法人の利益が出過ぎた際の最適な節税対策とは?

経営するうえで、利益の増加は喜ばしいものの、税負担が増えるという課題も生じます。また予想以上に利益が出た場合、手元の資金が減る可能性もあるため、今後の成長に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
しかし、適切に節税対策を行えば、税負担を適正化しつつ、経営基盤を安定させることも可能です。本記事では、法人の利益が出過ぎた際に起こりうる経営リスクや、節税対策について解説します。
「利益の出過ぎ」を放置する事による3つの経営リスク
利益が予想以上に増えた場合、適切に管理しないと、経営に悪影響を与える可能性があります。利益の出過ぎを放置し、発生し得るリスクは以下の通りです。
課題1:法人税・住民税・事業税の直接的な負担増大
利益が増加すると、法人税・法人住民税・法人事業税などの「納税額」も増えていきます。なぜなら、企業の課税所得が増えるほど、算出される納税額も高くなるからです。利益が増えても、支払う税金の額も増えれば、手元に残る資金が予想以上に少なくなることもあるでしょう。利益の増えすぎによる「税負担の増加」は、キャッシュフローを圧迫し、経営の自由度を低下させる可能性があります。
課題2:納税資金確保によるキャッシュフローの悪化
利益が出て納税額も増えると、納税するためのお金も準備する必要があります。納税額によっては、キャッシュフローに悪影響を与えかねません。
たとえば、「多くの売掛金について、計上から入金まで時間がかかる企業」や、「多額の設備投資などで支出が多い企業」では、手元の現金が不足しやすいでしょう。納税資金が増えた結果、資金を捻出できず、苦慮するケースも見受けられます。
課題3:将来への投資機会の逸失
多くの税金を納めると、「将来の投資として使えたはずの資金」が失われるかもしれません。結果として、事業展開・研究開発・人材育成など、企業の成長に関する投資機会を逃す可能性もあるでしょう。納税額の増加による機会損失は、競争力低下や成長の鈍化につながり、長期的に見て企業価値を損なう可能性があります。
【経費増加編】今すぐ検討できる6つの節税対策
利益が増加した場合、経費を計上して課税所得を抑えることも大切です。ここでは、経費に関する「6つの節税対策」について解説します。
決算賞与の支給で従業員のモチベーションも向上
決算賞与の支給は、企業の利益を従業員に還元しつつ、法人税の節税も期待できる方法です。決算賞与は損金として計上できるため、課税所得を減らし、納税額を押さえやすくなります。会社からの利益還元は、従業員のモチベーション向上にもつながるでしょう。
また、損金として認められるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 事業年度の終了日までに、全従業員に支給金額を通知する
- 事業年度の終了日から、一か月以内に支払う
- 支給した賞与を、当期中に損金として計上する
※支給金額を通知したものの、退職などで賞与を受け取れない人がいる場合には、損益として計上できません。
全社員対象の福利厚生(社員旅行・人間ドック等)を充実させる
社員旅行や人間ドックの費用も、福利厚生費として計上できます。従業員の健康増進やリフレッシュにつながるのはもとより、企業のイメージアップも期待できるでしょう。
社員旅行や人間ドック費用について、損金として計上するには、以下のような要件を満たす必要があります。
社員旅行の場合
- すべての社員が参加対象
- 参加率が50%以上
- 4泊5日以内(海外旅行の場合、機内での移動時間などは含まず)
人間ドックの場合
- 全社員が対象
- 全員が同じ検査内容である(年齢で検査内容を変更するのは可)
- 検査を実施する機関に対し、企業が直接支払う(従業員による建て替えは認めず)
将来の売上につながる広告宣伝費への投資
将来の売上拡大につながる広告宣伝費への支払いも、当期の損金として計上できます。
広告宣伝費の例
- 自社ウェブサイトのリニューアル費用
- インターネット広告の出稿費用
- 展示会への出展費用
広告宣伝費は、企業のブランド力向上や新規顧客獲得にも直結しやすいため、戦略的な支出だといえます。税負担を軽減しつつ、将来の収益基盤の強化に向けた先行投資として、積極的に検討する価値があるでしょう。
出張手当(旅費規程)の整備と活用
適切な旅費規程を整備すると、従業員に支払う出張手当について、損金として計上できます。手当を受け取る従業員も、非課税として受け取ることが可能です。つまり、企業と従業員の双方にとって、メリットのある節税対策だといえます。
また旅費規程には、出張の対象となる目的・期間・移動手段や、宿泊費の上限などを定めます。出張報告書などのテンプレートも用意すると、スムーズな運用につながるでしょう。
短期前払費用の特例を活用する(家賃・サーバー代等)
