相続税申告における必要書類リスト|入手方法から注意点まで徹底解説

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相続税を申告する際には、多くの書類が必要です。必要書類が不足すると、申告期限に間に合わない、申告内容に誤りが生じるといった可能性があります。場合によっては、税務署から問い合わせを受けたり、税務調査が実施されることもあるでしょう。

そこで本記事では、相続税申告に必要な書類の種類・入手方法・注意点などを解説します。相続手続きで不安を抱える場合には、ぜひ参考にしてください。

目次

相続税申告に必ず必要な基本書類一覧

まずは、すべての相続税申告で必要な「基本書類」と「入手先」について紹介します。確実に必要な書類であるため、漏れのないようにしましょう。

故人(被相続人)に関する書類

故人(被相続人)に関する書類は、自分と故人の身分関係を証明するために必要になります。書類によっては、すぐに入手できないものもあるため、余裕を持って用意することが大切です。

戸籍謄本(+除籍謄本も必要)

戸籍謄本とは、戸籍に掲載されている人の身分や、家族関係などが記された書類です。家族構成や婚姻歴・離婚歴などの情報が、時系列で記録されています。

【入手方法】
・本籍地を管轄する、市区町村の役場で入手(郵送での取り寄せも可能)
・マイナンバーカードがある場合は、コンビニエンスストアでの交付も可能

【注意点】
・戸籍謄本は故人の出生から死亡までの全てのものが必要。以前は昔本籍のあった市役所に戸籍謄本を依頼する必要があったが、現在では原則的に本籍のある市役所で故人の出生から死亡までの間に作成された全ての戸籍※を取得することがでる(※戸籍謄本は様式が改製されたり、その戸籍に所属している人がいなくなった場合には除籍謄本や改正原戸籍と呼ばれます)。

・相続開始から「10日以上経過した日」以降に取得する(例:2025年6月1日に死亡した場合、2025年6月11日以降に取得)

・コピーも可能(2018年の税制改正より、原本ではなくコピーもOKに)

住民票の除票

住民票の除票は、転出や死亡によって、住民票から抹消されたことを証明する書類です。仕様は住民票と同じで、転出や死亡した際の「世帯主」や「同居家族」などの情報が記載されています。

【入手方法】
故人の最後の住所地を管轄する市区町村役場で入手(郵送での取り寄せも可能)

【注意点】
手続きを行う相続人の本人確認書類及び戸籍謄本と故人の死亡を確認できる除籍謄本が必要

相続人全員に関する書類

相続税を申告する際には、相続人全員に関する書類も欠かせません。なぜなら、相続人のトータル人数によって、基礎控除額や法定相続分などが変わるからです。また、相続人すべての書類があることで、全員が相続人であると証明できます。

戸籍の附票

戸籍の附票とは、その戸籍が作られてから、現在までの「住所の変遷」を記録した書類です。たとえば故人が結婚で新たな戸籍を作った場合、戸籍の附票には、結婚後に戸籍を作った時点以降から亡くなるまでの住所変更履歴が、すべて記載されます。

故人と相続人が同一世帯であれば、「全員の写し」を取得します。一方で、故人と相続人が別々に住んでいれば、それぞれの「戸籍の附票」が必要です。

マイナンバー関連書類

マイナンバー関連書類は、相続人の本人確認と個人情報の照合に必要です。「マイナンバーカード」「通知カード」「マイナンバーが記載された住民票」などが該当します。またマイナンバー関連書類は、基本的に「相続人の本人確認」に使用されます。

印鑑証明書(遺産分割協議書がある場合)

遺産分割協議書とは、複数名の相続人の間で、故人の遺産をどのように分けるかを書面にした法的文書です。遺産分割協議書がある場合には、相続人全員の印鑑証明書が必要です。また印鑑証明は、基本的に本人のみが申請できます。代理申請をする場合には、委任状が必須です。

遺産分割に関する書類

相続人が複数人いる場合、各相続財産をどの相続人が取得するかを決める必要があります。故人が遺言書を残していれば原則的にはその遺言に従い、遺言書がない場合には相続人全員の同意によって分割方針を決めることができます。遺産分割に関する書類があることで、それぞれの権利関係を明確にでき、相続争いのリスクも軽減できるでしょう。

