法人化の相談はどこにすべき?依頼先となる専門家一覧と活用のメリットを解説

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個人事業からの法人化や会社設立を検討する際、手続きの複雑さに戸惑ったり、相談先が分からず悩んでしまったりする人も少なくありません。また法人化する場合には、税務・法務・労務などに関して、多岐にわたる専門知識が不可欠です。各分野には専門家がいるものの、誰に何を相談できるのか、正確に把握する人は少ないでしょう。適切な専門家を選ばずにすすめると、手間やコストがかかる、リスクを見逃すなどの可能性もあります。

本記事では、法人化で頼りになる専門家とその役割や、活用するメリットについて解説します。最適な相談先を見つけたい場合には、ぜひ参考にしてください。

目次

法人化について相談できる専門家

法人化をすすめる際には、税金の計算から法務局への手続き・社会保険の処理まで、さまざまなステップが含まれます。これらの手続きを一人で行うと、大変な労力がかかることも多いでしょう。そこで頼りになるのが、各分野の専門家です。ここでは、どのような専門家が、どのような場面で力を発揮するのかを具体的に見ていきましょう。

税理士

税理士は、税務の専門家です。法人化を検討する多くの理由として「節税効果」があり、まさにその分野で力を発揮するのが税理士です。個人事業主の所得税は累進課税制度のため、利益が増えるほど税率も高くなります。一方、法人税は利益に関係なく税率がほぼ一定です。このため、一定の利益を超えると法人化したほうが税負担を軽減できる可能性があります。税理士に相談すれば、現在の状況を分析し、法人化のベストタイミングや具体的な節税効果を教えてもらえるでしょう。

また、設立後も役員報酬の適切な設定や消費税の免税期間の活用など、継続的な節税サポートを受けられます。

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司法書士

司法書士は、登記の専門家です。会社を設立し、社会的に法人として認めてもらうためには、法務局へ「会社設立登記」を申請する必要があります。

会社設立登記の申請を本人に代わって行うのは、司法書士だけに認められた独占業務です。司法書士に依頼すれば、会社の基本ルールを定めた「定款」の作成や認証手続きを行ってもらえます。加えて、登記申請に必要な各種書類の準備、そして法務局への申請まで、一連の複雑な手続きを全て任せられます。自分で手続きを行う場合と比べて、確実性とスピードの両面でメリットがあるでしょう。

行政書士

行政書士は、官公庁に提出する書類作成や手続きを行う専門家です。法人設立の場面では、特定の事業を始める際に必要な「(国や都道府県からの)許認可の取得」で、その専門性を発揮します。

たとえば、建設業を営む場合には建設業許可が必要です。飲食店を経営するには、飲食店営業許可などが必要になります。行政書士は、このような許認可の取得を専門とします。許認可の種類は多岐にわたり、申請書類も複雑です。行政書士に依頼することで、事業に必要な許認可の特定から、煩雑な書類作成や官公庁への申請までを一貫して任せられます。

社会保険労務士

社会保険労務士は、労働や社会保険に関する専門家です。法人化すると、従業員が社長一人であっても、社会保険への加入が法律で義務付けられます。複雑で時間のかかる社会保険の加入手続きを、専門家として代行してくれるのが社労士です。

また、従業員を雇用する場合には、労働保険の手続きも必要になります。社会保険労務士に依頼すれば、労働保険の手続きも代行してもらえます。ほかにも、雇用契約書の作成や就業規則の整備、給与計算といった労務管理全般についても相談することが可能です。

弁護士

弁護士は、法律全般における専門家です。また弁護士に相談する機会は、法人を設立するときよりも、事業を始めた後のほうが多いでしょう。特に、事業の根幹に関わる法的判断では、弁護士のチェックが不可欠です。たとえば、ビジネスモデルが法律に抵触しないかの確認や、取引先と交わす契約書に不利な条項が含まれていないかのリーガルチェックなどが該当します。

また、複数の創業者で会社を設立する人もいるでしょう。その際に、意見の対立といったトラブルを防ぐため、株主間契約を作成することも弁護士の役割です。

中小企業診断士

中小企業診断士は、経営コンサルティングに関する唯一の国家資格を持つ専門家です。ほかの専門家は、税務や登記といった個別の手続きでサポートするケースが多いでしょう。一方の中小企業診断士は、事業をどう成長させるかという経営戦略の視点からアドバイスを行います。たとえば、法人化を機にどのような事業展開を目指すのか、そのために必要な資金はいくらかといった相談に乗ってもらえるでしょう。また中小企業診断士は、金融機関からの融資や補助金申請に不可欠な「事業計画書」の作成を得意としています。事業の将来性や収益性を客観的なデータで示すことで、資金調達の成功率を高めてくれるでしょう。

