相続税の税務調査はいつ、誰に来る?対象になりやすいケースや調査内容を解説

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相続税の税務調査は、申告から1、2年目の8月から11月が多いとされています。正しく申告をしたつもりでも、税務調査の連絡を受けると、不安を抱いたり困惑する人がほとんどでしょう。

この記事では、税務調査の連絡があった場合の対応方法や、税務調査の対象になりにくいようにする対策、具体的なペナルティなどを詳しく説明します。税務調査の実態を知ることで、あなたの不安や疑問の解消につながる可能性もあるので、ぜひ参考にしてください。

目次

相続税の税務調査には「任意調査」と「強制調査」がある

相続税の税務調査は、事前に連絡がある「任意調査」と急に調査が入る「強制捜査」があります。

税務調査のうち、ほとんどが任意調査となりますが、基本的には拒否はできません。主に、被相続人が実際に生活していた自宅での実地調査になるのが原則です。

一方、任意調査を拒否した場合や、悪質な脱税の可能性がある納税者に対しては、国税局員が裁判所の令状を持って、抜き打ちで調査が入る強制捜査となります。しかし、実質、強制捜査になるのは極めてまれで、適切に申告した場合はさほど危惧する必要はないでしょう。

相続税の税務調査の対象になりやすい12のケース

税務調査の対象になりやすい条件とは?ここでは、主な12のケースを紹介します。

ケース1:相続財産の総額が大きい

相続財産の総額が大きい場合は、税務調査の対象になりやすいでしょう。財産規模が大きいほど計算ミスや評価の間違いが生じやすく、累進課税制度を採用している相続税は追徴課税が高額になるため、税務署が優先的に税務調査をする傾向にあります。

ケース2:税理士に依頼せず自分で申告した

自身で相続税の申告をしたケースも、税務調査が入る確率が高いです。専門家が携わっていない申告書は不備が生じやすいと判断され、税務署からより厳しいチェックを受ける傾向が見られます。

ケース3:申告書に計算ミスや記載漏れがある

相続税の申告書に単純な計算ミスや書類不備があると、税務署の不信感を招いて税務調査の対象になりやすいでしょう。より大きな申告漏れの可能性があると判断され、調査のきっかけとなることが多いようです。

ケース4:被相続人の収入に比べて申告財産が少ない

被相続人の生前の収入に比べて申告財産が少ない場合も、調査対象になりやすくなります。税務署は故人の所得を確定申告などで把握しているため、特別な事情がないにも関わらず申告が少ないときは、税務調査に発展しやすいといえるでしょう。

また、税務署は、故人の不動産や株式売却などについても把握しているため、それに対する預金があるかどうかも重要なチェックポイントになります。

ケース5:現金・預貯金の割合が高い

現預金の割合が高く、多くの不自然な高額の入出金が税務署の注意を引くポイントであることを理解しておきましょう。
相続税の税務調査は、10年前の預貯金の入出金まで遡るケースがあります。生前のお金の流れをみることで、使途不明金からタンス預金の存在が判明する可能性があるためです。

ケース6:「名義預金」を疑われる預金がある

名義預金とは、口座の名義人(配偶者や子)と実際の所有者(被相続人)が異なる預金のことで、相続税の税務調査で最も指摘されやすい項目の一つになります。具体的には、被相続人の収入の割に、家族名義の預金額が多額である場合などが対象になりやすいでしょう。

名義預金とみなされやすいケースは、下記のとおりです。

  • 被相続人が実質的な預金者であった
  • 口座の通帳、印鑑を被相続人が管理していた
  • 口座の名義人が口座の存在を認識していない
  • 生前贈与が成立していない

名義預金と判断されないために、上記に留意して生前から対策しておくことが重要になります。

ケース7:生前贈与の申告・証拠が不十分

生前贈与の申告や、暦年贈与の証拠が不十分な場合も税務調査の対象になりやすいでしょう。暦年贈与とは、年間110万円(基礎控除額)までの生前贈与には贈与税が課されないという制度です。

暦年贈与の注意ポイントは、名義預金同様「お互いの認識があるか」「通帳・印鑑の管理」などの条件を満たしているかどうかです。また、証拠として贈与契約書を作成するのも有効でしょう。

万が一、基礎控除額を超える生前贈与がある場合は、贈与税の申告を適切に行うのが重要です。

ケース8:海外資産や海外送金の履歴がある

海外資産や海外送金も税務署が目を光らせている項目です。税務署は日本を含む100カ国以上が参加する情報交換網(CRS)で海外資産を把握し、租税回避の防止を図っています。

また、外国送金は、悪質な隠ぺい工作として使われるケースが多く、100万円以上の海外送金は、各金融機関から税務署に調書が送られる仕組みになりました。税務署は海外の預金口座を確実に把握できるようになっているのです。

