小規模企業共済の節税効果とは?経営者のための活用メリットを解説

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多岐にわたる経営者向けの制度のなかでも、個人事業主・会社役員のための「小規模企業共済」は、圧倒的な節税効果が見込めます。この記事では、小規模企業共済の概要や導入すべき理由、メリットを最大限に活かせる方法などを紹介します。

目次

経営者に「小規模企業共済」が必要な理由

小規模企業共済は、経済産業省管轄の中小企業基盤整備機構が運営する「積立による退職金制度」です。この制度は、単に退職金準備の役割だけでなく、経営者にとって非常に有益な結果をもたらします。ここでは、その理由を説明しましょう。

会社役員・個人事業主の「退職金がない」問題を解決する

一般の会社員とは異なり、会社役員や個人事業主には、退職金制度や社会保険(厚生年金や労働保険)の手厚い保障がありません。小規模企業共済は、そのような社会保障の不足の補填のために、昭和40年に誕生した制度です。(※1)

その後、時代の流れとともに、社会の変化に沿って内容が拡充されて現在の制度となり、長期の資産構築法として認知されています。

自助努力で老後資金を準備できるのが、魅力の一つである小規模企業共済ですが、最新の情報(令和7年3月)では、在籍人数は約169万人、運用残高は約11兆円超にもなります。また、令和6年度の共済金支給額は6,041億円、支給平均額は1,144万円、平均加入年数は約18年です。

参考:
独立行政法人 中小企業基盤整備機構|小規模企業共済とは
独立行政法人 小規模企業共済|令和6年度の運用状況

※1 加入要件:
卸売小売業・サービス業(宿泊・娯楽業以外):常時使用する従業員が5人以下の会社役員や個人事業主
それ以外の業種:常時使用する従業員が20人以下の会社役員や個人事業主

国が用意した「最強の節税制度」と言われる理由

中小企業基盤整備機構が運営することで、「公的である」という安心感があるこの制度は、「掛金の全額所得控除=確定利回り」となる投資効率の良さが、圧倒的な節税効果につながる魅力的な制度です。

小規模企業共済の仕組みと「3つの節税メリット」

ここでは、基本的な制度の仕組みや、どのような点が有用であるのかを解説します。

掛金が「全額」所得控除になる

小規模企業共済の掛金は、全額所得から控除できるのが特徴です。月額1,000円から上限7万円まで自由に設定できるので、事業の状況をみながら掛金を調整できるのもメリットといえるでしょう。

同じ所得控除でも、生命保険料控除は年間保険料を計算式にあてはめて控除額を算出しますが(最大12万円)、小規模企業共済は掛金100%の控除が可能なため、最大で年間84万円もの所得を抑えられます。

また、所得税は、所得金額が増えるにつれ、税率が段階的に高くなる累進課税が採用されています。高所得の人ほど、最大の控除を受けることで数十万円もの税額軽減が見込まれる可能性が高くなるでしょう。

共済金は受け取り時も「退職所得控除」で最大限の節税効果に

小規模企業共済は拠出時だけでなく、共済金受け取りの際にも手厚い税制優遇を受けられます。

  • 一括で受け取る場合: 退職金の扱い(退職所得)
  • 分割で受け取る場合: 公的年金等の扱い(雑所得)

上記の所得の、それぞれの計算方法で控除額を算出します。たとえば、15年加入して受け取り共済金が700万円の場合で見てみましょう。

【一括受け取り:退職金扱いの場合】
((源泉徴収される前の収入金額)-退職所得控除額)×1/2=退職所得額

(700万円 - 40万円 × 15年)× 1/2 = 50万円
※退職所得控除額は下記参考リンク参照

【分割受け取り:公的年金の扱いの場合】
収入金額の合計×0.85-68万5,000円=公的年金等に係る雑所得の額(65歳未満の場合)

700万円 × 0.85 - 68万5,000円 = 526万5,000円
※控除額は下記参考リンク参照

上記のように、どちらも優遇を受けられますが、大きな控除額と「1/2課税」により、退職所得として一括受け取りする方が、圧倒的に税負担が軽くなります。

参考:
国税庁|退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁|公的年金等の課税関係

受け取り方次第で事業承継・相続税対策にも活用できる

小規模企業共済の受け取り共済金は、民法上遺産ではありません。しかし、相続税法上は「みなし相続財産」とされ、相続税の課税対象になります。(死亡退職金や死亡保険金と同じ扱い)

