税務調査が来やすい時期はいつ?個人事業主・法人別に解説

税務調査がいつ行われるのかわからず、確定申告後や決算後に不安を感じる個人事業主や法人経営者は少なくありません。税務調査は年間を通して行われますが、実施されやすい時期があることも事実です。
また税務調査の対象になるかどうかは、売上や経費の割合、過去の申告状況なども影響します。そこで本記事では、税務調査が来やすい時期や調査の対象になりやすいケースについて、個人事業主と法人別に解説します。
税務調査とは?
税務調査とは、納税者が提出した申告書の内容に誤りや不正がないかを、税務署や国税局が確認する手続きです。日本では、納税者が自分で所得や税額を計算して申告する「申告納税制度」がとられており、制度を適正に維持する目的で税務調査が行われます。
調査では、帳簿や請求書をはじめ、領収書や契約書なども確認されます。その結果、売上の計上漏れや経費の過大計上などが判明した場合は、修正申告が必要です。本来納めるべき税金に加え、過少申告加算税や重加算税などが課されることになります。
任意調査と強制調査の違い
税務調査は、任意調査と強制調査に分けられます。調査の大半は任意調査であり、原則として事前通知が行われます。その後、納税者の事務所や自宅などで帳簿書類などを確認します。調査期間は、1日から3日程度が一般的です。「任意」という名称ではあるものの、基本的に調査を拒むことはできません。正当な理由のない拒否や虚偽の回答には罰則が設けられています。
一方の強制調査は国税局査察部が行う調査であり、いわゆる「マルサ」が裁判所の令状にもとづいて行います。多額や悪質な脱税が疑われるケースが対象で、物件の捜索や差し押さえが行われることもあります。
税務調査の対象になるのは誰か
法人や個人事業主は、事業規模にかかわらず税務調査の対象になり得ます。売上が少なかったり赤字だったりしても、調査が来る可能性はあるでしょう。
また会社から給与を受け取っているだけであり、事業をしていない個人は、基本的には税務調査の対象外です。ただし、副業収入や不動産所得などがあり、自分で確定申告をしている会社員は対象になることがあります。さらに、相続税や贈与税の申告をした人も税務調査の対象になり得ます。申告内容と税務署が把握する情報に相違がある場合には、個人にも実施される可能性があります。
税務調査が来やすい時期は「7月〜11月」
税務調査は年間を通して行われていますが、7月から11月頃に本格化するといわれています。ここでは、この時期に税務調査が増える理由に加え、確定申告後に調査が行われやすい理由や、反対に調査が少ない時期について解説します。
7月の人事異動後に税務調査が本格化する
国税庁や税務署など、国税組織の事業年度は7月1日から6月30日です。つまり、新年度は7月だといえます。7月の人事異動後に新たな体制が整うと、秋にかけて税務調査が活発になります。具体的には、7月後半から税務調査の事前通知が増え、8月から11月頃にかけて実地調査が本格化する傾向にあります。
また国税庁や税務署は、年内に一定の調査を終えたいという事情もあることから、秋までに調査が実施されやすいのです。ただし、一般的な業務サイクルをもとにした傾向であり、具体的な調査時期が公表されているわけではありません。
確定申告後の4月~5月も調査が入りやすい
所得税の確定申告の期限は、原則として3月15日です。確定申告が終わると、税務署では提出された申告書の内容を確認し、過去の申告や取引先から提出された資料などと照合します。
その結果、売上の計上漏れや経費の不自然な増加などが見つかれば、問い合わせや税務調査につながる可能性があります。このため、個人事業主には確定申告が終わった直後の4月から5月にも、調査が入りやすいといわれています。
1月~3月は税務調査が少ない傾向にある
1月から3月は、税務調査が少ない傾向にあります。なぜなら、税務署に対して、確定申告の相談や受付業務が集中する時期だからです。税務署の職員は確定申告会場での対応や提出書類の処理に追われるため、税務調査に割く時間を作りにくくなります。
しかし、1月から3月に、税務調査がまったく行われないわけではありません。無申告や多額の所得隠しなど、緊急性や悪質性が高いと判断されたケースでは、確定申告期であっても調査が行われる可能性があります。
