法人の株式投資は節税になる?メリット・デメリットを詳しく解説

法人が株式投資をすると、節税になると聞いたことはないでしょうか?実際に企業が株式投資を行うと、損益通算ができたり、場合によっては経費として認められたりします。しかし、個人投資よりも複雑なルールが存在するなど、注意が必要な側面があることも事実です。
本記事では、法人の株式投資が「節税になる仕組み」から、具体的なメリット・デメリットまで解説します。法人の株式投資について理解を深めたい場合には、ぜひ本記事を参考にしてください。
法人が株式投資を行う目的とは?
法人が株式投資を行う主な目的は、会社が保有する資産の価値を高めることです。昨今の日本では、円安やインフレの影響により、現金で保有しているだけでは資産価値が実質的に減少するリスクが高まっています。このような状況下で、現預金をただ保有しているだけでは、価値が目減りする可能性も否定できません。
そこで、会社の利益を株式投資にまわすことで、資産価値の維持や向上を図れます。インフレ対策にも、役立つといえます。インフレ対策として有効であると同時に、配当金や売却益といった追加的な収益を得られる可能性もあります。
法人が株式投資をするメリット
前述した資産形成という目的に加え、法人の株式投資には多くのメリットがあります。主なメリットは、以下4つの内容です。
本業の利益と投資の損失を相殺できる
個人で株式投資を行う場合、投資で得た利益や損失は、給与所得といったほかの所得とは合算できません。そのため、投資で損失が出ても、給与などから引く税金を減らすことはできないのです。
一方で法人が株式投資を行う場合には、本業の利益と一緒に合算して、法人全体の所得として計算できます。仮に株式投資で300万円の損失が出てしまっても、本業で1,000万円の利益があれば、両者を相殺して課税所得を700万円に圧縮することが可能です。
株式投資の損失も10年間繰り越せる
株式投資で多額の損失を出した場合、本業の黒字と損益通算しても、法人全体で赤字になることもあるでしょう。その赤字は、翌期以降において、最大10年間にわたり繰り越すことが可能です。つまり、利益と相殺できる「欠損金の繰越控除」ができます。
欠損金の繰越控除について、個人の場合の繰越期間は3年です。一方の法人は、繰越期間が10年と長いことが特徴です。たとえば、市場の急落などで多額の投資損失があっても、その後10年間も事業利益で補填できるため、長期にわたり法人税を軽減できます。
益金不算入制度で受取配当金の税負担が減る
法人が株式から受け取る配当金は、「益金不算入制度」により、その一部が法人税の課税対象から除外されます。つまり配当金を受け取っても、配当金の全額に法人税がかかるわけではありません。
ただし、益金不算入となる割合は、保有する株式の割合によって決まります。一般的な上場株式への投資(保有割合5%以下)では、受け取った配当金の20%のみが益金不算入となり、残りの80%は課税対象です。なお、この割合は平成27年度の税制改正で、従来の50%から引き下げられています。
経費として認められる範囲が広い
個人の投資家の場合、株式投資で経費として認められるのは、売買にかかった手数料や取得価額などの「取引に直接かかった費用」に限定されます。対する法人の場合には、投資判断のために購読する新聞や、投資セミナーへの参加費も経費の対象です。ほかに、投資顧問会社への手数料なども対象とみなされます。つまり法人が行う株式投資は、個人投資家と比較すると、経費として認められる範囲が広くなります。その分、節税につながるといえるでしょう。
その他の節税対策についても詳しく知りたい方は「法人の利益が出過ぎた際の最適な節税対策とは?」も併せてご覧ください。
法人の株式投資におけるデメリットとリスク
法人の株式投資には、多くのメリットがある一方で、デメリットが存在することも事実です。ここでは、法人の株式投資におけるデメリットとリスクについて、4つの内容を解説します。
個人よりも高い実効税率である
法人が株式投資で得た利益にかかる実効税率は、基本的に、個人投資家の20.315%(※)を上回ります。(※所得税・住民税・復興特別所得税の合計)
たとえば中小企業の場合、年間800万円以下の所得には約23%が課税されます。年間の所得が800万円を超える場合には、約33%もの法人税等が課税されることも事実です。そのため、投資利益だけを比較すれば、法人の方が税負担は重いでしょう。前述した損益通算や経費計上といった法人特有のメリットを活用できない場合には、法人化して株式投資を行う意味が薄れてしまいます。税率差を埋められるだけの節税効果を見込めるかどうか、検討が必要です。
株式を売却していなくても、決算時に含み益が課税される
法人が株式投資をする際には、「期末時価評価」に注意しましょう。期末時価評価とは、決算時に株式が値上がりしていれば、その含み益に税金がかかる仕組みです。株式を売却していなくても、毎年コンスタントに適用されます。