相続税の算出時には、死亡退職金や死亡保険金と同様「500万円×法定相続人の数(※2)」の非課税枠が適用され、相続税が軽減される仕組みです。しかし、死亡保険金とは違い、共済金は受取人を指定できないというデメリットがあります。

法定相続人については、「【相続割合がわかる】誰がいくら貰える?法定相続分について解説」の記事でも紹介しているので、ご一読ください。

また、共済契約者が個人事業主または共同経営者の場合、事業承継において、配偶者・子に限り、旧契約の掛金の納付月数分を引き継いで、新たな共済契約者になることが可能です。(承継通算)(※3)
※2 ここでいう法定相続人は、相続放棄した人の数は含まれない
※3 旧契約者が会社役員の場合は適用不可

年収別節税シミュレーション

実際に、代表的な年収別でどのくらいの節税効果があるのかを見ていきましょう。

課税所得300万円〜400万円(中堅層)のケース

  • 課税所得:350万円とする
  • 所得税率:20% 控除額427,500円(R7年12月現在)

【小規模企業共済に加入している場合の所得税】
※4 掛金は最大7万円×12ヶ月と仮定
(350万円 - 84万円)× 20% - 42万7,500円 = 10万4,500円

【小規模企業共済に加入していない場合の所得税】
350万円 × 20% - 42万7,500円 = 27万2,500円

約17万円の節税になり、銀行預金ではありえない利回りが確保できます。

参考:国税庁|所得税の税率

課税所得1,000万円超(高所得層)のケース

  • 課税所得:2,000万円とする
  • 所得税率:40% 控除額:279万6,000円

【小規模企業共済に加入している場合の所得税】
※5 掛金は最大7万円×12ヶ月と仮定
(2,000万円 - 84万円)× 40% - 279万6,000円 = 486万8,000円

【小規模企業共済に加入していない場合の所得税】
2,000万円 × 40% - 279万6,000円 = 520万4,000円

33万円超もの節税になり、掛金の4割近くが戻ってくる計算です。累進課税のため、高所得になるほど実質利回り(節税効果)が高まる仕組みになっています。

小規模企業共済とiDeCoの比較

小規模企業共済と同じ節税効果のあるものとして、iDeCo(個人型確定拠出年金)が挙げられます。それぞれどのような違いがあるかを、具体的に見ていきましょう。

経営者なら「小規模企業共済」を優先すべき理由

経営者に、小規模企業共済をおすすめするのには理由があります。ここでは、この制度がなぜ優先すべきものであるかを解説します。

資金拘束のリスクと柔軟性管理(流動性の違い)

小規模企業共済とiDeCoの最大の違いは、「資金の自由度」です。

双方の同一のメリットとして、「全額所得控除できる」「給付金は退職金・年金と同じ扱いで節税効果が高い」などがありますが、それ以外の違いは以下のとおりです。

項目小規模企業共済iDeCo
掛金/月1,000円~7万円5,000円~6万8,000円
※職業・年金などの条件によって上限は異なる
メリット・低金利の貸付金制度がある(契約者貸付制度)
・掛金を500円単位で変更できるので調整がしやすい
・運用益が非課税
・加入対象の幅が広い
デメリット・短期間で解約した場合は解約手当金は元本割れ、もしくは0円になる
・会社役員、個人事業主のみが加入対象
・資金が急に必要になっても引き出せない(60歳まで引き出し不可)
・定期的に手数料がかかる
・掛金の変更に時間がかかる

事業には、急な資金需要がつきものです。経営者としては、上記のような貸付金や、事業状況をみながら自由に資金を調整できる点において、小規模企業共済を優先するのが賢明といえます。

参考:国民年金基金連合会|iDeCo公式サイト

iDeCoにはない「契約者貸付制度」の強み

小規模企業共済の「契約者貸付制度」は、事業運営のセーフティーネットとなります。

特に、低金利で迅速に資金を手配できる「一般貸付制度」は、もしもの時の救世主となるでしょう。そのほか、特別な事情がある場合に活用できる「特別貸付制度」がありますが、どちらも、納付した掛金を元に算定した限度額内での借入れが可能です。