遺言書

遺言書は、故人の意思を証明する重要な書類です。遺言書には主に、故人自身が作成する「自筆証書遺言」と、公証役場で作成する「公正証書遺言」があります。

実務上は、信頼性が高く、家庭裁判所の検認が不要な公正証書遺言が用いられるケースが多くなっています。手続きには、公証役場で発行される「謄本」が必要です。公正証書遺言の有無は、全国の公証役場から検索して確認することができます。

一方、自筆証書遺言を相続手続きに用いるには、原則として家庭裁判所の「検認」を受けるか、法務局の「遺言書保管制度」を利用している必要があります。これらの手続きを経ていない自筆証書遺言は、そのままでは使用できません。

遺産分割協議書の写し

遺言書がない場合や、遺言書があっても話し合いが必要な場合、遺産分割協議書の写しが求められます。遺産分割協議書とは、相続人の誰が、それぞれどれだけ遺産をもらうかを示した書類です。相続人が1人の場合や、遺言書通りに遺産分割ができる場合には、用意する必要はありません。

【相続財産の種類別】追加で必要となる添付書類

相続財産の種類によって、必要な書類は異なります。ここでは、ケース別に「追加で必要となる添付書類」について解説します。

現金・預貯金がある場合の必要書類

預貯金の相続手続きには、被相続人の「預金口座の残高証明書」が必要です。金融機関に依頼すると、相続発生日(=故人が亡くなった日)の残高証明書を発行してもらえます。また残高証明書は、相続人であれば誰でも申請可能です。委任状があれば、相続人ではなくても申請できます。

故人の手元にある現金も、申告が必要です。この現金は「手許現金」と言われ、タンス預金や、故人の財布に入っているお金などを指します。相続税の申告で正確な金額を伝えられるよう、どこにいくら保管されていたかをメモしておくとよいでしょう。

不動産(土地・建物)がある場合の必要書類

土地や建物といった不動産の相続には、以下の書類が必要です。

  • 登記事項証明書(登記簿謄本):不動産の所有者や面積を記載
  • 固定資産評価証明書:不動産の評価額を把握できる
  • 公図:土地の境界や形状を示す

登記事項証明書と公図は、不動産の所在地域を管轄する「法務局」で入手できます。法務局まで行くのが難しければ、郵送やオンラインを活用するとよいでしょう。固定資産評価証明書は、不動産が所在する地域の市区町村役場で入手できます。

株式・投資信託など有価証券がある場合の必要書類

株式や投資信託などの有価証券を相続する場合、まず故人の口座から相続人の口座へ名義変更(移管)する手続きが必要です。名義変更を終えた後、相続人はその有価証券をそのまま保有し続けるか、売却して現金化するかを選択することになります。

これらの手続きを進めるにあたり、まずは相続財産の内容と評価額を正確に把握するために、以下の書類を取得します。

  • 残高証明書:相続の場合、故人が亡くなった日の残高が記載される
  • 配当金支払通知書:企業が株主へ配当金を支払う際に発行する書類です。中間配当や期末配当など、配当が行われる都度発行され、支払われた配当金額や源泉徴収された税額などが記載されています。相続財産に含まれる配当金や未収配当金を確認するために必要です。

「残高証明書」「配当金支払通知書」ともに、故人が株式や投資信託を申し込んだ、証券会社や銀行で発行可能です。相続人であれば、誰でも発行を依頼できます。

生命保険金・死亡退職金がある場合の必要書類

生命保険金がある場合
まず保険会社へ連絡し、保険金の請求手続きを進めます。この請求の際に、契約内容を特定するため「保険証券(保険証書)」や、保険会社から定期的に届く「ご契約内容のお知らせ」などが必要になります。

その後、保険金が支払われると、生命保険会社から「支払通知書」(保険金支払証明書などの名称の場合もあります)が発行されます。この通知書は、相続税の申告で、受け取った保険金額を証明するために必要な書類です。

死亡退職金がある場合
死亡退職金の相続手続きでは、故人が在籍していた企業から発行された「死亡退職金の支払明細書」などが必要となります。

債務(借金・ローン等)や葬式費用がある場合の必要書類

故人に債務がある場合や、葬式費用がかかった場合には、相続財産からそれらの費用を控除できます。債務がある場合には、「借入金の残高証明書」や「返済予定表」などの書類を用意しましょう。

