法人化の資本金はいくらが正解?金額を決める5つの視点を解説

法人化を検討する際に、多くの人が悩むことの1つとして「資本金の額」が挙げられます。実際に資本金をなんとなく決めてしまうと、あとで損をする可能性があります。なぜなら、資本金の額は、「取引先や金融機関からの信用度」「融資審査の通りやすさ」「消費税の免税」などにつながるからです。
そこで本記事では、後悔しない資本金の決め方について解説します。事業計画に合った最適な資本金額を明確にし、有利な条件で事業をスタートさせましょう。
法人化の資本金、現実的な目安は「3〜6ヶ月分の運転資金」または「100万円」
資本金は、会社の「経営力」や「信用力」を示す重要な指標の1つです。会社設立直後の資金不足を防ぐためにも、3〜6ヶ月分の運転資金を確保しておくと安心です。
ただし事業内容によっては、必要な運転資金の金額について、正確な計算が難しいケースも見受けられます。たとえば、新規事業や季節によって売上が大きく変動する事業、または顧客を獲得するまでに時間がかかるコンサルティング業などでは、売上の予測や必要な経費の見積もりが難しい場合も多いです。必要な運転資金のイメージがつかめないときは、多くの会社が「資本金を100万円から300万円で設立している」ことを参考にし、まずは100万円を1つの目安にするとよいでしょう。
失敗しない資本金の決め方|必ず確認すべき5つの重要視点
資本金の金額は、一度決めたら簡単には変えられません。会社の未来を左右しかねない要素だからこそ、慎重に検討する必要があるでしょう。ここでは、失敗しない資本金の決め方について、5つのポイントをご紹介します。
【事業の継続性】「初期費用+運転資金」から算出する
会社を設立した直後は、売上が安定しないこともよくあります。設立初期の不安定な時期を乗り越えるには、会社設立直後の資金不足を防ぐことが大切です。そのため、事業を始める際には、オフィスの賃料や設備費などの初期費用だけでなく、売上が安定するまでに必要となる「運転資金」も資本金に含めておく必要があります。
運転資金の具体例として、以下のような内容が挙げられます。
- 人件費
- オフィスの賃料
- 光熱費(電気代・ガス代・水道代)
- 仕入れ費用
具体的には、事業開始に必要な「初期費用」と「3〜6ヶ月分の運転資金」を合計し、その金額を資本金として設定します。十分な資金を確保しておけば、資金不足を心配せず、事業に集中できる環境を整えられるでしょう。
【社会的信用力】融資・取引・採用を有利に進める
一般的に、資本金が多い会社は「経営基盤が安定している」と評価される傾向にあります。実際に資本金の額が大きいほど、銀行での融資審査や法人口座の開設がスムーズに進むことが多いです。
また、新規取引先との契約や採用の場面でも、資本金が多いことはプラスに働く傾向にあります。たとえば、新規取引先は契約前に「その企業がどれだけ安定しているか」を確認する際、資本金の額を目安にすることが多いでしょう。さらに採用活動でも、求職者が「会社の将来性を判断する材料」として、資本金を参考にする場合があります。
【税金】「資本金1,000万円の壁」を意識して節税効果を最大化する
資本金を1,000万円未満に設定すると、会社を設立してから最大2年間は「消費税の納税義務が免除される」というメリットがあります。さらに、たとえ赤字であっても支払わなければならない「法人住民税(均等割)」についても、資本金を1,000万円以下に設定していれば、最低額に抑えることが可能です。
そのため、「設立初期のコスト削減を重視したい人」や「税制上のメリットを最大限活用したい人」は、資本金を1,000万円未満に設定することを検討するとよいでしょう。
【許認可】事業に必要なライセンスの要件を確認する
建設業・人材派遣業・旅行業など、特定の事業を始めるときには、事業に必要な許認可を取得するために「法律で定められた最低資本金の要件」を満たす必要があります。これらの要件は、ほかの判断基準よりも優先される絶対的な条件です。もしこの条件を満たしていなければ、そもそも事業を始めることすらできないでしょう。
たとえば、一般建設業の許可を取得するには、資本金が500万円以上必要です。また、第一種旅行業の場合には、3,000万円以上の資本金が求められます。許認可が必要な事業を始める際には、必要な資本金の金額を事前に正確に調べておくことが重要です。
【業界水準】同業他社や平均額を参考にする
先述の4つの視点(事業の継続性/社会的信用力/税金/許認可)で算出した金額について、妥当性を判断するには、「資本金の平均額」や「競合他社の資本金」を参考にするとよいでしょう。政府の統計によれば、日本企業の資本金は300万円から3,000万円の範囲に設定されていることが多いです。
参照元:経済センサス‐活動調査 令和3年経済センサス‐活動調査 速報集計 企業等に関する集計
また競合他社の資本金は、公式サイトの会社概要ページや、法務局で取得できる登記事項証明書(有料)で調べることが可能です。さまざまな情報をチェックすることで、自社の資本金が、業界内でどのように評価されるかを客観的に判断しやすくなります。
資本金1円の落とし穴|メリットと現実的な5つのデメリット
資本金が1円でも、会社を設立することは可能です。一見すると、「資本金はできるだけ少ないほうがよいのではないか」と考える人もいるでしょう。しかし、注意しなければならない点も存在します。ここでは、資本金1円によるメリットとデメリットを紹介します。
メリット:なぜ資本金1円で設立できるのか?
