法定調書とは?経営者が押さえるべき調書の種類・提出期限・電子化について解説

法定調書の作成は、年末調整の時期に短期間に集中して行う必要があります。正しく迅速に作業を進めるためには、法定調書について理解を深めておくのが最も効果的といえるでしょう。この記事では、代表的な法定調書の紹介や作成方法・提出時の注意点などについて解説します。
法定調書とは
法定調書は税務署に提出する書類ですが、この章では、具体的にどのような書類をなんのために提出するかについて説明します。
法定調書の定義と4つの法律
法定調書とは、以下の4つの法律に基づいて、税務署への提出が義務付けられた書類の総称です。
・所得税法 ・相続税法 ・租税特別措置法 ・国外送金等調書法 ※1
※1 「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」の略
法定調書は全部で63種類ある
2026年(R8)9月現在で、国税庁が規定している法定調書は63種類あります。最も身近なのは「給与所得の源泉徴収票」で、法定調書は誰もが目にしている書類といえるでしょう。
また、数ある法定調書の中で代表的なものは、所得税法に基づく次の6種類です。
・給与所得の源泉徴収票 ・退職所得の源泉徴収票 ・報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書 ・不動産の使用料等の支払調書 ・不動産等の譲受けの対価の支払調書 ・不動産等の売買又は貸付けあっせん手数料の支払調書
そのほか、相続税法に記載されている「生命保険金・共済金受取人別支払調書」や、租税特別措置法に基づく「特定口座年間取引報告書」、国外送金等調書法の「国外財産調書」などがあります。
提出が義務化されている理由
法定調書の提出が義務化されている理由は、税務署がお金の流れを把握して正しい納税につなげるためです。「誰が・誰に・いくら支払ったか」という動きをつかみ、支払先の申告内容と突き合わせることで、申告ミス・脱税・所得隠しなどを防止して適切な納税に導くしくみとなっています。
企業に関係する主な法定調書6種類
ここでは、前項で紹介した6つの代表的な法定調書について、詳しく解説していきます。
給与所得の源泉徴収票
源泉徴収票とは、「一年間に会社から支払われた給与・賞与や源泉徴収額」を記載した書類です。正社員やパート・アルバイトなど、雇用形態を問わず発行されるものです。「所得税が課される額=課税所得」が分かるように、社会保険料や配偶者控除などの控除額も記載されており、最も身近な法定調書といえるでしょう。
退職所得の源泉徴収票
退職所得の源泉徴収票とは、「退職手当や源泉徴収税額」を記載した書類です。そのほか勤続年数も記載されていますが、留意すべきは「退職所得」に関する書類だという点です。すなわち、退職時には「退職所得の源泉徴収票」だけでなく「給与所得の源泉徴収票」も発行しなければならないので、よく理解しておきましょう。
また、退職手当を支給したすべての従業員に対して、退職の日から1ヶ月以内に交付する必要があります。
▼参考:国税庁|「退職所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書とは、税理士や弁護士への報酬、原稿料・講演料などを「同じ相手に」一定の額を支払った場合に発行する書類で、一定の額とは次のとおりです。
| 対象者 | 法定調書(支払調書)提出が必要になる額(※2) |
|---|---|
| 弁護士・税理士など士業への報酬<br>作家や画家への原稿料や画料・講演料 など | 同一の人に対して年間の支払いが5万円を超えるもの |
| 外交員・集金人・プロボクサー・ホステスなどの報酬、広告宣伝費のための賞金 など | 同一の人に対して年間の支払いが50万円を超えるもの |
| 馬主に支払う競馬の賞金 | 同一の人に対して1回あたり75万円を超える支払いがあった場合(提出額はその1年間すべての支払について) |
| プロ野球選手 | 同一の人に対して年間の支払いが5万円を超えるもの |
| 社会保険料診療報酬支払基金(※3)が支払う診療報酬 | 同一の人に対して年間の支払いが50万円を超えるもの |
