機関や投資家がチェックしているのは、企業の売上規模だけではありません。いかに効率よく利益を生み出すかといった、収益性も評価しています。収益改善によって利益体質が強化されている企業は、「返済能力が高い」「投資リターンが期待できる」と判断されます。その結果、低金利での融資や大規模な資金調達など、他社より有利な条件で話を進めやすくなるでしょう。
資金調達
企業の収益が安定していることは、金融機関や投資家に対するアピール要素になります。金融機関や投資家は、収益が高い企業に対し、「貸したお金をきちんと返してくれる」「出資すればリターンが期待できる」といったプラスの判断をしやすくなります。
また社会的な信用の高さは、資金調達において有利になるでしょう。具体的には、低い金利で融資を受けられたり、大規模な資金調達がしやすくなったりと、他社より有利な条件で進めやすくなります。
ステークホルダーへの価値提供
従業員への給与や株主に対する配当の原資は、売上ではなく利益です。収益改善によって安定した利益を確保できることで、さまざまなステークホルダーへの還元が可能になります。たとえば、従業員には賞与や働きやすい環境を還元できるでしょう。また、株主には安定した配当を配れます。顧客には、より質の高いサービスを提供することが可能です。
現状を正確に把握する「経営の健康診断」のポイント
企業の成長を考える際には、まず「自社の現状」を正確に把握することが欠かせません。企業の現状を確認するプロセスは、人間で言えば、健康診断に該当します。ここでは、経営の健康状態を正しく把握できるよう、2つのポイントについて解説します。
財務三表(損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書)から課題を読み解く
経営課題を把握するには、企業の現状を把握できる「財務三表」を読み解くことが大切です。財務三表とは、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書のことです。三表からは、それぞれ以下のような内容を読み取れます。
- 損益計算書:どれだけ儲けたか
- 貸借対照表:どのような財産を持っているか
- キャッシュフロー計算書:お金の流れが健全か
上記で把握した数値を分析し、売上高利益率や自己資本比率といった経営指標を算出することで、自社の強みと弱みを客観的なデータとして可視化できます。たとえば「売上は伸びているのに利益が低い」といった悩みも、どのコストが収益を圧迫しているのかを特定できるでしょう。
数字には表れない「現場の声」を吸い上げ、問題の根本原因を特定する
財務データは、何が起きているかを教えてくれます。しかし、なぜ発生しているかといった理由までは教えてくれないでしょう。原因を探るためには、日々業務に携わる従業員の声を集める姿勢が欠かせません。たとえば、データ上で特定の工程に問題が見つかっても、原因が「頻繁な仕様変更」なのか「旧式化した設備の不調」については、現場の人間でなければわからないでしょう。現場の声を吸い上げる際には、個別インタビューや少人数でのワークショップなどがおすすめです。
収益改善を加速させる2大戦略「売上最大化」と「コスト最適化」
企業の利益を増やす方法は、「売上の最大化」と「コストの最適化」という2つのアプローチに集約されます。収益を適切に改善させるには、両者をバランスよく進めることが大切です。ここでは、「売上の最大化」と「コストの最適化」に関する2つの戦略について解説します。
売上を増やすための実践的アプローチ
売上は、「集客数 × 成約率 × 顧客単価」という3つの要素で成立しています。これらの要素をそれぞれ高めることが、売上を増やすことにつながります
まず集客数を増やす方法として、SNSでの情報発信やターゲットをしぼったWeb広告などが挙げられます。成約率を高めるには、期間限定キャンペーンの実施や、購入者のレビューを提示して安心感を与えるといった方法があるでしょう。顧客単価を引き上げるには、より上位の商品を提案する「アップセル」の実施や、関連商品も一緒に購入してもらう「クロスセル」を行うなどの方法が挙げられます。自社の課題に合わせて、それぞれの施策を組み合わせ、売上アップを目指すことが大切です。
コストを削減する具体的アイデア
コストを削減する際には、支出を「変動費」と「固定費」に分けて考えましょう。
売上に比例して増減する変動費では、例として原材料費・仕入原価・外注費などが挙げられます。変動費を削減する場合には、複数の業者から相見積もりを取って仕入れ先を見直したり、在庫管理を徹底して廃棄ロスをなくしたりといった対策が有効です。
一方で、売上に関わらず発生する固定費は、オフィスや店舗の家賃、水道光熱費などが挙げられます。これらを削減するには、家賃交渉や契約プランの見直しなどが考えられます。 また、両者にまたがる人件費や事務コストは、クラウドツール導入などで業務をデジタル化し、効率化を目指すのもよいでしょう。
収益改善計画の実行ロードマップ
優れた収益改善計画があっても、実行されなければ意味がありません。また成果へとつなげるには、適切な方法で進めることが不可欠です。ここでは、収益改善に向けた方法について解説します。
具体的で測定可能な改善目標(KGI/KPI)の設定方法
収益を改善するには、最初に具体的なゴールを設定することが大切です。たとえば、「半年で営業利益率を5%向上させる」といった全社レベルの目標(KGI)を決めます。次に、目標の実現に向けて、各部門や個人がどのような行動を取ればよいのかを、行動レベルの指標(KPI)に分けて考えましょう。たとえば、営業部門なら「新規顧客の獲得件数」を掲げる、製造部門であれば「製品1つあたりの製造コスト削減額」といった具合です。
優先順位を明確にしたアクションプランの策定と推進体制の構築
やるべきことが決まったら、次は「どの施策から始めるか」を決めましょう。すべての施策を同時に進めるのは、現実的ではありません。そのため、「期待できる効果の大きさ」と「実行のしやすさ」という2つの基準で、各施策を評価して優先順位をつけることが大切です。効果が大きく、すぐに取りかかれるものから始めるとよいでしょう。
優先順位が決まったら、それぞれの施策について、責任者と期限を決めます。担当者や期限を設定することで、「誰かがやってくれるだろう」といった曖昧さをなくせるため、計画の実行率を高められます。
定期的な進捗確認と軌道修正の重要性
計画は立てて終わりではなく、そこからがスタートです。計画通りに進んでいるかを確認し、必要に応じて見直しを行いましょう。その際に有効なのが、PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)です。たとえば、週に一度や月に一度、定期的に進捗会議を開き、KPIの達成状況を確認します。計画と実績にズレが生じている場合は、原因を分析し、より効果的な方法はないか、あるいは目標設定自体が現実的だったかを見直します。外部環境の変化や予期せぬ問題が発生することもあるため、その都度柔軟に対応し、常に最適なルートでゴールを目指すことが大切です。
収益改善に関するお悩みは二見達彦税理士事務所にご相談ください
収益改善を成功させるには、現状の把握からスタートし、戦略を立てる・計画を実行にうつすなど、体系的に進めることが大切です。しかし、財務データの分析や、客観的な視点での課題の抽出は、自社だけでは難しいケースも少なくありません。もし「何から手をつければよいかわからない」「スタートしたものの、計画通りに進まない」といったお悩みがあれば、税務と経営の専門家にご相談ください。二見達彦税理士事務所では、貴社の状況を分析したうえで、具体的な改善計画の策定から実行までをワンストップでサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
