売上高成長率とは?計算式から目安、経営に活かす分析方法まで詳しく解説

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自社の成長を客観的に把握し、今後の戦略を立てるために、「売上高成長率」は欠かせません。しかし、数値を計算するだけでは十分とはいえないでしょう。自社の成長率や、数値に基づく適切な戦略などを見極めることが大切です。

そこで本記事では、売上高成長率の基本・計算方法に加え、規模や業界ごとの目安、適切な分析手法まで解説します。売上高成長率への理解を深め、未来を切り拓きたいとお考えの場合には、ぜひ本記事をお役立てください。

目次

売上高成長率が経営の状態把握に欠かせない理由

売上高成長率は、経営状態を把握するうえで、欠かせない要素の1つです。ここでは、売上高成長率の概要や、経営の状態を知るために欠かせない理由まで解説します。

売上高成長率とは?

売上高成長率とは、ある期間の売上高が「過去の同じ期間と比べて、どれくらい増えた(または減ったか)」をパーセンテージで表した指標です。売上高成長率をチェックすることで、企業の成長度合いや、事業が拡大するスピードを客観的に把握できます。

たとえば、売上高成長率が高い場合には、事業が軌道に乗っていると分かります。一方で売上高成長率が低い場合には、事業活動が停滞や縮小の傾向にあるでしょう。また、売上高成長率は、将来の収益予測や、市場における立ち位置の分析にも役立ちます。

なぜ経営者は売上高成長率を把握すべきなのか?

経営者が売上高成長率を把握すべき理由は、売上高成長率の数値が、企業の存続や将来を左右するものだからです。
たとえば、成長率が計画を上回る場合には、積極的な設備投資や人材採用など、次の成長に向けた戦略について、自信を持って進められます。

一方で成長率の鈍化や低下が見受けられる場合には、早めに原因を特定し、「製品の改良」「新たな販売戦略の立案」「コスト削減」など、具体的な対策を講じる必要があります。市場の変化や社内の問題をいち早く察知し、適切な対応をするためにも、売上高成長率を継続的にチェックし続けることが大切です。

成長率が示す3つの重要なシグナル

売上高成長率は、企業の将来性を示す「重要なシグナル」を発しています。注目すべきは、「事業継続の可能性」「資金調達の有利性」「市場での競争力」という3つの内容です。

まず、安定した売上の伸びは、事業が市場に受け入れられている証であり、この先も事業を継続できる可能性が高いといえます。また金融機関や投資家は、高い成長率を企業の将来性と評価します。そのため、売上高成長率が高いと、融資や投資といった資金調達を有利に進めやすくなるでしょう。

また競合他社を上回る成長率は、自社の製品やサービスが顧客に選ばれ、市場シェアを拡大している証になります。

売上高成長率の計算式と具体的な計算例

つづいて、売上高成長率の算出方法を見ていきましょう。基本的な計算式・具体例でのシミュレーション・計算時の注意点は、以下の通りです。

基本となる計算式を理解する

計算式はシンプルであり、一度覚えれば、誰でも簡単に計算できるでしょう。

【売上高成長率を算出するための計算式】
(当期売上高 – 前期売上高) ÷ 前期売上高 × 100

まず「当期売上高 – 前期売上高」で、売上高が前期からどれだけ増減したかという「増減額」を求めます。次に、増減額を基準となる「前期売上高」で割ることで、「前期に対して何割増減したか」という比率を算出できます。最後に100を掛けることで、パーセンテージ(%)に変換していく流れです。

具体例で簡単シミュレーション:前期売上1億円、当期1.2億円の場合

ここでは、具体的な数値を使って、売上高成長率を計算してみましょう。たとえば、前期の売上高が1億円で、当期の売上高が1.2億円だったとします。

まずは、当期と前期の「売上高の差額」を計算します。

  • 1.2億円(当期) – 1億円(前期) = 0.2億円(増減額)