ここで注意すべきは、法定調書合計表(※4)には、支払調書を提出しない支払先へ支払った分も含めて記入しなければならないことです。提出が不要な取引の記載漏れがないように、十分に注意しましょう。
※2 源泉徴収の有無に関わらず提出が必要になる
※3 2026年(R8年)10月から「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構」に名称変更
※4 法定調書合計表とは法定調書の内容をまとめた表紙のような役割の書類
▼参考:国税庁|「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等
不動産の使用料等の支払調書
不動産の使用料等の支払調書とは、事務所や店舗の家賃、権利金・更新料などを支払った場合に発行する書類です。オフィスを賃借している企業の多くが該当する身近な支払調書で、押さえておくべきポイントは次のとおりです。
【支払調書提出の条件】
| 対象となる額(※5) | 対象となる項目 | |
|---|---|---|
| 貸主が法人の場合 | 15万円超 | 権利金・更新料 など |
| 貸主が個人の場合 | 15万円超 | 賃借料(家賃)・権利金・更新料 など |
上記のように、賃借料は貸主が個人の場合にのみ対象となります。また、イベント会場の賃借料や広告宣伝のための土地・建物賃借料も提出対象になるので、よく理解しておきましょう。
※5 同一の人に対して支払った1年間の額
▼参考:国税庁|「不動産の使用料等の支払調書」の提出範囲等
不動産等の譲受けの対価の支払調書
不動産等の譲受けの対価の支払調書とは、不動産や不動産上の権利などにかかる対価を支払った場合(主に不動産を購入した時)に発行する書類です。支払先が法人・不動産業者である個人で、同一の人に対して支払った年間の額が100万円を超えるものが対象になりますが、主として建物の賃貸借の代理や仲介を事業として営んでいる個人である場合は、提出義務はありません。
なお、「不動産の譲受け」とは売買だけではなく、交換・競売・公売などによる取得も含まれます。
▼参考:国税庁|「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の提出範囲等
不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書とは、不動産取引の仲介手数料を支払った場合に発行する書類です。対象となるのは、法人・不動産業者である個人で、同一の人に対して年間15万円を超える支払いがあった場合ですが、主として建物の賃貸借代理や仲介を事業とする不動産業者の個人である場合は、提出する必要はありません。
▼参考:国税庁|「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」の提出範囲等
法定調書の提出範囲
一定の条件を満たすと提出義務のある法定調書ですが、前項の法定調書についての諸条件を、簡潔に分かりやすく解説します。
【支払調書】種類ごとの提出義務者と金額基準の一覧
ここでは、前項で紹介した法定調書のうち、支払調書の提出要件や対象となる金額について、以下の表にまとめます。
| 主に対象となる項目 | 対象となる金額(※6) | |
|---|---|---|
| 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書 | 弁護士・税理士など士業への報酬<br>原稿料・講演料 など | 5万円を超えるもの |
| 不動産の使用料等の支払調書 | 賃借料(※7)・権利金・更新料 など | 15万円を超えるもの |
| 不動産等の譲受けの対価の支払調書 | 不動産を購入した場合 | 100万円を超えるもの |
| 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書 | 不動産の仲介手数料を支払った場合 | 15万円を超えるもの |
※6 同一に対して支払った1年間の金額
※7 賃借料(家賃)は個人へ支払ったもののみ対象
【源泉徴収票】税務署に提出が必要な従業員の条件
源泉徴収票は全従業員分を発行・交付しますが、一定の人は税務署にも提出する必要があり、条件は次のとおりです。
