副業の法人化ガイド|メリット・デメリットを徹底解説

近年、副業をしているサラリーマンや個人事業主が、法人化を進める動きが高まっています。法人化すると、社会的信用が向上するなどの利点がありますが、法人ならではの費用がかかるといったデメリットもあります。
この記事では、副業を法人化することで考えられるメリット・デメリットや、法人化する際の初期費用などを注意点を交えて解説します。副業の法人化を考えている方は、ぜひ検討材料の一つとして参考にしてください。
副業を法人化する10のメリット
法人化すると、さまざまなメリットが生み出されます。ここでは、節税や事業運営において、大きな影響力を持つ10のメリットを紹介しましょう。
税率の違いによる節税効果
副業の法人化は、所得税と法人税の税率の違いによる節税のメリットがあります。
個人の所得税は、課税金額が多いほど税金が高くなる「累進課税制度」ですが、法人税はある定められた額までは一定の税率が課される「比例課税方式」です。そのため、所得金額がその額を超えると、法人税の方が税負担を抑えられる仕組みになっています。
役員報酬の活用で個人と法人に所得を分散
法人の役員になると、自身や家族への給与(役員報酬)が経費となり、個人としては給与所得控除が適用されるため、法人個人の両面での節税が期待できるでしょう。
ただし、役員報酬額は、役員個人の社会保険料加入義務の発生や、配偶者・扶養控除を受けるために一定の範囲に留める必要があるなど、複数の要素を勘案して決定するのが重要です。
経費として認められる範囲の拡大
会社を設立して法人化すると、個人事業主より経費計上できる範囲が広がります。具体的には下記のようなものがあり、節税の選択肢が増えるので大きなメリットといえるでしょう。
- 生命保険料(法人契約)
- 社宅家賃
- 出張手当
- 退職金 など
最大10年間の赤字繰越で将来の税負担を軽減
法人は、事業年度の欠損金(赤字)を次年度以降、最大で10年間繰り越せます。将来の黒字と相殺して法人税を圧縮することが可能で、個人事業主の3年と比べると格段に税負担を軽減できるでしょう。
ただし、青色申告で毎年適切に申告していることが条件となります。
消費税の免税期間を最大化できる可能性
課税売上高が1,000万円を超えるタイミングで法人化するのも、大きな節税につながるでしょう。資本金1,000万円未満で法人設立すると、最大で2期目まで消費税の納税義務が免除されます。
ただし、インボイス制度に登録して適格請求書発行事業者になると、諸条件に関わらず、消費税の申告、納税義務が発生するので注意が必要です。
社会的信用の向上によるビジネスチャンスの拡大
法人は個人事業主より社会的信用が高く、大企業との取引や入札などが有利になりやすいでしょう。理由として、法人化は各種手続きを踏んでの登記で情報開示されること、会社法に基づいて正当に運営されることなどが、社会的信用につながると考えられます。
金融機関からの融資や補助金など資金調達の有利化
個人に比べ、法人は金融機関の融資審査も有利になりやすい傾向にあります。法人化すると会計を正確かつ明確にする必要があるので、社会的信用だけでなく、クリアで安定した経営状態が認められやすくなるからです。
また、補助金・助成金受給の対象は法人であるケースが多いため、資金調達の選択肢が増えるのも大きなメリットといえるでしょう。
経営者個人を守る「有限責任」という防壁
副業を法人化すると、負債に対する義務の範囲も変わります。法人の経営者の負債の返済義務は、原則として「出資した額の範囲内(有限責任)」です。一方、個人事業主の場合は、自己破産しない限り無制限で返済義務が生じます。
有限責任になることで、会社の借り入れや仕入れ先への支払いなど、出資額以上の返済義務はなくなり、後の経営者自身の人生を守ってくれるでしょう。
決算月を自由に設定でき、本業の繁忙期を回避可能
法人の決算月は自由に設定できるため、本業の繁忙期を避けて決算業務のスケジュールを組めるのもメリットの一つです。
個人事業主の場合、事業年度は1月から12月と定められていますが、法人化して決算日を調整することで、スムーズに業務や決算準備を進められます。
退職金の支給が可能になり、将来の資産形成に繋がる
将来的な退職金の支給は、法人で経費計上できるだけでなく、役員個人の退職所得としても税制上優遇されるでしょう。具体的な退職所得の算出法は下記で、退職所得控除額が大きいため、給与所得に比べて有利になります。
【退職所得の計算】
(退職金-退職所得控除額)×1/2=退職所得 ※1
【退職所得控除額】
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数 (80万円に満たない場合は80万円) |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