短期前払費用の特例とは、将来の費用を前払いした際に、支払った期に「全額を損金として計上できる」制度です。店舗の家賃、ウェブサイトのサーバー代などを年払い契約にすることで、「向こう1年間の費用」を一括で損金として処理できます。
特例を適用するには、「契約の事実がある」や「継続して処理を行う」などの要件を満たす必要があります。たとえば、期末になって「利益が多すぎるから、家賃を年払いにして節税しよう」と思っても、継続適用の要件を満たしません。特例を活用したい場合には、年初から年払い契約を締結し、毎年同じ処理を続ける必要があります。
その他経費(書籍購入、短期コンサル、未払費用、交際費、社宅)
たとえば、「業務に必要な書籍の購入費」や「短期的なコンサルティング費用」も、経費として計上できます。また、決算で計上漏れがないよう、すでに発生している未払費用(例:月末締めの電話代など)を適切に計上することも重要です。社宅制度の導入も有用であり、家賃の一部を経費にできます。
さらに交際費も、損金として参入できます。ただし、一定の限度額がある点には注意が必要です。たとえば中小企業の場合、年間800万円までは損金に算入できますが、超えた分は認められません。つまり、接待費などで年間1,000万円を使うと、200万円分には税金がかかります。そのため交際費は、年間の上限額を意識して使うことが重要です。
【給与・役員報酬編】人への投資で実現する3つの節税対策
利益が出過ぎた際に、「人への投資」を通じて節税を図ることも有効です。ここでは、人件費に関連する3つの節税対策について解説します。
役員報酬の最適化(期首からの計画が必須)
役員報酬が損金として認められれば、課税所得を減らせます。しかし、損金算入にはルールがあり、事業年度の開始日から3か月以内に決定された「定期同額給与」でなければいけません。たとえば役員に対して、毎月50万円を支給と決めたら、どの月も50万円を支払います。つまり、役員報酬は期中での変更ができません。そのため、期の初めに年間利益の見込みを立て、税負担と手元に残る資金のバランスを考慮しながら、最適な額を決める必要があります。
役員の増員による報酬総額の増加
事業規模の拡大や新部門の立ち上げなどに伴い、期中に役員を増員することもあるでしょう。新たに就任した役員への報酬は、適切な手続きを踏めば、損金としての計上が可能です。損金として認められれば、課税所得の圧縮につながり、法人税の負担を軽減できるでしょう。
ただし、「増員が事業の実態に即している」や「適正金額である」などの合理性が求められるため、計画的に進めることが大切です。
役員退職金の準備と損金算入
役員退職金は、役員が退職した際に支給するものであり、支給額は高額な傾向にあります。支給した年に全額を損金として計上できるため、節税効果が大きいといえます。
しかし、「利益が出過ぎたから、役員退職金を支給して節税しよう」などと、退職していないのに支給はできません。役員退職金は「退職」の事実があって発生するものであり、恣意的な支給は認められません。節税対策として活用するには、将来の退職を見据えた計画的な準備が不可欠です。
【資産変動・投資編】将来の成長につなげる6つの節税対策
利益が出過ぎた場合に、利益を投資に回すことで、節税と将来の成長を両立させることが可能です。ここでは、資産の購入・売却・見直しなどで実践できる、効果的な6つの節税対策について解説します。
30万円未満の少額減価償却資産の特例を活用する
中小企業者等が30万円未満の少額減価償却資産を購入した際に、減価償却のように数年かけて計上するのではなく、購入した年に全額を損金にできる特例があります。この特例は、年間合計で300万円まで適用することが可能です。
たとえばパソコン(25万円)、プリンター(8万円)、デスク(12万円)などを同一年度に購入した場合、合計45万円分を一括で経費として計上できます。
中小企業経営強化税制などを活用した設備投資
新たな設備投資をする際に、税制優遇措置を活用すると、節税につながります。たとえば中小企業経営強化税制という優遇措置では、取得した設備に対して、「特別償却」か「税制控除」かを選択できます。「特別償却」の場合には、設備投資にかかった費用を、即時償却することが可能です。「税額控除」の場合には、法人税額から一定額を差し引けます。優遇措置を活用すれば、設備投資を行った年の税負担を軽減できます。
不要な在庫・棚卸資産の評価損計上と処分
在庫や棚卸資産の中に、長期間売れ残っている商品や、価値の低下した不良在庫が含まれることもあるでしょう。不要な在庫は、適切な手続きを踏むことで「評価損」や「廃棄損」として損失を計上し、当期の損金として算入することが可能です。
評価損は、商品の時価が帳簿価額を下回り、回復が見込めない場合に、その差額を計上します。一方の廃棄損は、商品を廃棄・処分すると、帳簿価額全額を損失として計上できます。定期的な棚卸資産の見直しと不良在庫の処理は、税負担の軽減だけでなく、企業の財務状況を健全に保つうえでも不可欠です。