【年末調整対象者のパターン】 ・法人の役員(退職者含む):支給額が年間150万円を超える場合 ・弁護士、税理士など士業:支給額が250万円を超える場合 ・上記以外:支給額が500万円を超える場合
【年末調整未済のパターン】 ・退職者:収入が250万円を超える場合 ※8 役員は50万円 ・乙欄:収入が50万円を超える場合 ・甲欄であっても収入が2,000万円を超える場合
▼参考:国税庁|「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等
「法定調書合計表」とセットで提出する
法定調書合計表とは、各調書の支払金額や源泉徴収税額をまとめて記載したもので、法定調書の表紙のような役割をもちます。注意すべきポイントは、提出義務のない取引の金額も法定調書合計表に反映する必要があることで、各法定調書や源泉徴収票などとセットで税務署に提出します。
法定調書の提出方法
法定調書の提出には、いくつかの方法があります。DX推進の流れにより、代表的なe-Taxやクラウドを利用した提出方法もあるので、自身に合うものを選ぶとよいでしょう。
4つの提出方法がある
法定調書の提出方法は、以下の4つが挙げられます。
・書面提出(郵送・窓口持参) ・e-Tax ・認定クラウド ・CD、DVDなどの光ディスク
認定クラウドとは、国税庁長官の認定を受けたクラウドサービスで、事前に届出を提出する必要があります。詳細は「国税庁|クラウドサービス等を利用した法定調書の提出について」をご確認ください。
前々年100枚以上でe-Tax等による提出が義務
法定調書の種類ごとに、前々年(2年前)の提出枚数が100枚以上の場合は、e-Taxまたは光ディスクなどによる電子提出が義務付けられています。具体的には以下のとおりです。
(例)R6年の「給与所得の源泉徴収票」が100枚以上である場合 →R8年の「給与所得の源泉徴収票」はe-Taxまたは光ディスクで提出
2027年(R9)からは「30枚以上」に基準引き下げ
2027年(R9)1月、前項のルールは「30枚以上」に改正され、電子提出義務の対象企業が大幅に増えることが予想されます。国のDX推進の一環といえるこの改正に向けて、中小企業も今から電子化対応を進めるようにしましょう。
【原則】提出期限は翌年1月31日
ほとんどの法定調書の提出期限は、該当年の翌年1月31日となります。年末調整と時期が重なるため、早めに準備するのが重要です。
所轄の税務署へ提出
法定調書の提出先は所轄税務署です。同時期に市区町村に提出する必要のある「給与支払報告書」は、内容は源泉徴収票とほとんど同じですが、法定調書とは別制度になるので混同しないようにしましょう。
法定調書の作成・提出における実務上の注意点
法定調書の作成・提出において留意すべきポイントは、「時間」と「セキュリティ」です。詳しくは以下のとおりです。
マイナンバーの収集と安全管理が必要
法定調書に必要なマイナンバー(個人番号・法人番号)の管理は、最も重要な注意ポイントといえます。収集・保管には安全管理の徹底措置が求められ、従業員へ交付する給与所得・退職所得の源泉徴収票や支払通知書へはマイナンバーの記載は行わないので、間違えないように気をつけましょう。
年末調整のスケジュールと並行して準備を進める
11月~12月の年末調整から、1月末が期限の法定調書提出までを一連の業務として考えると、担当者は、短期間に多くの業務をこなさなければなりません。そのため、作業時間を逆算して、早めに支払先情報を集めたり整理したりするなど、事前の準備を行うのがおすすめです。
業務負担が大きい場合はシステム導入や税理士への依頼も選択肢に
スムーズな法定調書の作成は、ハイスペックな作成システムの活用も有効ですが、取引が提出要件に当てはまるかどうかの見極めや、提出すべき源泉徴収票の判断は煩雑で、簡単な作業ではないでしょう。
「税理士はどこまでやってくれる?依頼できる具体的な業務範囲を詳しく解説」の記事でもあるように、二見達彦税理士事務所は、専門家として、年末調整・法定調書の提出までを迅速かつ正確に行うサポートが可能です。複雑で確認が多岐にわたるこれらの作業についてお悩みのある方は、弊所の無料相談をお気軽にご利用ください。