【個人事業主】税務調査が来やすい時期と頻度
ここでは、個人事業主に向けた税務調査が来やすい時期と頻度について解説します。主な時期や頻度について、チェックしていきましょう。
個人事業主に多いのは確定申告後の4月~5月
個人事業主の確定申告の期限は、原則として3月15日です。確定申告の期間が終了すると、税務署では、提出された申告書の内容を確認する業務が進められます。
その際に、申告内容の不備や不自然な経費などがあると、税務調査につながることがあります。そのため、確定申告が終わった後の4月から5月は、個人事業主に税務署から連絡が入る可能性がある時期とされています。
個人事業主の税務調査の頻度は「5~10年に1回」が目安
個人事業主の税務調査は、一般的に5~10年に1回程度が目安です。税務署がすべての個人事業主を毎年調査することは難しく、申告内容や収集した資料を分析したうえで、申告漏れなどが疑われる事業者を優先して調査するためです。
そのため、申告内容に問題がなければ、長期間にわたり調査を受けないケースもあります。一方、売上の急激な変動や不自然な経費がある場合には、短い間隔で調査対象になることもあるでしょう。また、前回の調査で売上の計上漏れや多額の経費否認などを指摘された場合は、次回調査までの間隔が短くなるケースも見られます。
売上規模が小さいと調査が来にくい傾向にある
税務調査に対して、人員や調査などの使えるリソースには限りがあります。そのため、追徴税額が大きいと見込まれる事業者ほど、調査の優先順位が高くなる傾向にあります。
一方で売上や所得が小さい個人事業主の場合には、大規模な事業者に比べると実地調査の対象になりにくいでしょう。しかし売上が少なくても、無申告を続けていたり、売上の計上額が取引先の資料と一致しなかったりする事情があれば、調査対象になる可能性があります。
【法人】税務調査の時期は「決算月」でわかる
法人の場合、税務調査が行われる時期は、決算月と一定の関係があります。なぜなら、税務署は法人税の申告後に内容を確認し、調査先を選定するためです。 ここでは、決算月に応じた「税務調査が入りやすい時期」について解説します。
決算月が2月~5月の法人は、秋頃に調査が行われやすい
法人税の申告期限は、原則として決算日の翌日から2か月以内です。そのため、決算月が2月から5月の法人は、おおむね4月から7月に申告を終えます。
その後、7月に始まる国税組織の新年度に合わせて調査日程が組まれるため、7月から12月頃に実地調査が集中しやすくなります。この時期は、国税組織の事務年度における上期にあたり、秋調査とも呼ばれます。
秋調査は、翌年6月末の年度終了までに調査や修正申告などの処理を終える必要があります。確定申告期を挟むことから、調査を進められる期間が限られており、調査が集中して確認が厳しくなりやすい傾向にあります。
決算月が6月~1月の法人は、春頃に調査が行われやすい
6月から翌年1月に決算を迎える法人は、8月から翌年3月頃に法人税の申告を行います。申告後に税務署が内容を確認し、調査先を選ぶため、調査はその後の春頃に行われやすくなります。ただし、1月から3月は税務署が所得税の確定申告対応で多忙になる時期です。そのため、実際には確定申告期が終わった4月から6月頃に調査が集中する傾向にあります。
また個人事業主の場合は、3月に所得税の確定申告を行うため、4月から5月頃に申告内容の確認が進みやすくなります。同時にこの時期は、個人事業主に関する確認や調査の準備が進むタイミングともいえるでしょう。
3月決算の法人が最も多く、秋調査は厳しくなりやすい
日本では3月を決算月とする法人が多く、法人税の申告は原則として5月末までに行われます。申告後に税務署が内容を分析し、7月の人事異動後に調査へ着手する流れになるため、3月決算法人は秋調査の対象になりやすいと考えられます。
秋は調査対象となり得る法人の数が多く、税務署側も限られた期間で調査を進めます。そのため、決算書の数値や取引内容などを細かく確認される可能性があります。毎月の記帳や証憑の保存を適切に行い、決算処理の根拠を説明できる状態にしておくことが重要です。
法人の税務調査の頻度は「3~10年に1回」が目安
