相続税の申告期限はいつ?10ヶ月を過ぎた場合のペナルティと間に合わない時の対処法について

相続が発生すると、相続税の申告が必要になるケースが多いでしょう。申告期限は、10ヶ月以内です。また相続税の申告は、遺産の調査や分割協議など、やるべきことが多岐にわたります。そのため、気がつけば期限が間近というケースも少なくありません。
本記事では、相続税における申告期限の基本から、間に合わなかった場合のリスクや方法、基本のタイムスケジュールなどを解説します。期限に間に合うよう申請したい人や、期限直前で間に合わないと不安な人は、ぜひ本記事を参考にしてください。
相続税の納付期限は、死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内
相続税の納付期限は、原則として、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内です。法律上では、知った日の翌日が、計算の開始日となるのがポイントです。通常は、亡くなった日から10ヶ月後の同じ日が期限となります。たとえば、1月10日に亡くなった場合、期限は11月10日です。
また申告書の提出だけでなく、納税もこの日までに済ませる必要があるため、計画的に準備を進めましょう。
期限日が土日祝の場合は、翌営業日まで延長される
申告期限の最終日が、土日または祝日や、12月29日から1月3日といった年末年始に該当するケースもあるでしょう。これらの日は、税務署の閉庁日に当たるため、期限が延長されます。その場合、休み明けの最初の平日が、新たな期限となります。
たとえば、10ヶ月後が日曜日だった場合、翌日の月曜日が期限です。さらに月曜日が祝日なら、翌日の火曜日が期限になります。期限ギリギリの準備になる場合は、最終日が平日に当たるか、事前にカレンダーを確認しておくと安心です。
申告書の提出先は「被相続人の住所地」の税務署
相続税の申告書を提出する税務署は、自身の住所地を管轄する税務署ではありません。提出先は、被相続人が亡くなる直前に住んでいた住所地を管轄する税務署です。納税する際にも、同じ税務署に対して行います。また相続人が複数いて、それぞれが遠方に住んでいたとしても、全員が同じ一つの税務署に申告します。
間違った税務署に申告書を提出すると、手続きが遅れる原因になります。そのため、被相続人の最後の住所地を、正確に確認することが大切です。
相続税の申告期限に間に合わないとどうなる?
相続税の申告期限を過ぎてしまうと、本来納めるべき税金に加えて、ペナルティとしてさまざまな追徴課税が発生します。ここでは、追徴課税の内容別に、詳細を解説します。
延滞税
延滞税は、納付期限までに相続税を納めなかった場合に、遅れた日数に応じて課される利息のようなペナルティです。一日遅れただけでも発生し、納付が完了する日まで日割りで加算され続けます。
また税率は、年によって変動します。税率は、納期限の翌日から2ヶ月以内は比較的低いものの、それを超えると急激に高くなることが特徴です。(令和8年までの税率は年2.8%→年9.1%)。納税資金の準備が遅れるほど、負担は雪だるま式に増えるため、注意が必要です。
無申告加算税
無申告加算税は、申告期限までに申告書を提出しなかったことに対するペナルティです。税務署から指摘される前に、自主的に期限後申告を行えば、税率は5%に抑えられます。しかし、税務調査の事前通知を受けた後に申告した場合は10%~15%にはね上がってしまいます。期限を過ぎた場合でも、一日でも早く自主的に申告することが大切です。少しでも早く申告することで、ダメージを抑えやすくなります。
重加算税
重加算税は、ペナルティの中でもとくに重いものです。意図的に財産を隠したり、書類を偽造したりなど、悪質な不正行為が発覚した場合に課されます。税率は無申告の場合で40%と極めて高く、申告はしていたものの内容が虚偽だった場合には35%となります。
また重加算税は、本来の納税額に対して上乗せされるため、納税者の負担は計り知れません。財産を隠し通せるだろうという安易な考えは、将来的に大きなリスクを招くことになるでしょう。
特例の消滅リスク
相続税の納付期限が遅れると、節税効果の高い特例が使えなくなる可能性があります。相続税には基礎控除のほかにも、配偶者の税額軽減や、自宅の土地評価額を最大80%減らせる「小規模宅地等の特例」など、税負担を軽減できる制度があります。
これらはすべて、期限内に申告することが適用の要件です。期限を過ぎると、特例は基本的に適用できません。その結果、納税額が数百万円、場合によっては数千万円単位で増える可能性があります。
ただし、遺産分割がまとまらない等のやむを得ない事情がある場合、次の項目で解説する手続きを行えば、後から特例を適用できるケースが見受けられます。
遺産分割がまとまらない場合は、未分割申告で回避できる
相続人同士で遺産分割協議が長引き、申告期限までに分割内容が決まらないケースは少なくありません。このような場合でもペナルティを回避できる方法が、未分割申告です。ここでは、未分割申告の概要について解説します。
未分割申告とは?法定相続分で仮払いする仕組み
未分割申告とは、遺産分割が終わっていない状態で、申告および納税を済ませる手続きです。取り急ぎ、法定相続分に従って、各相続人が財産を取得したと仮定し相続税を算出します。この段階では、法定相続分で仮の状態で計算するため、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は適用できません。そのため、一時的に納税額は高くなるでしょう。しかし、未分割申告をすると、期限を守ったことになるため、無申告加算税や延滞税といったペナルティの回避につながります。
忘れてはいけない「申告期限後3年以内の分割見込書」