葬式を行った場合には、葬儀費用にかかった領収書などを用意します。通夜や告別式の費用だけではなく、「葬儀で用意した料理代」「お布施や戒名料」「葬儀場に行く際にかかった交通費」「お寺に支払したお布施」も対象です。

相続開始前3年以内(一部7年以内)の贈与があった場合の必要書類

故人が生前に行った贈与のうち、相続開始から遡って一定期間前に行われた贈与は、相続税の課税対象となる場合があります。

相続税の対象になる贈与は、その事実と金額を証明するために、「贈与税申告書のコピー」や「贈与契約書」などの書類が必要です。

税負担を軽減する特例適用に必要な追加書類

相続税には、さまざまな税負担を軽減する制度が設けられています。適切に活用することで、節税が可能になるでしょう。ただし、これらの特例を受けるには、法律で定められた要件を満たす必要があり、要件を証明するために追加書類の提出が求められます。

小規模宅地等の特例を受けるための必要書類

小規模宅地等の特例とは、故人が「住んでいた家」や「事業を営んでいた建物」の土地を、最大8割ほど評価額を下げられる特例です。通常より評価額を低くした状態で土地の値段を計算するので、相続税の金額を下げられます。相続税の申告前に土地を売却すると、特例を受けられない点には注意しましょう。
また特例を受けるために必要な書類は、以下の通りです。

【共通して必要な書類】
・相続人全員の関係性がわかる「戸籍謄本」、または「法定相続分情報の一覧」
・「遺言書の写し」または「遺産分割協議書の写し及び相続人全員の印鑑証明書」

【その他の書類(故人のご自宅について特例を受ける場合)】
故人のご自宅(特定居住用宅地等)について特例の適用を受けるには、誰がその土地を相続するかによって、主に以下の追加書類が必要となります。

1. 被相続人と同居していた親族がご自宅を取得した場合
ご自宅を取得した相続人の「住民票の写し」または「戸籍の附票の写し」 ※相続人がマイナンバーカードを提示すれば提出が不要になる場合があります。

2. 被相続人に配偶者や同居の法定相続人がおらず、別居の親族がご自宅を取得した場合
・ご自宅を取得した相続人の「戸籍の附票の写し」(※原則として戸籍の附票が必要です)
・相続開始前3年以内に、ご自宅を取得した相続人がご自身または配偶者所有の家屋に居住していなかったことを証明する書類 (例:当時お住まいだった家屋の「賃貸借契約書の写し」、所有家屋がなかったことの証明として「登記事項証明書」など)

3. 被相続人が老人ホームなどの施設に入所していた場合
上記1または2の書類に加えて、以下の書類も必要です。

・故人の戸籍の附票の写し
・「介護保険の被保険者証の写し」
・「施設への入所契約書の写し」など

配偶者の税額軽減の特例を受けるための必要書類

被相続人が配偶者であれば、配偶者の税額軽減の特例を受けられます。配偶者の相続財産において、「1億6千万円」と「法定相続分」のいずれか多い金額が対象です。つまり、配偶者の税額軽減の特例を受けると、少なくとも1億6千万円分までの財産が非課税になります。

特例を受けるために必要な書類は、以下の通りです。

  • 戸籍謄本
  • 「遺言書の写し」または「遺産分割協議書の写し及び相続人全員の印鑑証明」

障害者控除・未成年者控除を受けるための必要書類

相続人が障害者や未成年である場合、税額控除の対象になります。障害者の場合には、85歳未満かつ、一定の要件を満たした人です。未成年の場合には、18歳未満が該当します。障害者控除や未成年控除を受けるには、以下の書類が必要です。

【障害者控除】
以下、いずれかの写し
・身体障害者手帳
・療育手帳
・精神障害者保健福祉手帳

【未成年控除】
・戸籍謄本

なお、親権者と未成年者が共に相続人となり、遺産分割協議を行う場合は注意が必要です。親権者が自分の利益を優先し、子どもの利益が損なわれる「利益相反」を防ぐため、家庭裁判所で「特別代理人」を選任しなければなりません。(例:母と未成年の子どもが相続人となるケース)