【特別貸付制度の種類】

  • 緊急経営安定貸付: 経済状況の変化が原因の一時的な資金難の際に低金利で借入れできる
  • 傷病災害時貸付: 疾病・災害が原因で経営に支障が生じた場合に低金利で借入れできる
  • 福祉対応貸付: 共済加入者、または同居親族の福祉向上のための住宅改造資金・福祉機器購入などの資金を低金利で借入れできる
  • 創業転業時・新規事業展開等貸付: 新規開業・転業・事業多角化に必要な資金を低金利で借入れできる
  • 事業承継貸付: 事業承継(事業資産や株式等の取得など)に必要な資金を低金利で借入れできる
  • 廃業準備貸付: 個人事業の廃止・法人解散を円滑に行うために必要な資金を低金利で借入れできる

資金に余裕があるなら「併用」が最良の選択肢

可能であれば、小規模事業共済とiDeCoを併用するのがおすすめです。どちらも全額所得控除が可能なため、ダブルで節税効果が見込めます。

  • 小規模企業共済の掛金上限: 7万円(7万円 × 12ヶ月 = 84万円)
  • iDeCoの掛金上限: 6万8,000円(6万8,000円 × 12ヶ月 = 81万6,000円)

合計 165万6,000円 の所得控除が可能

また、お互いのデメリットを補い合うことでリスクを減らし、それぞれのメリットを最大限に活かせるのも、おすすめする理由の一つです。

加入前に絶対に知っておくべきデメリットと注意点

加入してからでは間に合いません。ここでは、加入前によく理解しておくべきデメリットや、注意すべきポイントを紹介します。

早期解約による「元本割れ」のリスク

小規模企業共済の最大のデメリットは、元本割れする可能性があることです。

  • 掛金納付月数240ヶ月(20年)未満で任意解約した場合: 解約手当金は掛金合計額を下回る(※6)
  • 掛金納付月数12ヶ月(1年)未満で任意解約した場合: 掛金は掛け捨てとなる(解約手当金0円)

上記のように、小規模企業共済には長期加入を前提とした厳格なルールがあるので、よく考えて加入するようにしましょう。
※6 加入期間が240ヶ月以上でも、途中で掛金を増減した場合は、解約手当金が掛金合計額を下回る場合があるので留意が必要

インフレリスクと固定金利の弊害

運用方法を自分で選べるiDeCoにくらべて、小規模企業共済は予定利率が固定的なことから、インフレに弱い傾向にあります。景気の変動で急激なインフレが起きた場合は、現金の価値が目減りするリスクがあるので、念頭においておきましょう。

その点、iDeCoは景気動向に応じた適切な資産運用に切り替えることができるため、リスク回避が可能です。しかし、一方で元本割れするリスクも存在するので注意が必要です。

法人成りと自己都合は注意!「解約手当金」の落とし穴

小規模企業共済の共済金には、共済金A、共済金B、準共済金、解約手当金とありますが、「準共済金」「解約手当金」は、ほかの共済金に比べて、受け取れる金額が少なくなる傾向にあります。

なかでも、「準共済金」になるパターンは、よく理解しておくようにしましょう。

【準共済金となる要件】

  • 個人事業主から法人成り(法人化)して、加入資格がなくなった場合(会社役員ではない場合)
  • 法人の解散や病気ではなく、自己都合で65歳未満で会社役員を退任した場合

上記のような加入資格喪失や一定の年齢に満たない解約は、「退職所得」ではなく「一時所得」扱いとなり、退職金の強力な税制優遇の恩恵が受けられなくなるので十分ご留意ください。

まとめ

事業を行ううえで、「合法的な節税」は非常に重要なものです。「知る」ことで、事業の発展や維持のための資金を生み出すことができる、「経営者が知っておくべきこと」といえます。

小規模企業共済は、個人事業主や会社役員など経営者のための制度です。よく知り、深く理解することで、あなたの思い描く未来を自由に作り出せる可能性が高まるでしょう。

二見達彦税理士事務所では、どんな小さなご相談ごとにも対応いたします。小規模企業共済や節税について詳しく知りたい方は、ぜひ無料相談をご利用ください。

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