ケース9:多額の借入金があるのに見合う資産がない

多額の借入金で購入したはずである、不動産や高額の固定資産などの申告がされていないなど、つじつまが合わない場合も申告漏れが疑われやすくなります。相続財産を正しく把握して、正確に申告することが税務調査の回避につながるでしょう。

ケース10:生前に不動産所得や株式譲渡益があった

不動産収入や、株式売却の利益が申告財産に含まれているかどうかも重要なポイントです。

国税局と税務署は、KSKシステム(国税総合管理システム)で2001年から納税者情報を管理しています。20年以上蓄積されたデータから、生前の所得に見合うだけの申告内容になっているかをすぐに判断できるようになっているのです。

ケース11:相続人名義の口座に不自然な入出金がある

被相続人の口座に入出金が多い場合も注意が必要です。特に、亡くなる直前に、預金から多額の引き出しや、特定の相続人へ不自然な資金移動が判明した場合も、調査の対象になりやすくなります。

もちろん、それらが手許現金や生前贈与として認められる証拠があれば問題ありません。生前から専門家に依頼したり、申告漏れにならないよう、事前に税務調査対策をした相続税申告をするのが重要です。

ケース12:そもそも相続税を申告していない(無申告)

納税義務があるにもかかわらず申告しない「無申告」は、税務署で把握されている確立が非常に高いので、一日も早く対応するようにしましょう。税務署では、申告ミスや所得偽装よりも無申告を重く見るので、より厳しいペナルティを受けることになりかねません。

たとえば、取引先の申告や、税務調査の際に得る情報など、独自の情報網から無申告が判明する場合があります。そのほか、不動産登記情報などからの判明など、何年も連絡がなくとも確実に把握していると考えていいでしょう。

税務調査の内容とは?

相続税の税務調査とは、申告に誤りがないかを税務署が確認する調査で、きちんと相続税申告をしていても調査が入ることはあります。ここでは、相続税の税務調査の流れや必要書類などを紹介します。

税務署からの電話連絡と用意すべき書類

調査の連絡から当日の流れ、事前に準備しておくべき書類などを、時系列に紹介するので参考にしてください。

税務調査の流れ

いつどのように・どうすべき
税務調査の連絡が入る
(申告から1年目、または2年目の8月~11月が多いとされている)
・税理士に依頼していた場合は担当税理士に連絡
・自身で申告した場合は相続人に連絡
・調査の日時、場所を決定する
・調査は基本的に被相続人の自宅で行われる
調査当日(午前)10時頃から・午前中は主にヒアリング
調査当日(午後)・資料の確認、金庫の有無や印鑑の確認
・通帳は特に入念にチェックされる傾向
・税務職員の質疑応答
・調査は1日で完了するケースが多いが、2日間に及ぶケースもある
調査結果・申告が正しかったものと認められるパターン(申告是認)
・漏れを指摘され再申告するパターン(修正申告)
・漏れを指摘されるも相続人が認めないパターン(更生) ※1

※1 調査結果に納得がいかない場合、税務署は更生処分を行い、相続人は異議申立を行う

必要書類について

税務調査では、事前に下記の書類を準備しておきましょう。

  • 相続税申告時の資料(原本)
  • 被相続人の預貯金通帳
  • 相続人の預貯金通帳
  • 相続人が所有している不動産購入の資料や土地の権利証
  • 相続人の印鑑

被相続人の経歴や趣味など、多岐にわたるヒアリング

午前中は、主にヒアリングが行われます。ヒアリングで多い内容は下記です。

  • 故人や相続人の生い立ち
  • 亡くなる直前の状況
  • 故人の通帳、印鑑の管理者
  • 故人、配偶者がどのように財産を築いたか
  • 相続人の銀行、証券会社などの確認
  • 生前贈与に関して(贈与契約書も含む)
  • 相続税は各相続人の財産から支払ったか
  • 被相続人の趣味 など

上記のように細かくヒアリングを行うのは、申告内容と不一致がないか、申告漏れになるような糸口がないかを探るためです。嘘をつくとペナルティが重くなる可能性があるので、取り繕って回答しないようにしましょう。

通帳・印鑑・金庫などの現物確認

午後に行われる通帳や印鑑、金庫の中身など、財産の保管状況を確認する現物確認は、被相続人の生前の状況を知るための重要な手順となります。

調査場所は自宅内で、具体的には下記です。

  • 被相続人が使用していた机および周辺
  • 日記、手帳など財産に関する記述の可能性がある書類の保管場所
  • 仏壇
  • 金庫 など

申告漏れが見つかった場合のペナルティ(追徴課税)

ここでは、申告漏れが発覚した場合に、本来の税金に加えて課されるペナルティ(追徴課税)の種類や税率などについて解説します。

相続税は、相続人に連帯納付義務がありますが、同様に追徴課税にも連帯納付義務が発生します。また、内容によっては配偶者の税額軽減の適用ができなくなるなど、相続人の負担にも大きく影響するでしょう。

