一年基準とは?貸借対照表の流動・固定を分けるルールを解説

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一年基準とは、貸借対照表上の資産や負債を、流動と固定に区分する際に用いられるルールの一つです。適切に区分することで、会社が近いうちに回収できる資産や、支払いが必要な負債を把握しやすくなります。

しかし、勘定科目によって判断方法が異なるため、「どちらに区分すればよいのか」と迷うこともあるでしょう。本記事では、一年基準の基本的な考え方から、正常営業循環基準との違い、具体的な勘定科目や具体例まで解説します。

目次

一年基準とは

一年基準とは、貸借対照表に記載する資産や負債を、流動と固定に区分する際に用いられる基準です。

一定の資産や負債について、一年以内に現金化や回収・支払いなどが行われるかを基準に分類します。また、英語では「one year rule」と呼ばれます。ここでは、押さえておきたい一年基準の基本を見ていきましょう。

一年基準の「一年」はいつから数える?

一年基準でいう「一年」は、基本的に決算日の翌日から考えます。

たとえば、3月31日を決算日とする会社であれば、翌日の4月1日から翌年3月31日までが一年以内にあたります。この期間内に回収期限や支払期限などが到来するものは、原則として流動資産または流動負債に区分することになります。

一方、回収や支払いが翌年の4月1日以降になるものは、固定資産や固定負債として扱うのが基本です。

一年基準で流動・固定を分ける理由

資産や負債を流動・固定に区分する大きな目的は、会社の短期的な支払能力や財務の安全性を把握しやすくすることです。

たとえば資産を多く保有している会社でも、大半がすぐに現金化できない建物や設備であれば、直近の支払いに使えない可能性があります。反対に多額の負債があっても、返済期限が長期間にわたっていれば、すぐに全額を用意する必要はないでしょう。

流動・固定を区別することで、近いうちに「使える資産」と「支払う負債」のバランスが見え、会社の財務状態をより正確に把握しやすくなります。

一年基準と貸借対照表の4分類

貸借対照表では、資産を「流動資産」と「固定資産」、負債を「流動負債」と「固定負債」に分けて表示します。つまり流動・固定の区分は、貸借対照表上では4つに分類されることになります。

ただし、これらの分類は一年基準だけで決まるわけではありません。企業の通常の営業活動との関係も踏まえて判断します。まずは、それぞれの分類の基本的な考え方を見ていきましょう。

【貸借対照表の4区分】

流動固定
資産流動資産固定資産
負債流動負債固定負債

なお、企業会計原則では、資産の部は「流動資産」「固定資産」に加えて「繰延資産」を含む3つの区分と定められています(貸借対照表原則 四)。繰延資産とは、創立費や開業費、株式交付費、社債発行費、開発費のように、すでに支出が済んでいてその効果が将来にわたって及ぶ費用を、資産として計上したものです。繰延資産は一年基準・正常営業循環基準のいずれによっても区分されず、支出の効果が及ぶ期間にわたって償却します。本記事では、流動・固定の区分がテーマとなるため、以下では流動資産・固定資産・流動負債・固定負債の4つを取り上げます。

流動資産

流動資産とは、現金や預金をはじめ、比較的短期間で現金化される資産を指します。代表的な勘定科目として、以下の内容が挙げられます。

  • 現金預金
  • 売掛金
  • 受取手形
  • 棚卸資産

流動資産は、「日常的な事業活動のなかで動く資産」や「近いうちにお金になる資産」と考えるとわかりやすいでしょう。

なお、預金のうち満期が一年を超えて到来するもの(長期の定期預金など)は、流動資産ではなく固定資産の「投資その他の資産」に区分されます。詳しくは後述の「資産側の例」をご覧ください。

固定資産

固定資産とは、長期間にわたり、会社が保有や利用する資産を指します。固定資産はさらに「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3つに区分されます(貸借対照表原則 四)。それぞれの代表例は、以下のとおりです。

  • 有形固定資産:建物、土地、機械装置
  • 無形固定資産:ソフトウェア、のれん、特許権
  • 投資その他の資産:長期貸付金、投資有価証券、長期の定期預金、長期前払費用、差入保証金

このうち、一年基準によって「固定」と判断された資産は、原則として「投資その他の資産」に区分されます。たとえば長期貸付金は、建物や機械装置と同じ固定資産ではあるものの、有形固定資産ではなく投資その他の資産に含まれる点に注意しましょう。