特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てる際には、別途「特別代理人選任申立書」や「遺産分割協議書の見込案」などの書類を用意する必要があります。

書類収集と申告準備をスムーズに進めるためのポイント

相続税申告では、多くの書類や手続きが必要です。また、相続税の申告期限は限られています。時間内に申告を完了させるためにも、計画的な準備が不可欠です。ここでは、書類収集と申告準備をスムーズに進めるポイントを解説します。

早めの準備と計画的な書類収集

相続税の申告期限は、10か月です。そのため、「10か月」という短い期間を念頭に置きつつ、準備することが大切です。戸籍謄本の収集などは、時間がかかることもあるため、早期から準備を進めるとよいでしょう。郵送を依頼する場合には、1か月以上かかることもあります。また、遺産分割協議も時間を要する傾向にあり、並行して進めることが大切です。必要書類のリストアップと、収集スケジュールを立てて、計画的に進めましょう。専門家に相談する場合にも、早めの行動が重要です。

書類の有効期限と取得場所の確認

相続税申告のために税務署へ提出する書類(戸籍謄本や印鑑証明書など)には、原則として有効期限はありません。

ただし、相続手続き全体で考えた際には注意が必要です。相続税申告で使う書類は、銀行預金の解約や不動産の名義変更(相続登記)など、他の手続きでも使用することが多くあります。その際に、銀行や法務局といった提出先から「発行後3か月以内」など、書類の有効期限を求められるのが一般的です。

書類を効率的に集めるには、この点を踏まえることが大切です。 有効期限を求められる可能性がある書類(例:印鑑証明書)は、銀行での手続きなど、実際に使用する直前に取得すると二度手間を防げます。一方で、取得に時間がかかる戸籍謄本など、有効期限を問われない書類は早い段階で入手しておくと安心です。

また、各書類の入手場所は異なるため、どこで何が入手できるかも事前にチェックしておきましょう。

税務署からの指摘を避けるための注意点

相続税申告では、申告漏れや評価誤りなどで、税務署から指摘を受けることがあります。税務調査を受ける可能性もあるため、指摘は避けたいところです。ここでは、税務署からの指摘を避けるための注意点について解説します。

相続直前の預金引き出しは手許現金として申告

税務署は、相続開始前の預金引き出しについて、注意深くチェックする傾向にあります。被相続人が、亡くなる直前に現金を引き出していた場合、現金の行方を説明できないと、税務調査で問題となる可能性があります。

引き出した現金が、医療費や生活費として実際に使用され、領収書等で証明できれば問題ありません。しかし、使途の証明が困難な場合や説明に不安がある場合は、手許現金に含めて申告しましょう。

名義預金も実質的な財産として申告を検討

家族名義の預金口座であっても、実質的に「被相続人の財産」と認められる場合は、相続財産としての申告が必要です。

【名義預金と判定されやすいケース】

  • 父親(故人)の年金が、息子名義の口座に振り込まれ続けている
  • 妻名義の定期預金だが、通帳と印鑑を夫(故人)が保管し、妻は残高も知らない
  • 専業主婦の口座に数百万円の残高があるが、独立した収入源がない

名義預金は、税務調査で指摘が多い項目の一つであるため、疑わしい預金がないかをチェックしておきましょう。

略歴書の添付

略歴書とは、被相続人の出身地・学歴・死因などを示した書類です。故人の職業、趣味、家族構成などは相続財産の形成に大きな影響を与えるため税務調査では重点的に確認されます。略歴書は作成が必須の書類ではないですが税務調査で確認を受ける内容を事前に開示することで適正な申告をしているという納税者側からの意思表示にもなります。

故人のご生前の職業、家族構成などを考慮して、残された財産の種類や金額が妥当なものであれば申告内容も正確なものであると推測できます。

相続税申告には税理士のサポート活用をご検討ください

相続税申告では、さまざまな書類が必要であり、複雑な手続きも求められます。税理士に依頼すれば、期限内の申告完了はもちろんのこと、適正な節税対策の提案も可能です。

二見税理士事務所では、相続税の試算から申告まで、相続に関する実務を一貫してサポートしています。夜間・土日も対応可能な体制を整えており、ご状況を踏まえた、具体的な対策プランをご提案いたします。

相続税申告でお悩みの場合には、お気軽に無料相談をご利用ください。

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