過少申告加算税

過少申告加算税とは、申告した税額が本来の税額より少なかった場合に課されるペナルティです。ただし、税務署から指摘される前に自主的に修正申告した場合はペナルティは課されません。

過少申告加算税=追加で納める税額×税率

税務調査事前通知~税務調査実施に修正申告した場合税務調査実施以後に修正申告または更生を受けた場合
追加で納める税額の50万円以下の部分 ※25%10%
追加で納める税額の50万円超の部分 ※210%15%

※2 当初申告した税額が50万円以上の場合はその税額を基準として判断

無申告加算税

無申告加算税とは、申告期限までに申告をしなかった場合のペナルティで、詳細は下記です。

申告時期法定申告期限後~税務調査事前通知を受ける前まで
(自主的に申告した場合)
税務調査事前通知~税務調査実施前まで ※4税務調査実施以後 ※4
税率(50万円以下の部分)5% ※310%15%
税率(50万円超の部分)5% ※315%20%
税率(300万円超の部分)5% ※320%30%

※3 1ヶ月以内の場合は課税なし
※4 諸条件により10%税率アップの可能性がある

参照:財務省|加算制度の概要

重加算税

重加算税とは、課税を免れるために書類の偽装や虚偽の申告など、意図的に脱税を目的とした場合に、過少申告加算税や無申告加算税の代わりに課されるペナルティです。

申告書を提出している場合
【過少申告重加算税】
申告書を提出していない場合
【無申告重加算税】
申告・納税はしたが、意図的に相続税を少なく申告したと判断された場合申告・納税の義務は認識していたが、意図的に相続税納付を免れようと申告・納税をしていないと判断された場合
税率 原則35%税率 原則40%

延滞税

延滞税とは、納期限から遅れて納付した場合に課される、いわゆる利息ともいえるペナルティです。主に延滞税がかかるケースは下記の3つで、すべての加算税に上乗せされます。

  1. 申告はしたが、納期限までに納税していない場合
  2. 期限後申告、または修正申告をした場合
  3. 税務署から更生、または決定の処分を受けた場合

具体的な計算方法と税率は下記となります。

追加で納める税額×延滞税の割合(税率)×延滞日数÷365日

※5法定納期限の翌日から2ヶ月法定納期限の翌日から2ヶ月以降
R7年度特例税率2.4%8.7%

※5 原則の税率は異なる
参照:延滞税の割合

税務調査を回避し、安心して相続を終えるための対策

相続税は、税務調査の連絡が来てからではなく、税務調査を回避しやすくなる相続税申告を心掛けるのが重要です。ここでは、税務調査を回避できる可能性が高まる対策を紹介します。

最善の対策は「相続に強い税理士」に申告を依頼すること

専門知識を有する税理士に依頼することが、正確な申告書の作成と税務調査リスクの低減に最も効果的でしょう。専門家に依頼して、「申告漏れがない」正しい申告書を提出することで、税務調査を回避できる可能性が高まります。

また、「相続に強い」税理士であることも重要なポイントです。

生前のうちから財産リストを作成し、家族で共有する

被相続人が存命のうちに、所有する財産がひと目で分かる財産リストを作成して、家族で共有しておくのもよいでしょう。

毎年更新するなどして、所有する最新の財産がリスト化されていれば、急な相続発生後の申告漏れを防ぐ効果的な対策といえます。

贈与契約書を作成するなど、お金の動きの証拠を残す

税務調査を回避する対策として、生存贈与の詳細が分かる贈与契約書を作成するのも有効です。預金履歴なども含め、お金の移動についての「客観的な証拠」を残しておくのが重要なポイントになります。

しかし、贈与契約書は必要事項が記載されていないと効力を有しません。将来を見据えて、あらかじめ専門家のサポートを受け、正確な贈与契約書を作成しておくのが有効です。

もし調査の連絡が来たら?すぐに専門家に相談を

万が一調査の連絡が来た場合は、1人で対応しようとせず、速やかに相続税に強い税理士に相談するのがおすすめです。前述したように、高度な専門知識や制度を理解していないと対策が難しい相続は、専門家のサポートを得ることが最善の税務調査対策といえるでしょう。

税理士をお探しの方は二見達彦にご相談ください

長い人生において、相続や税務調査に慣れている方は少ないでしょう。しかし、相続税の税務調査率は法人税や所得税に比べると高いため、将来の税務調査を視野に、事前に対策をしておくのが賢明といえます。

二見達彦税理士事務所では、相続税申告や対策はもちろんのこと、税務調査までのあらゆる課題を解決いたします。申告は自分でしたものの税務調査の連絡が来て不安という方も、まずは、気軽に無料相談をご利用ください。

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