無料で法人化の相談ができる公的機関も

法人化の相談は、専門家に依頼するのが確実ですが、費用もかかります。費用が気になる場合や、どこに相談すればよいか分からない場合には、無料で相談に応じてくれる公的機関を利用するのもよいでしょう。ここでは、無料で相談できる公的機関について紹介します。

法務局

会社設立登記を申請する先は、法務局です。登記を管轄する役所であるため、設立手続きに関する形式的な質問であれば、無料で相談に乗ってもらえます。たとえば、「定款はこの書き方で受理されますか」や「登記申請書に必要な書類は揃っていますか」といった、書類に関する疑問を直接確認できます。

ただし、法務局は中立な機関です。そのため、「どうすれば節税できるか」といった経営判断に関わるアドバイスまでは得られないでしょう。

日本政策金融公公庫

日本政策金融公庫は、政府が100%出資する金融機関です。また創業期の事業者に対して、積極的な融資を行っています。法人設立と同時に資金調達を考えているなら、真っ先に相談したい相手の1つだと言えるでしょう。

また融資相談の過程で、「この事業モデルで融資は受けられるか」「計画書のどこを改善すればよいか」など、事業計画書の書き方について具体的なアドバイスを得られます。

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よろず支援拠点

よろず支援拠点は、国が都道府県に設置している無料の経営相談所です。法人化すべきか迷っているといった悩みから、売上アップや人材育成まで、経営に関するさまざまな相談に対応してくれます。

相談窓口には、コーディネーターが常駐しており、相談者の話について課題を整理してくれることが特徴です。その場でアドバイスをしたり、必要であれば税理士や中小企業診断士といった外部の専門家と連携して解決策を探ってくれたりします。どこに相談すればよいか分からないときに、最初の窓口として活用するのもよいでしょう。

法人化を税理士等の専門家に相談すべき3つのケース・タイミング

事業が成長していく過程で、法人化を検討すべきタイミングがいくつかあります。タイミングを逃さずに専門家に相談することで、有利に法人化をすすめられるでしょう。ここでは、税理士等の専門家に相談すべき「3つのケース」について解説します。

ケース1:年間の利益が500万〜800万円を超えたとき

個人事業主の所得税は、利益が大きくなるほど税率も上がりますが、法人税は利益に関わらず税率がほぼ一定です。そのため、ある利益額を超えると、個人事業主のままよりも法人化したほうが、支払う税金が少なくなります。その金額の目安が、年間利益500万〜800万円と言われています。

そのため、年間の利益が500万~800万円を超えたら、税理士に「現状で法人化した場合、どれくらいの節税メリットがあるのか」をシミュレーションしてもらうとよいでしょう。

ケース2:大きな取引先との契約や融資で社会的信用が必要になったとき

企業によっては、法人でなければ取引しないという方針を掲げている場合があります。そのため、大きな契約を結ぶ際に、法人格が必須となることもあるでしょう。また、金融機関から事業資金の融資を受ける際も、会計処理が厳格で経営状況が明確な法人のほうが、個人事業主よりも審査で有利になる傾向にあります。事業の成長に伴い、より大きな取引や資金調達が必要になったと感じたときは、社会的信用を得るための手段として法人化を検討するケースが見受けられます。

ケース3:従業員の雇用を本格的に検討し始めたとき

初めて従業員を雇うケースやスタッフを増員するなど、組織化を踏まえた時期も、法人化を検討するタイミングの1つです。

法人化すれば、社会保険への加入が義務となります。しかし、求職者側から見れば福利厚生が手厚いという魅力になり、人材確保の面でも有利に働きます。また従業員を雇用すると、毎月の給与計算という新たな業務が発生します。社会保険料の計算や、所得税の源泉徴収といった税務の知識も必要になるでしょう。このようなときに、税理士や社会保険労務士といった専門家の力を借りると、複雑な手続きをミスなくすすめやすくなります。

専門家に法人化を相談するメリット

法人化の手続きは、自分自身で行うことも可能です。しかし、専門家に依頼することにもメリットがあります。ここでは、専門家に依頼する具体的なメリットについて解説します。

手続きの正確性と時間の大幅な節約

法人の設立には、複雑で専門的な手続きが数多く存在します。書類に不備があった場合に、何度も役所に足を運ぶケースもあるでしょう。すると、手続きに想定外の時間がかかるケースも見受けられます。専門家に依頼すれば、法人の設立に関する煩雑な手続きを、ミスなくスムーズに対応してもらえます。その結果、経営者は本来注力すべき事業や営業活動といったコア業務に集中できるため、創業期の貴重な時間を有効に使えるでしょう。