また固定資産というと、現金化するまで一年を超える資産と思われがちです。しかし建物や機械のように、売却や現金化を目的とせず、長期間にわたり事業に使用する資産も固定資産に含まれます。

流動負債

流動負債とは、比較的短期間のうちに、支払いや返済が必要になる負債です。以下が、代表的な内容です。

  • 買掛金
  • 支払手形
  • 短期借入金
  • 一年以内に支払う未払金

流動負債は「一年以内など、近いうちに支払う必要があるお金」と考えると、わかりやすいでしょう。なお、未払金のうち、営業活動以外の取引から生じたもので支払期限が一年を超えるものは、流動負債ではなく固定負債(長期未払金)に区分されます。

固定負債

固定負債とは、返済や支払いまでの期間が比較的長い負債のことです。以下の内容が、代表例として挙げられます。

  • 長期借入金
  • 社債

たとえば銀行から10年間の返済期間で融資を受けた場合、借入金の全額をすぐに返済する必要はないでしょう。原則として一年以内に返済する部分を流動負債、それより先に返済する部分を固定負債として区分します。

正常営業循環基準との違い

一年基準は、一年以内という期間で流動・固定を判断します。一方の正常営業循環基準は、通常の営業活動のサイクルに含まれるかで判断する点が特徴です。

実務では、まず正常営業循環基準を適用し、それに該当しない資産や負債について一年基準で判断します。ここからは、それぞれの考え方と適用の順序を詳しく見ていきましょう。

正常営業循環基準とは

正常営業循環基準とは、通常の営業活動のサイクルに含まれる資産や負債を、流動資産・流動負債に分類する考え方です。たとえば商品を販売する会社では、「商品を仕入れる→販売する→代金を回収する」という一連の流れがあります。

この過程で発生する商品や売掛金などは、通常の営業活動のなかで繰り返し動くものです。

そのため、単純に一年以内に現金化されるかどうかではなく、「正常な営業サイクルのなかにあるか」を基準としたうえで、流動・固定を判断します。

正常営業循環基準と一年基準の適用順序

流動・固定を判断する際は、まず正常営業循環基準を適用し、通常の営業サイクルに含まれる資産・負債かどうかを確認します。該当するものは、原則として流動資産・流動負債に分類する流れです。

一方で、通常の営業サイクルに含まれないものは、一年基準を用いて、一年以内に現金化・回収・支払いなどが行われるかを判断します。

つまり、正常営業循環基準で判断できないものを、一年基準で判断するという順序です。

棚卸資産や売掛金が一年を超えても流動資産になる理由

棚卸資産や売掛金は、通常の営業サイクルのなかで生じる資産です。そのため、現金化まで一年を超える場合でも、正常営業循環基準により流動資産に分類されることがあります。

たとえば、ウイスキーのように製造から販売まで長期間を要する商品では、仕掛品や製品を一年以上保有することがあるでしょう。それでも、通常の事業活動のなかで「販売するために保有しているもの」であれば、原則として棚卸資産として流動資産に含まれます。

ただし、営業サイクルのなかで生じた債権であっても、例外的に固定資産に区分されるものがあります。企業会計原則注解【注16】では、受取手形や売掛金などの営業債権のうち、破産債権・更生債権およびこれに準ずる債権で、一年以内に回収されないことが明らかなものは、固定資産である「投資その他の資産」に属するものと定められています。取引先が破産や民事再生などに陥り、回収の見込みが立たなくなった売掛金は、「破産更生債権等」として固定資産に振り替える点に注意しましょう。

一年基準が適用される勘定科目の具体例

一年基準は、正常営業循環基準だけでは流動・固定を判断できない勘定科目に対して適用されます。

これらの勘定科目は、決算日の翌日から一年以内に回収・支払いの期限が到来するかによって区分が変わります。ここでは、資産側と負債側の代表的な勘定科目と、長期借入金を例にした具体的な判断方法を見ていきましょう。

資産側の例

一年基準が使われる資産の代表例として、以下が挙げられます。

  • 貸付金
  • 定期預金
  • 営業活動以外から生じた未収金

たとえば貸付金は、一年以内に回収する予定であれば「短期貸付金」とし、一年を超えて回収する予定であれば「長期貸付金」と区分するのが基本です。定期預金なども同様に、いつ現金化できるのかを確認しながら区分を判断します。