未分割申告を行う際に重要なのが、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を添付することです。この書類を提出することで、「3年以内に分割を終えるので、その際に配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使わせてください」という意思を税務署に示せます。また分割見込所を提出することで、特例を使用する権利を確保できます。
書類を添付し忘れると、後から遺産分割がまとまっても特例を一切適用できないことには、注意が必要です。
分割決定後の「更正の請求」で払いすぎた税金を取り戻す
未分割申告を実施し、無事に遺産分割協議がまとまったら、改めて相続税を計算します。その際に、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用できるため、当初納めた税額よりも安くなるケースがほとんどです。また、差額を取り戻すために行うのが、更正の請求という手続きです。手続きが税務署に認められれば、払いすぎていた税金が還付されます。さらに、利息に相当する還付加算金も、上乗せして返金されます。
特別な事情による期限延長について
相続税の申告期限は、原則として10ヶ月です。しかし、やむを得ない理由がある場合、例外的に延長が認められることがあります。ここでは、相続税の申告期限を延長できる可能性がある「特別な事情」について解説します。
地震や台風などの災害に遭った
地震・台風・豪雨などの災害によって被災し、申告や納税が期限までにできない状況になると、申告期限の延長が認められます。延長される期間は、原則として、災害の理由が止んでから2ヶ月以内です。
延長の方法には、国税庁が対象地域を一括で指定する「地域指定」と、被災した納税者が個別に税務署へ申請する「個別指定」の2種類があります。
出生や認知など、相続人の人数に変化があった
申告期限が近づいた段階で、相続人の数に変動があった場合も、期限延長が認められます。具体的には、被相続人の死亡時に、まだ生まれていなかった胎児が出生する、子の認知が行われるなどが挙げられます。この場合、新たに相続人が増えます。
また新たな申告期限は、出生や認知の事実を知った日の翌日から10ヶ月後です。期間延長になる理由は、遺産分割協議をやり直す必要があるためです。
【注意】多忙や海外在住は延長理由にならない
期限延長が認められるのは、災害など、不可抗力的なケースに限られます。多忙で準備ができなかったり、海外在住で連絡が取りにくかったりなど、個人的な事情は認められません。また、遺産分割協議がまとまらないという理由も、延長の対象外です。この場合は、先述した「未分割申告」で対応する必要があります。
相続税の申告期限までのタイムスケジュール
相続が発生してから10ヶ月の申告期限までには、相続税の手続き以外にも、関連する重要な手続きがいくつも存在します。それぞれの期限を把握し、計画的に進めなければ、不利益を被る可能性があります。ここでは、相続税の申告期限までのタイムスケジュールについて、全体像を見ていきましょう。
【3ヶ月以内】相続放棄・限定承認の判断
被相続人に多額の借金があるなど、マイナスの財産が多い場合には、相続放棄や限定承認を検討するケースが多いでしょう。相続放棄と限定承認は、両者ともに、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に手続きをします。
期間内に何もしなければ、すべての資産と負債を無条件に引き継ぐ、単純承認をしたとみなされます。借金の返済義務も負うことになるため、財産調査は迅速に行うことが大切です。
【4ヶ月以内】準確定申告で故人の所得税を支払う
準確定申告とは、亡くなった方の所得税を申告したうえで、納税まで行うことです。対象となる所得は、亡くなった年の1月1日から死亡日までの分です。
故人が個人事業主だったり、不動産収入を持っていたりすると、相続人が準確定申告を行う必要があります。納税までの期限は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内です。相続税申告とは別の手続きとして、忘れずに行いましょう。
【10ヶ月以内】遺産分割協議と相続税を納付する
相続手続きの最終ゴールは、10ヶ月以内の申告と納税です。まず、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、遺産分割協議を成立させます。さらに、遺産分割協議の合意内容を、遺産分割協議書としてまとめます。次に、遺産分割協議書を踏まえ、すべての財産の評価額を算出して相続税申告書を作成する流れです。作成した相続税申告書は、税務署へ提出しましょう。
また、相続税は「現金での一括納付」が原則です。そのため、早めに納税資金を準備しておくことが重要です。
もし、期限までにどうしても現金が用意できない場合には、一定の要件を満たせば「延納(年払いの分割納付)」や、現金に代えて不動産などで納める「物納」が認められるケースもあります。これらを利用するには別途申請が必要になるため、早めに専門家へ相談しましょう。
【3年以内】相続登記で不動産の名義変更を行う
不動産を相続した場合、相続登記をする必要があります。相続登記とは、名義を被相続人から相続人に変更することです。これまで相続登記は任意だったもの、2024年4月から義務化されました。また義務化によって、相続の開始を知った時から、3年以内の登記が必須となりました。過去の相続にも適用され、正当な理由なく怠った場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。
期限直前でも諦めずに税理士へ相談を
相続税の申告は、10ヶ月以内に終わらせる必要があります。また期限内に、遺産分割・財産評価・特例適用の判断など、多くの複雑な手続きを完了させなければなりません。
期限が迫り、進め方でお困りの場合には、一人で抱え込まないことが大切です。二見達彦税理士事務所では、期限直前の状況でも、お客様にとって最善の申告プランをご提案します。間に合わないと諦める前に、まずはご相談いただくことが大切です。二見達彦税理士まで、お気軽にご連絡ください。