使用していない固定資産の除却・売却損の計上
事業活動で使用されなくなった機械や設備、車両などの固定資産は、保有しているだけでもコストが発生します。そこで、「売却」や「廃棄・除却」を試みれば、その時点での帳簿価額と売却価額(または処分費用)の差額を損失として計上できます。具体的には、「固定資産売却損」や「固定資産除却損」として計上し、当期の損金として算入することが可能です。損金として計上すれば、無駄な資産を整理しつつ、課税所得を減らせるでしょう。
中古資産の購入による減価償却期間の短縮
中古資産は、新品を購入するケースより、法定耐用年数が短い傾向にあります。法定耐用年数の短さは、取得価額を「より短期間で減価償却費として計上できる」ことを意味します。購入した事業年度の損金を増やすだけでなく、短期的な節税効果も高いといえるでしょう。特に、多額の利益が出た年に中古の設備や車両を購入すれば、その年の課税所得を圧縮できます。結果として、税負担の軽減につながるでしょう。
その他資産関連(個人資産の貸付、不動産投資)
資産を活用した節税戦略として、「経営者の個人資産の活用」や「不動産投資を組み合わせる」といった方法が挙げられます。たとえば、経営者が個人で所有する不動産を法人に貸し、法人側で賃料を損金として計上すれば、法人税の負担を軽減できるでしょう。
また事業用の不動産に投資し、取得費用を減価償却費として毎年計上すれば、長期にわたる節税効果が期待できます。たとえば2,000万円のマンションを購入した場合、建物部分を47年間で減価償却すると、毎年約43万円を経費として計上できます。
【制度活用編】知っているかどうかで差がつく4つの節税対策
多くの利益が出た際に、節税と経営強化を両立させるには、税制上の優遇措置を賢く活用することが大切です。ここでは、知っていると差がつく「4つの節税対策」について解説します。
経営セーフティ共済(倒産防止共済)への加入
経営セーフティ共済は、取引先の倒産による「倒産の連鎖」を防ぐ制度です。正式名称は「中小企業倒産防止共済制度」であり、倒産防止共済とも呼ばれます。掛金の全額を損金として計上できるため、法人税の軽減につながります。
また一定期間加入すれば、解約時に「返戻金」を受け取ることが可能です。掛金を支払った年は、損金計上で税負担が軽減される一方で、返戻金を受け取る際には、返戻金が収益として課税されます。つまり、本来支払うべき税金を将来に先送りできます。ただし、解約の時期を誤ると税負担が重くなる可能性があるため、「利益が少ない年に解約する」「設備投資と組み合わせる」など、出口戦略が重要です。
法人保険の活用(課税の繰り延べと保障)
法人保険は、保険料の一部または全額を損金として算入できるため、節税対策としても注目されています。しかし、法人保険の「節税の本質」は、税金がなくなることではありません。あくまで、「課税の繰り延べ」です。つまり、ポイントは、今年の税金を先送りできます。保険料を経費として計上することで、現在の税負担を軽減し、将来の保険金受取時に課税される流れです。
そのため、単なる節税目的ではなく、従業員の保障や役員の退職金準備といった「本来の目的」を意識して活用するとよいでしょう。
繰越欠損金の活用(過去の赤字との相殺)
事業の立ち上げや設備投資の時期など、一時的に赤字が発生することは珍しくありません。赤字は、税務上「繰越欠損金」になり、最長10年間にわたって繰り越せます。将来的に黒字になれば、過去の繰越欠損金を当期の黒字と相殺できます。すると、黒字になった年の課税所得を圧縮でき、法人税の負担軽減につながるでしょう。
過去の損失を無駄にすることなく、将来の税負担を軽減できるため、経営の安定化にも貢献します。
雇用関連の税制優遇の活用
「従業員の給与総額を増加させる」「特定の研修を実施する」など、雇用に関して積極的な取り組みを行うこともあるでしょう。そのような場合に活用できる、税制優遇制度が複数存在します。代表例として、所得拡大促進税制が挙げられます。同制度は、給与等の金額を一定以上増やした場合に、増加額の一部を法人税から控除できる制度です。節税効果があるだけでなく、従業員のモチベーション向上や人材確保にも貢献します。
税務や経理に関するご相談は二見達彦税理士事務所にお任せください
利益が出過ぎた際には、適切な節税対策を行うことが大切です。しかし、適用できる制度や手続きは多岐にわたり、それぞれに細かな要件や注意点があるため、専門的な知識と経験が不可欠です。
二見達彦税理士事務所では、お客様の事業内容や財務状況を詳しくお伺いしたうえで、最適な節税戦略をご提案いたします。経費の適切な計上から税制優遇制度の活用まで、包括的なサポートを通じて、税負担の軽減と企業価値の向上を実現します。
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