なお、一年を超えると判断された長期貸付金や長期の定期預金は、固定資産のなかでも「投資その他の資産」に区分されます。

このように、一年基準が適用される資産では、決算日時点で「いつ回収できるのか」を確認することがポイントです。

負債側の例

一年基準が使われる負債の代表例として、以下が挙げられます。

  • 借入金
  • 営業活動以外から生じた未払金

たとえば借入金は、一年以内に返済する予定の部分を流動負債、一年を超えて返済する部分を固定負債として区分します。そのため、長期の借り入れであっても、すべてが固定負債になるとは限りません。決算日時点で今後一年間に返済する金額を確認し、返済時期に応じて流動・固定に分けることがポイントです。

未払金も同様に、営業活動以外の取引から生じたもので、支払期限が一年を超えて到来するものは、固定負債(長期未払金)として区分します。

【具体例】長期借入金のうち、一年以内に返済する分の扱い

たとえば、会社が銀行から1億円を借り入れ、10年間で毎年1,000万円ずつ元金を返済する契約を結んだとします。

決算日時点で、今後一年間に返済する予定の1,000万円は、長期の融資として借りたものであっても、貸借対照表上では流動負債として表示します。その際、一年以内に返済予定の部分は「一年内返済予定の長期借入金」として流動負債に表示することがあります。

一方、一年より先に返済する残額については「長期借入金」として固定負債に計上する流れです。

つまり、長期借入金は借入時の契約期間だけで固定負債になるわけではなく、決算を迎えるたびに返済予定を確認し、一年以内の返済額を適切に振り替える必要があります。

一年基準を理解するメリット

一年基準は、会社の財務状況を把握し、経営判断に活かす際にも役立ちます。ここでは、一年基準を理解するメリットについて見ていきましょう。

流動比率で短期的な支払能力を把握できる

一年基準などによって区分された流動資産と流動負債は、会社の支払能力を確認する際にも活用されます。その代表的な指標が「流動比率」です。また流動比率は、次の式で求められます。

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

たとえば、流動資産が3,000万円、流動負債が2,000万円の場合、流動比率は150%です。短期間に支払いが必要な負債に対して、どの程度の流動資産を保有しているかを確認できます。また一般的には、流動比率が100%を超えていることが、短期的な支払能力を判断する一つの目安です。しかし、適切な水準は業種や事業内容によって異なることには注意が必要です。

会社の安全性を見る指標については、以下の記事でも詳しく解説しています。
「自己資本比率の目安は何%?経営者が知りたい業界別平均と財務改善のポイントを解説」

金融機関からの評価をイメージしやすくなる

銀行から融資を受ける際、金融機関は決算書をもとに、会社の返済能力や財務状況を確認します。その際には、流動資産・固定資産の内容や、借入金の返済時期なども判断材料になります。

たとえば資産総額が大きくても、すぐに現金化できない固定資産が多く、短期間に返済する流動負債が多ければ、資金面に余裕がないように見えるかもしれません。一年基準を理解し流動・固定の内訳を把握しておくことで、金融機関からの「自社の決算書の見え方」をイメージしやすくなります。

資金繰りや借入計画を考えやすくなる

一年基準を理解しておくと、今後一年間に必要となる資金を把握しやすくなります。たとえば、長期借入金が5,000万円ある場合、全額をすぐに返済するわけではないでしょう。一年以内に返済する金額を確認することで、近いうちにどの程度の資金を用意する必要があるのかが見えてきます。

さらに、借入金の返済予定と売掛金の回収予定や預金残高などをあわせて確認すれば、今後の資金繰りを見通しやすくなります。資金不足が見込まれる場合には、借り換えや追加融資などを検討する際の判断材料にもなるでしょう。

財務数値を経営判断に活かす方法については、以下の記事も参考にしてください。
「財務コンサルティングは税理士に依頼すべき?メリットや選び方のポイントを解説」

判断に迷う科目は税理士に相談を

一年基準は、正常営業循環基準を先に適用し、契約内容や回収予定などを踏まえた判断が必要になるため、単純に「一年以内かどうか」では区分できないケースも見られます。

区分を誤ると、流動比率などの財務指標や資金繰りの把握にも影響するため、判断に迷う勘定科目がある場合は専門家へ確認すると安心です。

二見達彦税理士事務所では、一年基準を含む会計処理や決算書の確認をはじめ、月次の経営分析から資金繰り・資金調達までサポートしています。流動・固定の区分や決算書の見方にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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