つづいて、増減額を前期の売上高で割ります。

  • 0.2億円 ÷ 1億円(前期) = 0.2

最後に、算出した数値をパーセンテージに直すために、100を掛けます。

  • 0.2 × 100 = 20%

算出した結果、例に挙げた企業の売上高成長率は20%だと分かりました。電卓を片手に、自社の実績でもぜひ試してみてください。

計算時の注意点

売上高成長率を計算する際に、「比較する期間を統一する」ことは重要です。たとえば、年間の成長率を見たいのであれば、当期と前期のデータを比較しなければなりません。たとえば「当期」の年間売上高と、「前期」の半年分の売上高を比べてしまうと、正しい数字を算出できないでしょう。1年・半期・四半期など、当期と前期で同じ期間のデータを使うことが大切です。

自社の成長率は高い?低い?売上高成長率の目安と平均値

自社の売上高成長率について、「高いか低いかを知りたい」と思う人も多いでしょう。ここでは、売上高成長率の目安と平均値について解説します。

企業規模で見る成長率の目安

売上高成長率の目安は、企業の規模や成長段階によって異なります。たとえば、事業基盤を作っている途中の「スタートアップ企業」や「中小企業」では、市場シェアを広げるために高い成長率が求められるでしょう。そのため、年率10%以上、場合によっては20%を超える成長を目指すケースも珍しくありません。

一方で、すでに成熟した大企業の場合には、市場全体が大きく成長しない限り、急激な売上アップは難しいのが実情です。そのため大企業では、5%から10%程度の安定した成長を維持することが、1つの目安とされています。自社の規模や発展段階を踏まえたうえで、現実的でありながらも挑戦的な目標を立てることが大切です。

業界によって大きく異なる平均成長率

自社の成長率を評価する際には、「業界平均との比較」がポイントとなります。客観的な指標と比較することで、自社の立ち位置を把握しやすくなるでしょう。また、ITやSaaSのような急成長している業界と、成熟した製造業や小売業では、成長率に違いがあります。そのため、経済産業省が発表している「企業活動基本調査」などの公的データを活用しつつ、自社が属する業界の「平均成長率」を確認することが大切です。

自社の成長率が業界平均を上回っていれば、競争力を持っていると考えられます。一方で、業界全体が成長しているにもかかわらず「自社の成長率が平均を下回る」場合には、何らかの課題が存在する可能性もあるでしょう。

マイナス成長が意味するものと放置するリスク

売上高成長率のマイナスは、前の期と比べて売上が減ったことを意味します。背景には、市場での需要が減っている、競合他社に顧客が流れているなど、深刻な問題が隠れているかもしれません。

実際に事業が縮小していることから、マイナス成長の放置は危険です。売上の減少は利益の減少に直結し、資金繰りを悪化させる可能性があります。資金繰りが悪化すると、賞与のカット・昇給の見送り・人員削減といったコスト削減策も講じざるを得なくなります。従業員に不安を抱かせる要因となり、各自のモチベーション低下にもつながるでしょう。最悪の場合には、事業の継続自体が難しくなります。

単なる数字で終わらせない、売上高成長率の戦略的分析手法

売上高成長率を計算し、その目安を把握するだけでは十分とはいえません。その数字が「質の良い成長」なのかを見極め、次の戦略につなげることが大切です。ここでは、売上高成長率を経営に活かす「具体的な分析手法」について解説します。

【注意点】売上高の「伸び」だけで判断してはいけない

売上高成長率が高い場合、一見すると「会社の状況が良い」ように思えます。しかし、数字だけを見て安心するのは危険です。大幅な値下げや過剰な広告宣伝費によって売上が伸びた場合、成長率は高くても、利益が減ったり赤字になったりすることがあります。このような状態は「不健康な成長」と呼ばれ、売れば売るほど会社の体力を消耗してしまいます。

経営の最終的な目的は、長く安定して利益を生み出し続けることです。したがって、売上高の「量」だけでなく、「質」も評価する必要があります。表面的な数字の裏にある利益やコストの構造をしっかりと見極めることは、健全な経営判断を行うために欠かせません。

【分析ポイント①】「売上総利益率」とセットで見て「儲かる成長」か判断する

「儲かっている成長」かを判断するには、売上高成長率とあわせて「売上総利益率(粗利率)」も確認することが大切です。売上総利益率とは、売上高から売上原価を引いた売上総利益が、売上高のどれくらいの割合を占めるかを示す指標です。