例1:勤続年数12年3ヶ月の場合の退職所得控除額
40万円×13年=520万円 ※2
例2:勤続年数32年の場合の退職所得控除額
800万円+70万円×(32年-20年)=1,640万円
※1 給与所得とは違い、退職所得は分離課税で所得税を算出
※2 端数の月は切り上げ
参考:国税庁|退職金を受け取ったとき(退職所得)
副業法人化の5つのデメリットとリスク
法人化を検討する際は、不都合になり得る点もしっかりと理解しておくのが大切です。ここでは、主なデメリットやリスクについて説明します。
会社設立と解散に要する費用と手間
法人設立費用は、株式会社で約20万円~25万円、合同会社で約6万円~10万円程度必要になります。そのほか、資本金の準備や多くの手続きが必須になるので、事前に理解しておくのがよいでしょう。
また、個人事業主とは違い、法人が事業をやめるには、解散手続きとして登記費用や官報公告掲載料などがかかるので注意が必要です。
会社設立については、法人成りの手続き・書類・費用を解説|個人事業主から会社設立までのロードマップの記事でも詳しく解説しているので、ご一読ください。
赤字でも発生する法人住民税(均等割)の負担
事業所得が赤字であっても、約7万円程度(※3)の「法人住民税均等割」の納税義務が発生するので、念頭に置いておきましょう。
法人住民税は、各自治体の公的サービスの運営会費のような税で、法人税額によって決まる法人税割と、必ず納税が必要な均等割で成り立っています。また、均等割は法人の従業員数や資本金の金額を元に決定され、各都道府県、市に納税するものです。
※3 各自治体によって異なる
社会保険への強制加入と保険料負担の増加
役員報酬を支払う場合、社長一人であっても社会保険への加入義務が発生します。また、副業と本業の所得を合算して社会保険料が算出されるため、国民健康保険・年金よりも負担が増える可能性が高まるでしょう。
このような場合、社会保険料を抑える対策として下記があるので参考にしてください。
- 法人化した副業では役員報酬支給を0にする(社会保険料加入義務が発生しない)
- 個人事業主(本業)との二刀流の場合、副業は最低限の役員報酬に設定して社会保険料を抑える
個人事業主より複雑化する経理・税務・法務の事務負担
法人は個人事業主に比べ、決算や日常の事務作業が煩雑になりがちです。複式簿記での記帳や株主総会の開催など、専門的な知識が必要になる場合があります。
負担が増えて、事業に注ぐ時間や労力に支障がある場合は、専門家に委託するのがおすすめです。費用は発生しますが、コストや生み出せる時間、工数などのバランスを考慮して検討してみるのもよいでしょう。
会社の資金を自由に使えない制約
副業を法人化することで、会社と代表者は法律上別人格となり、代表者は役員報酬以外の資金を自由に使うことができません。会社の資金で私的な支出がある場合は役員貸付金として扱われ、代表個人に支払利息が発生するので注意しましょう。
しかし、正規の手続きを経て代表者個人が自由に使える資金を増やす方法もあるので、以下で紹介します。
- 出張日当で支払う
- 法人名義で生命保険や経営セーフティ共済に加入する(経費計上可能で将来的に自由に使える)
- 家族に役員報酬として支給する(適切な報酬額であること) など
また、法人化のメリット・デメリットについては、「法人化で本当に節税できる?メリット・デメリットと最適なタイミングを徹底解説」の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてください。
最大の懸念「会社にバレる」リスクとは?
「本業の会社に気づかれないように副業をしたい」と考える方もいるかもしれませんが、何らかのかたちで副業の別所得は把握されるようになっています。ここでは、把握される主な理由について解説します。
住民税の通知から発覚するケース
副業の所得があると住民税額が上がり、住民税決定通知書から本業の会社に気づかれる可能性があります。住民税は前年の収入に対して決定され、原則として特別徴収(本業の給与から控除)して会社が納付する仕組みになっています。
副業は、トラブルにならないためにも、事前に本業の会社に許可を取るようにしておきましょう。
社会保険の二重加入で発覚するケース
本業、副業ともに社会保険の加入義務がある場合は、管轄の年金事務所に二以上事業所勤務の届出を提出する必要があります。この届出の提出によって、本業の会社に通知が届くため、副業の事実が明確に伝わってしまうでしょう。
また、法律の義務である届出を提出しない場合、50万円以下の罰金や、6ヵ月以下の懲役が科せられるリスクがあるので注意が必要です。
株式会社と合同会社、副業にはどちらが最適?