たとえば100万円で買った株式が、決算時には150万円の価値になっていたとします。株式を売却していなくても、50万円の含み益に対して、法人税(約23~34%)が課税されます。つまり、約12~17万円の税金を支払う必要があります。そのため、状況によっては資金繰りが悪化し、黒字倒産するリスクもあります。
万が一、資金繰りが厳しくなった場合の対処法については「資金繰りが厳しいことの原因分析から改善策、資金調達まで徹底解説」で詳しく解説しています。
特定口座が使えないため事務的な負担が増える
個人投資家が利用できる「特定口座(源泉徴収あり)」は、法人では原則として利用できません。法人口座は一般口座、または特定口座の源泉徴収なしになることから、証券会社では税務処理を行ってもらえないのです。
そのため、毎年の確定申告では、法人自身で株式の取得価格や売却損益を計算し、確定申告書の別表四や別表五などに記載する必要があります。株式の売買頻度が高くなると、株式投資に関する事務処理は、相当な負担になりがちです。
相続税や贈与税の負担が大きい可能性がある
株式投資で会社の純資産が増加すると、自社が保有する株式の評価額も連動して上昇します。一見すると良いことに思えるかもしれません。しかし、将来の事業承継時には、リスクとなる可能性があります。自社株の評価額が高くなると、後継者が株式を相続や贈与で取得する際に、相続税・贈与税の負担が重くなるためです。そのため、投資で得た利益が、次世代への事業継承を困難にする可能性があることも理解し、長期的な視点で株式投資をするかを判断しましょう。
法人の株式投資における会計処理と仕訳
株式投資を行う場合、適切な会計処理と仕訳が欠かせません。間違った処理をすると。税務上の問題が生じたり、決算書の信頼性に影響したりするでしょう。ここでは、法人が株式投資するうえで必要になる、基本的な会計処理について解説します。
購入時の仕訳と勘定科目
株式を購入する際には、購入した代金に加えて、証券会社に支払う売買手数料も「取得価額」に含めるのが原則です。手数料を「支払手数料」として別計上するのは、誤りだといえます。
また、株式を保有する目的によっても、勘定科目を使い分けます。短期売買が目的なら「売買目的有価証券」とし、長期売買を目的とするなら「投資有価証券」を使用します。この区分によって決算時の時価評価の要否が決まるため、購入時に目的を明確にし、適切な勘定科目を選択することが大切です。間違った科目を使用すると、後の会計処理に影響を与えてしまいます。
配当金受取時の仕訳
配当金を受け取る際には、源泉徴収された税金を適切に処理することが大切です。たとえば、配当金が10万円のケースを考えてみましょう。この場合、源泉徴収税額が2万315円で、実際に入金される金額は7万9,685円となります。この時の仕訳は、受取配当金10万円、法人税等2万315円、普通預金7万9,685円です。
ここで注意すべきは、源泉徴収された2万315円の扱いです。これは「前払い税金」として処理されるため、決算時の法人税計算では控除されます。もし源泉徴収税額を計上し忘れると、すでに支払った税金が控除されず、二重課税となってしまいます。そのため、配当金を受け取る際には、源泉徴収税額もあわせて仕訳することが欠かせません。
ETF(上場投資信託)特有の会計処理
ETFの会計処理は、基本的に株式と同様に行います。分配金を受け取った際は「受取配当金」として計上し、源泉徴収された税金は「法人税等」で処理します。
ETFが通常の投資信託と異なる点は、決算時の時価評価で取引所の最終価格を使用することです。また、リアルタイムで価格が変動し、市場が開いている時間であればいつでも売買できる特徴があります。
税務上の取扱いでは、ETFの分配金は配当所得として扱われるため、「受取配当等の益金不算入制度」の適用対象となります。そのため、保有割合に応じて分配金の一部が法人税の課税対象から除外されることから、税負担の軽減効果が期待できるでしょう。
決算時の時価評価と洗替処理の方法
短期売買を目的として保有する株式やETFは「売買目的有価証券」に分類され、決算時には時価で評価する必要があります。
具体的な処理を見てみましょう。株式を100万円で購入し、決算時の時価が120万円だった場合、20万円の評価益を当期の利益として計上します。ところが翌期の期首では、この株式を元の取得価額である100万円で再評価するのです。この処理方法を「洗替法」と呼びます。
洗替法を採用する理由は、株式を実際に売却するまでは取得価額ベースで管理することで、より正確な損益計算ができるからです。毎年「洗替法」での処理を繰り返すことで、適切な会計処理が維持されます。
法人の株式投資のご相談は二見達彦税理士事務所へ
法人の株式投資は、損益通算などのメリットがある一方で、時価評価課税といった特有のリスクも存在します。そのため、「本業が赤字の年に売却益を出す」など、決算を見据えた出口戦略を踏まえて行うと良いでしょう。
また株式投資に関する複雑な判断や会計処理には、専門的な知識が不可欠です。法人の株式投資に関するお悩みや、効果的な節税対策をお考えでしたら、ぜひ二見達彦税理士事務所までお気軽にご相談ください。貴社の状況に合わせた最適なプランをご提案します。