売上高成長率がプラスでも、売上総利益率が下がっている場合は注意しましょう。なぜなら、「値引き販売が増える」「原価が上がる」など、利益が出にくい成長になっている可能性が高いからです。
一方で、売上高成長率と売上総利益率の両方が上がっていれば、自社の商品やサービスが、多くの人に選ばれている証拠だといえます。

【分析ポイント②】「固定費」の増加率を比較し、コスト管理を徹底する

売上が伸びても、それ以上にコストがかさむと意味がありません。そこで、売上高の成長率と固定費の増加率を比較すれば、成長の効率性を評価できます。固定費とは、人件費やオフィスの家賃など、売上に関わらず発生する費用です。また売上と固定費は、双方とのバランスが求められます。

理想は、売上の伸び率が、固定費の増加率を上回る状態です。 売上が伸びるほど利益が増えており、適切なコスト管理もできているといえます。一方で、固定費の増加率が、売上の伸び率を上回る状態には注意しましょう。 損益分岐点が高くなり、利益が出にくくなっているからです。コスト管理に問題がある可能もあり、早急な見直しが必要です。

長期的な視点を持つための「年平均成長率(CAGR)」の活用法

単年度の売上高成長率は、特需や景気の変動など、一時的な要因によって変動することがあります。長期的な流れをつかむには、「年平均成長率(CAGR)」という指標が役立ちます。

CAGRとは、複数年にわたる成長率を「1年あたりの平均値」にしたものです。CAGRを使えば、年ごとの変動を平均化し、期間全体を通じた「現実的な成長率」を把握できます。

【CAGRの計算式】
CAGR(%) ={(N年後の売上 ÷ 初年度の売上)^(1 ÷ N) – 1}× 100

またCAGRは、さまざまな場面で活用できます。まず、1年ごとの売上の増減を平均化すれば、自社がどれだけ成長しているかを評価できます。同じ期間で計算した競合他社のCAGRと比べれば、市場における自社の立ち位置が分かるでしょう。

売上高成長率が伸び悩む・低下する原因を特定する

自社の売上高成長率が伸び悩む、あるいは低下する場合には、原因を見つけることが大切です。原因は、自社ではコントロールしにくい外部要因と、自社の努力や工夫で改善できる内部要因という2つに分類できます。

外部要因

売上高成長率が低下する場合に、自社の努力ではコントロールできない「外部要因」が関わることもあります。たとえば「景気後退」です。経済全体が冷え込むと、消費者の買い物への意欲が下がりやすく、多くの業界で売上ダウンの傾向にあります。

また、「市場の縮小」も、外部要因です。技術の進歩や人々のライフスタイルの変化によっても、市場が小さくなる場合があります。強力なライバル会社の参入や、競合他社の新商品リリースなどによって、自社の市場シェアが奪われて売上が減ることもあります。

外部要因は、自社での直接的なコントロールはできません。しかし、変化を早く察知し、適切な対応策を考えることは可能です。

内部要因

成長率が低下する理由のなかには、自社の経営活動に起因する「内部要因」も見受けられます。たとえば、製品が時代遅れになると、市場や顧客のニーズに対応できないことがあります。結果として、商品の魅力が失われてしまい、売上が減少するのです。

また、「営業力やマーケティング力の不足」も内部要因です。良い製品があっても、価値を顧客に伝える・届けるという仕組みが弱いと、成長に結びつきにくいでしょう。「不適切な価格設定」も、売上に影響します。価格が高すぎると顧客に敬遠され、逆に安すぎると利益が圧迫されることがあります。また内部要因は、自社の努力次第で改善が可能です。

売上高成長率の分析でお困りの方は二見達彦税理士事務所にご相談ください

売上高成長率は、企業の将来を見通し、次の行動を考えるために欠かせない指標です。

ただし、業界平均との比較や、利益やコストとのバランスを判断するには、専門的な知識が求められることも事実です。「自社の成長率の評価が正しいか分からない」「成長が鈍いので、具体的な改善策を考えたい」といったお悩みをお持ちの場合には、ぜひ二見達彦税理士事務所にご相談ください。専門家として、貴社の持続的な成長をサポートいたします。

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