2006年の会社法改正によって、会社設立時の最低資本金規制が撤廃されたため、資本金が1円でも会社を設立できるようになりました。
資本金1円で会社設立ができる最大のメリットは、起業のハードルが下がったことです。自己資金がほとんどなくても法人を設立できるため、誰でもビジネスに挑戦しやすい環境が整うようになりました。たとえば「学生や新卒者でまとまった資金がない人」や「副業からスタートしたい会社員など」も、起業しやすくなりました。このような背景に伴い、新しいアイデアや技術を持つ人が会社を設立する機会が増え、多様なビジネスが生まれやすくなっています。
デメリット:資本金が少なすぎる場合の深刻なリスク
資本金が少なすぎる状態で会社を設立すると、社会的信用を得にくくなることも事実です。金融機関や取引先は、資本金の額を「経営基盤の強さを示す目安」と考えるため、資本金が極端に少ないと「すぐに資金繰りに困るのではないか」と不安を持たれやすいからです。また、法人口座の開設も難しくなります。資本金が1円だと、事業の実態が疑われ、審査に通らないケースも少なくありません。さらに、銀行が融資を行う際には、自己資金の額を重視します。資本金が1円の場合、十分な自己資金がないと判断され、融資を受けにくくなります。
加えて、人材の確保もハードルが上がりやすくなります。資本金が少ない会社は経営基盤が弱いと見なされ、応募が集まりにくくなるからです。ほかにも、設立初年度に少しでも赤字が出ると、資本金が1円では会社の資産がマイナスとなり、すぐに債務超過の状態になりやすいでしょう。
会社設立時の資本金に関するQ&A
資本金の金額について、どのくらいに設定すればよいかと悩む人は多く見受けられます。また資本金については、さまざまな疑問が出てきやすいものです。ここでは、会社設立時の資本金について、よくある質問とその答えをご紹介します。
Q1. 資本金と「役員借入金」の違いは? どちらで資金を入れるべき?
資本金とは、返済する必要がない「会社の自己資本」を指します。これに対して、役員借入金は会社が役員から借りたお金であり、返済しなければならない負債となります。会社の信用力を高めたい場合には、資金を自己資本である「資本金」として入れることが望ましいでしょう。とくに会社を設立する際には、用意した元手を「会社の基盤となる資本金」として計上することで、外部からの信用度を高めやすくなります。
Q2. 資本金はいつ、どのように払い込むの?
資本金は、定款認証が終わってから登記申請を行うまでの間に、発起人(出資者)の個人口座へ振り込む必要があります。このとき、必ず「振込」によって入金し、通帳のコピーや振込明細書など、出資したことがわかる書類を保管しておくことが大切です。なぜなら、法務局で登記の審査を受ける際に、資本金がきちんと払い込まれたことを証明しなければならないからです。
これらの書類をもとに「払込証明書」を作成し、登記申請の際に添付します。なお、現金を直接手渡しすると証明が難しくなるため、手渡しでの入金は避けましょう。
Q3. 会社設立後に資本金の額は変更できる?
会社を設立したあとでも、増資や減資によって資本金の額を変更することは可能です。しかし、その際には「株主総会での決議」や「法務局への変更登記申請」、「登録免許税の支払い」など、さまざまな手続きや費用が必要になります。
また、増資を行う場合は、新たな出資者を見つける必要が生じることもあります。一方で減資をする際には、債権者を守るための特別な手続きが求められる場合もあるでしょう。
資本金の変更には時間やコストがかかるため、会社設立時には「自社の事業計画に合った適切な金額」をあらかじめ決めておくことが重要です。
法人化を検討中の方は二見達彦税理士事務所にご相談ください
法人化を考える際、資本金の決定は、事業の成功に関わる重要ポイントの1つです。本記事で紹介した5つの視点を参考にしながら、ご自身の事業内容や将来の計画に合った資本金を検討してみてください。
「資本金の金額設定」や「会社設立の手続き」について不安や疑問がある場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。二見達彦税理士事務所では、お客様一人ひとりの状況に合わせて最適なアドバイスを行い、法人化の手続きをスムーズに進められるようしっかりサポートいたします。資本金の設定や設立時のお悩みがありましたら、どうぞお気軽に「二見達彦税理士事務所」までご相談ください。