税務・法務上のリスクを回避し、最適な会社設計ができる

専門家に相談すると、設立後の経営まで踏まえたうえで、最適な形で会社をスタートできます。たとえば税理士に相談すれば、役員報酬の金額や決算期の設定など、会社の状況に合わせて節税できる方法を提案してもらえるでしょう。また、司法書士や弁護士は、会社の基本ルールである定款を作成する専門家です。事業内容に合わせて適切な内容を盛り込み、将来のトラブルを防ぐ条項を記載するなど、法務リスクを考慮してもらえるでしょう。長期的な視点で税務・法務上のリスクを回避できるのは、専門家に依頼するメリットだと言えます。

資金調達や事業計画など、設立後を見据えた戦略的アドバイスを得られる

専門家に依頼すると、設立後の事業成長を見据えて、戦略的なアドバイスを受けられるでしょう。その代表例が、創業期における資金調達のサポートです。たとえば、日本政策金融公庫からの創業融資や各種補助金を申請する際には、金融機関を納得させられる事業計画書が不可欠です。

特に税理士は、日頃から企業の財務状況を分析している数字のプロです。そのため、金融機関が納得するような、説得力のある事業計画書の作成を支援してくれます。設立後の資金繰りまで踏まえたサポートは、経営者にとって大きな安心材料となるでしょう。

法人化で後悔しないための注意点

法人化には多くのメリットがあるものの、注意点があることも事実です。注意点を理解しないまま法人化すると、このようなはずではなかったと後悔しかねません。ここでは、法人化で後悔しないための注意点について解説します。

社会保険料の負担増をシミュレーションしておく

法人化すると、社長一人の会社だとしても、健康保険や厚生年金といった社会保険への加入が必須です。社会保険料は、会社と役員個人で半分ずつ負担するため、会社にとっては「保険料の会社負担分」という新たな固定費が発生します。この負担額は役員報酬の金額によって決まるため、想定よりも大きな支出になるケースも少なくありません。法人化を検討する際は、事前に社会保険料がいくらになるかをシミュレーションし、資金繰り計画に織り込むことが重要です。

役員報酬の決定ルールと「自由なお金」の減少

個人事業主の場合、事業で得た利益は生活費など、比較的自由に使えました。しかし法人化すると、会社の売上はあくまで「会社のお金」となり、社長個人が自由には引き出せません。また社長は、会社から役員報酬という形で給与を受け取ります。さらに役員報酬の金額は、原則として1年間は変更できません。急に資金が必要になったり、逆に業績が悪化したりしても、報酬額を柔軟に変えられないため、お金の自由度が下がる点には注意が必要です。

赤字でも発生する法人住民税の均等割

法人にかかる税金は、基本的に利益に対して課税されます。しかし、法人住民税の均等割については例外です。

法人住民税の均等割とは、法人が自治体に対して支払う税金です。会社の利益とは関係なく、資本金の額や従業員数に応じて課税されます。つまり、たとえ事業が赤字であったとしても、法人である限り納税の義務が生じます。納税する金額は自治体によって異なりますが、最低でも年間約7万円の支払いが必要です。個人事業主にはない、法人ならではの固定コストとして、事前に認識しておくとよいでしょう。

顧問契約の必要性とランニングコスト

法人の会計処理や税務申告は、個人事業主の確定申告よりも複雑です。たとえば決算書や法人税申告書を作成する際には、法人税法に則った会計処理や、消費税の複雑な計算など、高度な専門知識が求められます。そのため、ほとんどの法人が税理士と顧問契約を結んでいるのが実情です。しかし税理士と契約をすれば、毎月数万円の顧問料という継続的な支払いが発生します。このランニングコストも踏まえ、事業計画にしっかりと盛り込むことが大切です。

法人化を検討中の方は二見達彦税理士事務所にご相談ください

本記事では、法人化で頼りになる専門家や、専門家に依頼するメリットを解説しました。法人化は、事業の成長に必要なステップですが、税務や労務といった専門知識が必要なことも事実です。なかでも、会社の資金に直接関わる税務は、法人化を検討するうえで重要な要素の1つと言えるでしょう。特に税理士は、設立後も業績報告や決算申告業務を通じて、長期にわたり経営者を支えます。

二見達彦税理士事務所では、お客様の状況を踏まえ、最適な法人化のタイミングや節税方法をご提案します。会社設立の手続きをはじめ、設立後も顧問契約を通じて、お客様の事業成をサポートします。法人化をご検討の場合には、お気軽に当事務所までご相談ください。

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