今知っておきたい相続税と手続きの基本

相続税

親族が亡くなり、突然「相続」という言葉に直面すると、何から手をつければよいのか戸惑う方も多いのではないでしょうか。相続は、財産を受け継ぐだけではなく、税務・法律・手続きの知識が必要になる複雑な分野です。

本コラムでは、相続が発生した直後に必要となる対応や、相続税の基本的な考え方、そして後悔しないためのポイントを、税理士の視点からわかりやすく解説していきます。

目次

相続が発生した直後にやるべきこと

相続は、被相続人(亡くなった方)の死亡をもって開始します。まず、相続人が行うべき基本的な手続きを確認しましょう。

(1)死亡届の提出(7日以内)
役所に死亡届を提出することで、火葬許可証の交付などが行われ、葬儀が執り行えるようになります。病院で死亡診断書を受け取り、市区町村の役所へ提出しましょう。

(2)遺言書の確認
相続財産の分け方について、故人が遺言書を遺していたかどうかは非常に重要です。特に、自筆証書遺言がある場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要となるため、勝手に開封しないよう注意してください。

(3)相続人の調査・確定
誰が相続人になるかを正確に把握するために、戸籍謄本を収集します。これは遺産分割協議や相続税申告に不可欠な手続きです。

(4)財産と債務の把握
預貯金、不動産、有価証券などの「プラスの財産」だけでなく、借入金、未払税金などの「マイナスの財産」も含めて、すべてを把握する必要があります。この財産調査が、遺産分割や相続税の計算のベースとなります。

相続税の基本的な仕組み

相続税とは、財産を受け継いだことに対して課される税金です。すべての相続に相続税がかかるわけではなく、「課税対象となる財産が一定額を超えた場合」に申告・納税義務が発生します。

(1)相続税の基礎控除

相続税には「基礎控除」があり、以下の式で計算されます。

3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

たとえば、相続人が配偶者と子ども2人(計3人)の場合、基礎控除額は
→ 3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円

つまり、相続財産の総額が4,800万円以下であれば、相続税はかからないということになります。

(2)課税対象となる財産とは?

課税の対象になるのは、次のような財産です。

  • 預貯金・現金
  • 土地・建物などの不動産
  • 株式や投資信託
  • 生命保険金(非課税枠あり)
  • 死亡退職金(非課税枠あり)

また、生前贈与についても注意が必要で、亡くなる前7年以内の贈与は相続財産に加算されます。

相続税の申告・納税のスケジュール

相続税の申告・納税には厳格な期限があります。申告が必要な場合、相続開始から10か月以内に、被相続人の住所地を所轄する税務署に申告しなければなりません。

例:父が1月1日に亡くなった場合
→ 相続税申告の期限は同年11月1日

期限を過ぎると、延滞税や加算税が課されるおそれがあります。早めに財産の把握・評価を行い、遺産分割や申告の準備を進めることが重要です。

遺産分割と税金の関係

相続税の申告は、「誰がどの財産を相続するか」が決まったうえで行う必要があります。これを「遺産分割」といいます。遺産分割の方法としては、次のようなパターンがあります。

  • 現物分割(不動産はA、預金はB…など)
  • 換価分割(不動産を売却して現金を分ける)
  • 代償分割(特定の人が財産を取得し、他の相続人に代償金を支払う)

また、配偶者には相続税の軽減制度があり、1億6,000万円または法定相続分までは課税されないため、配偶者への分割割合によって税額が大きく変わるケースもあります。

相続税の節税対策はできる?

相続が発生した後では、できる対策は限られていますが、申告時に活用できる制度もいくつか存在します。

(1)小規模宅地等の特例

被相続人が住んでいた土地について、一定の要件を満たすと、最大80%の評価減を受けられる特例です。これにより、相続税の大幅な節税が可能になります。ただし、この特例は「誰が相続するか」によって使えない場合もあるため、遺産分割とあわせて慎重に検討する必要があります。

(2)配偶者控除・未成年者控除など

前述の配偶者控除のほか、未成年者、障がい者、相続人が相続税を一括で支払えない場合に使える「延納・物納」など、申告にあたって検討すべき制度は多岐にわたります。こうした制度をフルに活用するには、専門家によるシミュレーションやアドバイスが不可欠です。

相続は“税金”だけではない

税務的な手続きに目が行きがちですが、相続には感情や人間関係の調整も重要な要素です。遺産分割がうまくまとまらないと、家族間で長期間のトラブルに発展することもあります。

そのためにも、税理士・司法書士・弁護士など、信頼できる専門家と連携して進めることが、安心して相続を完了させるための近道です。

おわりに:早めの準備が“後悔しない相続”をつくる

相続は、一生のうちに何度も経験するものではありません。その分、最初の対応や判断が、その後の人生や家族関係に大きな影響を及ぼすこともあります。

「まだ手続きに着手できていない」「相続税がかかるのか不安」「財産の評価が難しい」──そう感じたときは、早めに税理士へ相談することをおすすめします。専門家のサポートを受けながら、冷静に、そして丁寧に進めていくことが、後悔しない相続の第一歩となります。

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