法人の税務調査は、一般的に3~10年に1回程度が目安です。ただし、実際の頻度は法人の規模や過去の調査結果などによって異なります。また、一定年数が経過すれば必ず調査が来るわけではありません。
調査では、直近3年分程度の帳簿や申告内容を確認されることが一般的です。ただし、不正が疑われる場合には、さらに過去の期間まで確認対象が広がる可能性があります。帳簿や請求書などは、法令で定められた保存期間を守って保管しましょう。
時期に関係なく税務調査が来やすい人・法人の特徴
税務調査の対象は、ランダムに選ばれるわけではありません。また、税務調査が行われやすい時期でなくても、申告内容や過去の調査状況などによっては対象になります。ここでは、時期にかかわらず税務調査の対象になりやすいケースを紹介します。
売上が大きい、または急増・急減している
売上や利益が大きい事業者は、申告漏れがあった場合の税額も大きくなるため、税務署から注目されやすい傾向にあります。
前年より売上や利益が急増・急減している場合も、その理由を確認される可能性があるでしょう。特に、売上が伸びているにもかかわらず突然赤字になった場合や、利益率が大きく低下した場合は、売上の計上漏れや経費の水増しを疑われやすいです。そのため、設備投資や取引先の倒産など、合理的な理由を帳簿や契約書などで説明できることが重要です。
経費の割合が同業種の平均より極端に高い
税務署は、業種や事業規模ごとの申告データを蓄積しています。そのため、同業種の事業者と比較して経費の割合が極端に高い場合は、私的な支出を事業経費に含めていないかなどが確認される傾向にあります。
特に、交際費や外注費・消耗品費などは、事業との関連性を確認されやすい項目です。領収書があるだけでは、経費として認められるとは限りません。相手先や目的、業務との関係などを記録し、契約書・メール・議事録などの根拠となる資料も残しておきましょう。
消費税の還付を受けている
消費税の申告で、受け取った消費税よりも支払った消費税の方が多い場合は、一定の要件のもとで還付を受けられます。
還付申告は税金を納付する申告とは異なり、国から納税者へ金銭を支払う手続きです。そのため、税務署は売上や仕入れの実態などを慎重に確認します。実際に、高額な設備投資や輸出取引などの正当な理由があっても、追加資料の提出を求められることがあるでしょう。架空の仕入れや不正な還付が疑われれば、実地調査に発展する可能性もあります。そのため、取引の事実を示す資料を整理しておくことが大切です。
過去に申告漏れ・不正を指摘された
過去の税務調査で申告漏れや不正を指摘された事業者は、その後の申告内容も、注意深く確認されるケースが多いでしょう。
特に、売上除外や架空経費といった意図的な不正を指摘された場合は、同様の処理を繰り返していないかを確認するため、次回調査までの間隔が短くなる可能性があります。
前回の指摘事項の原因を把握し、経理の処理方法や社内体制を改善することが重要です。税理士にも指摘内容を共有し、同じ誤りが起きない仕組みを整えるとよいでしょう。
無申告や、申告内容に不審な点がある
「確定申告をしなければ税務署にばれない」という考えは、誤りだといえます。税務署は、取引先に対する調査や企業から提出される支払調書、金融機関などから収集した資料を通じて情報を把握できるからです。
例えば、取引先が外注費として100万円を計上しているのに、受け取った側がその売上を申告していなければ、双方の記録に食い違いが生じます。取引先への調査をきっかけに、無申告が発覚するケースもあるでしょう。
また無申告の期間が長くなるほど、延滞税などの負担が大きくなります。申告漏れに気づいた場合には、速やかに期限後申告や修正申告を検討しましょう。
税務調査が来やすい時期を把握して落ち着いて備えよう
税務調査が来やすい時期はあるものの、これらはあくまで目安です。
また税務調査への有効な備えは、日頃から売上や経費を正確に記帳し、根拠となる資料を整理しておくことです。事前通知を受けた場合も、帳簿を書き換えたり資料を隠したりせず、申告内容を確認したうえで誠実に対応しましょう。
二見達彦税理士は、個人事業主や法人の税務相談、申告手続きや税務調査への対応をサポートしています。税務署から調査の連絡を受けた方はもちろん、申告内容に不安がある方や、日頃の経理体制を見直したい方も、お気軽にご相談ください。
