決算前の経費はどう使う? 賢い節税につながるポイントを解説

決算期が近づくと、節税対策を考えはじめる人も多いのではないでしょうか?決算の直前にできる節税対策の代表的な手法として、経費を活用することが挙げられます。しかし、その仕組みを理解しないまま経費を使うと、かえって資金繰りを悪化させたり、ペナルティを被ったりするかもしれません。
本記事では、経費の活用が節税につながる理由や、節税効果を高める方法・注意点などを解説します。経費を正しく活用し、賢く節税したい場合には、ぜひ本記事を参考にしてください。
なぜ決算前に経費を使うのか?
まずは、決算前に経費を使う理由について、正しく理解することが大切です。ここでは、経費を使う理由や経費の仕組みをはじめ、よくある誤解についてもご紹介します。
利益を減らし、法人税等の支払いを抑えるため
決算前に経費を使う主な目的は、納税額をコントロールすることです。まず前提として、税金は会社の利益に対して課されます。そのため、経費を計上して利益を減らせば、結果として支払う税金を抑えられるでしょう。
具体的にいうと、法人税等は、売上から経費などを差し引いた課税所得に対して、所定の税率を掛けて算出されます。計算式として表現すると、以下の通りです。
「課税所得 × 税率 = 税額」
つまり、計算の元となる課税所得が小さければ、支払う税金も少なくなります。
決算日までに、事業に必要な物品の購入やサービスの利用などを行い、経費として計上することで、その期の課税所得を意図的に減らせます。
「経費を100万円使う」=「税金が100万円減る」は誤解
経費を使った節税について、よくある誤解が「経費の金額と同じ金額が、税金から差し引かれる」という内容です。実際に減らせる税金の額は、使った経費の全額ではありません。減らせる税金の額は、「増えた経費 × 法人税等の実効税率」で計算されます。
たとえば、実効税率が約30%の会社が、節税のために100万円の経費を使ったとします。この場合に減らせる税金は以下の通りです。
「100万円 × 30% = 30万円」
経費として100万円の現金が会社から出ていく一方で、税金の支払いは30万円しか減りません。結果として、会社の手元に残る現金は差し引きで70万円ほど減ります。そのため、無計画な経費の使用は、節税効果以上にキャッシュフローを悪化させてしまいます。
決算直前でも間に合う!節税効果を高める経費の使い方
決算が間近に迫っていても、節税は可能です。ここでは、決算直前でも実行しやすく、節税効果も高められるような経費の使い方について解説します。
接待交際費
資本金が1億円以下の中小企業の場合、年間800万円までの接待交際費については、全額を損金(経費)として算入できます。決算時にこの枠が残っていれば、取引先との会食や贈答品などを通じて、節税をはかることが可能です。
ただし、接待交際費は税務調査で厳しくチェックされる項目の1つです。そのため、誰と・いつ・どこで・何のために使ったのかについて、明確に記録しましょう。さらに、私的な支出と疑われないよう、証拠を残すことも欠かせません。
また接待交際費を経費として認めてもらうには、事業との関連性を説明できることが大前提です。
修繕費
壊れた備品の交換や、建物の壁を塗り直すなどで、修繕費を活用する節税方法があります。まず修繕費は、一括での経費計上が可能です。一方で、性能や価値を高めるアップグレードとしての支出の場合には、資本的支出と判断されます。
資本的支出の場合には、数年にわたって減価償却で処理します。修繕費だと思っていたのに「実際は資本的支出だった」という展開になれば、費用計上できると思っていた金額が減ってしまいます。すると、想定していた節税効果が得られないことがあるでしょう。
たとえば、割れた窓ガラスを同じガラスに交換するのは修繕費ですが、防犯ガラスに交換すると資本的支出になる可能性があります。税務調査でよく指摘されるポイントなので、注意が必要です。
消耗品費・広告宣伝費・福利厚生費
10万円未満のパソコン・周辺機器・ソフトウェアなどを購入し、消耗品費として計上するのも代表的な節税方法です。その際には、将来への投資につながるものを購入するとよいでしょう。
ほかにも、翌期の集客を見据えてWeb広告を出稿したり、パンフレットを作成したりする「広告宣伝費」として投資するのもおすすめです。さらに、全従業員を対象とした研修の実施や、職場環境を改善するための備品購入など、福利厚生費として活用するのもよいでしょう。福利厚生費は、従業員満足度の向上にも寄与します。
消耗品費・広告宣伝費・福利厚生費などの経費は、事業の成長に直結するため、無駄な支出にもなりにくいです。
計上漏れのチェック
すでに発生している経費について、計上漏れがないかを確認することも大切です。たとえば、従業員が立て替えた交通費や出張費、会議費などの精算漏れはないでしょうか?また、事務所の家賃や水道光熱費、通信費などの請求書で、未払いや未計上のものがないかも確認しましょう。
これらの費用を期末までに漏れなく計上することで、課税所得を圧縮できます。決算前の最終チェックとしてのリスクが低く、確実な節税策だともいえるでしょう。また計上漏れのチェックは、新たな支出が発生しないことも利点です。
経費以外で検討すべき効果的な節税方法