実際に副業を法人化する場合、株式会社と合同会社、どちらが自身の事業に適しているのか判断しかねる方も多いでしょう。ここでは、それぞれの特徴を紹介するので、自身の希望する条件と照らし合わせてみてください。
設立・維持コストの比較
ここでは株式会社、合同会社の設立費用や決算公告(※6)の維持費用を比較してみましょう。具体的な費用は下記です。
| 株式会社 | 合同会社 | |
|---|---|---|
| 設立費用合計 | 約20万円~ | 約6万円~ |
| 定款認証料 | 3~5万円 | 不要 ※4 |
| 登録免許税 | 15万円 | 6万円 |
| 印紙代 | 4万円 ※5 | 不要 |
| 維持費用 | 決算公告の義務あり | 決算公告の義務なし ※7 |
【株式会社の決算公告費用(一例)】
- 官報: 約8万円~(2枠)
- 日刊新聞紙: 約10万円~100万円
- 電子公告: 自社サイトは無料(別途調査機関費用が必要)
※4 定款の認証は不要だが作成は必要
※5 電子定款を利用する場合は不要
※6 決算公告とは:事業年度ごとに会社の年間の財政状況や経営成績を公表すること
※7 合同会社に決算公告の義務はありませんが、社会的信用アップのためにあえて決算公告をすることも可能
社会的信用度と資金調達の比較
社会的信用においては、一般的に株式会社の方が高いといえるでしょう。これは、株式会社の方が歴史が長いこと、決算公告が法律で定められていることなどが信用につながっていると考えられます。
また、株式会社の方が金融機関からの融資が有利なこと、株式発行による大規模な資金調達ができるといったメリットがあり、将来の上場を視野に事業を進めるのも可能です。
ただし、近年では合同会社も社会に定着し、信頼性が向上傾向にあります。
経営の自由度と利益分配の柔軟性
合同会社は、「意思決定が迅速であること」「貢献度に応じて利益を自由な割合で分配できる」などの柔軟性があります。一方、株式会社は、利益は原則として出資比率に応じての分配となるので、経営の自由度を求める場合は、合同会社の方が適しているといえるでしょう。
副業の事業モデル別おすすめの会社形態
副業として、合同会社はBtoC(※8)やスモールビジネス、株式会社はBtoB(※9)や事業拡大を目指す場合が向いているといえます。
一概にはいえませんが、社会的信用や大規模な資金調達が必要なビジネスは株式会社、資格やスキルが活かされるビジネスは合同会社がおすすめの形態で、具体的な事業モデルは以下です。
【合同会社が向いている事業モデル】
- オンラインショップ運営
- カウンセラー(心理・キャリア)
- 各種オンライン講師 など
【株式会社が向いている事業モデル】
- ビジネスコンサルタント
- 不動産仲介
- 保険代理店 など
※8 Business-to-Consumerの略で一般消費者が顧客のビジネスモデル
※9 Business to Businessの略で企業が顧客のビジネスモデル
専門家(税理士、社労士、中小企業診断士)への相談も有効
副業の法人化は、制度が多岐に渡るため、自社に最適な制度の選定や申請書類の作成などは専門家に相談するのがおすすめです。同じ法人でも、株式会社か合同会社のどちらが適しているかといった、基本的なことから専門家のアドバイスを受けることで、円滑に事業を進められるでしょう。
副業の法人化を検討中の方は二見達彦にご相談ください
昨今の物価高騰や税金、社会保険料の負担増などで、「副業を考えている」「実際に副業をしている」方は増加傾向にあります。中でも、副業の収入が増えて今後の方向性を模索している場合は、法人化について一度でも考えたことがある方は多いでしょう。
二見達彦税理士事務所は、創業支援に関する手厚いサポートが強みです。中小企業庁認定の支援機関として、お客さまに合わせた包括的なサポートで最適な事業運営を実現します。副業の法人化について検討されている方は、まずはお気軽にご相談ください。