決算前にできる節税対策は、経費を使うことだけではありません。ここでは、経費以外で節税効果が期待できる方法について、3つの内容をご紹介します。
バランスシートの整理
貸借対照表(バランスシート)に計上されている資産を見直し、不要なものを整理するのも効果的です。たとえば、長年使用しておらず、今後も使用しない古い機械設備などの固定資産を廃棄する方法が挙げられます。
廃棄した場合は、帳簿上の価値を「固定資産除却損」として経費計上できます。また売却したものの、帳簿上の価値を下回る金額しか得られなかった場合は、差額を「固定資産売却損」として計上可能です。同様に、使用や販売ができない不良在庫を廃棄処分すれば、「棚卸資産廃棄損」として費用を計上できます。
これらの方法は、新たな支出を伴わずに、帳簿上の利益を圧縮できることがメリットです。
不良債権の処理
取引先の倒産などにより、回収が不可能になった売掛金や貸付金は、貸倒損失として経費に計上できます。すると、回収できなかった損失分だけ課税所得を減らせることから、節税につなげられます。
しかし、貸倒損失として損金算入が認められるための要件は厳格です。たとえば、会社更生手続が開始されるなど、回収できないことが第三者から見ても明確な必要があります。「支払いが遅れている」「連絡が取りにくい」といった理由だけでは、不良債権として認められません。不良債権として処理したい場合には、税理士に相談し、適切なステップを踏むことが大切です。
▼不良債権をはじめ、税理士に相談できる内容を知りたい場合には、以下の記事が参考になります。
税理士はどこまでやってくれる?依頼できる具体的な業務範囲を詳しく解説
「貯蓄型」の節税
貯蓄しながら節税できる制度の活用も、有効な節税方法の1つです。貯蓄型の節税の代表例として、「中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)」や「中小企業退職金共済(中退共)」が挙げられます。
経営セーフティ共済は、取引先の倒産に備える制度で、支払った掛金(年間最大240万円)を全額損金に算入できます。中退共は従業員の退職金制度で、こちらも掛金は全額損金として計上可能です。
これらの制度は、節税効果を得ながら、万が一の際の備えや従業員の福利厚生の充実を図れます。そのため、会社の持続的な成長にも直結する、賢い投資ともいえるでしょう。
決算前の節税で「してはいけない」注意点
決算前に節税を行うと、焦るあまり誤った判断をすることがあります。ほかにも、意図せずにNG行動をするケースも見受けられます。節税で避けるべき注意点は、以下の通りです。
キャッシュフローの悪化(節税貧乏)
目先の納税額を減らしたい一心で、本来は不要な物品購入や、サービスの利用を行うことは避けるべきです。手元の現金を失うことから、資金繰りを悪化させやすくなります。節税貧乏の状態でもあり、本末転倒だといえるでしょう。
たとえ税金が30万円減るとしても、そのために100万円の経費を使えば、会社の現金は70万円も減少してしまいます。決算前の経費利用は、あくまで事業の成長につながる「将来への投資」という観点で判断することが大切です。本当に必要な設備投資なのか、来期の売上につながる広告宣伝なのかを冷静に見極め、無駄遣いを避けましょう。
「脱税」とみなされるリスクの高い手段
節税と脱税は異なります。節税は、法律で認められた範囲内で行う、合法的な方法です。対する脱税は、売上の隠蔽や事実ではない経費の計上など、れっきとした違法行為です。たとえば、個人的な飲食代を会議費として処理したり、家族旅行の費用を福利厚生費にしたりすることは、意図的な利益操作とみなされます。
税務調査で脱税が発覚した場合には、本来の納税額に加えて、延滞税や重加算税といった重いペナルティが課されます。悪質なケースだと判断されると、刑事罰の対象にもなるでしょう。安易な判断が、会社の社会的信用を揺るがすことになりかねません。
特例適用の見落とし(償却資産税・継続適用)
節税に役立つ税制特例ですが、ルールを見落とすと、予期せぬリスクにつながることがあります。たとえば、30万円未満の資産を一括で経費にできる「少額減価償却資産の特例」で考えてみましょう。実は、この特例で購入した資産は、地方税である「償却資産税」の課税対象にもなります。節税したつもりが、地方税がかかることで、実質的に節税にならないことがあるのです。
また、家賃や保険料を1年分前払いして経費計上できる「短期前払費用の特例」には、翌期以降も同じ処理を継続する「継続適用」のルールがあります。その年だけ、都合よく経費として利用することは認められません。適切に節税したい場合には、特例のメリットだけでなく、その義務やデメリットまで理解することが重要です。
節税対策や税務調査の立ち会いは二見達彦税理士事務所にご相談ください
決算前の節税対策には、さまざまな方法があります。しかし節税対策には、多くの注意点が存在することも事実です。どの方法が自社にとって最適か、また税務上のリスクがないかを正確に判断するには、専門家の視点が欠かせません。
二見達彦税理士事務所では、貴社の状況を踏まえてうえで、将来の成長につながる最適な節税プランをご提案します。決算前の対策はもちろんのこと、税務調査に関するご不安などもお気軽にご相談ください。
