相続を専門家に依頼するメリットと相談先別の強みとは|【状況別】失敗しない選び方を解説

相続に専門家のサポートが必要であるかどうかは、相続財産の内容や、家族・相続人の関係性によって異なります。重要なのは、「自分たちのケースはどのパターンにあてはまるのか」を知ることです。この記事では、相続の基本的な流れや専門家に依頼するメリット、各士業の強みなどについて解説するので、あなたの相続の状況に照らし合わせて参考にしてください。
相続の手続きは自分でできる?専門家が必要になるケース
相続には、以下の3つの方法があります。この章では、相続発生後の流れと、どのような場合に専門家のサポートが必要なのかを紹介します。
- 単純承認:すべての財産を受け継ぐ
- 限定承認:マイナスの財産がある場合プラスの財産の範囲内で両方受け継ぐ
- 相続放棄:相続する権利をすべて放棄する(相続人ではなくなる)
相続発生後にやるべき手続きと期限の一覧
ここでは、相続が発生してからの流れを時系列に紹介します。期日の定められているものは特に注意するようにしましょう。
| 時期 | 手続内容 | 備考 |
|---|---|---|
| ①相続発生 | 故人の財産調査 | ・遺言書の有無、内容の確認 ・法定相続人の確認(各相続人の戸籍収集) ・遺産分割協議 |
| ②3か月以内 | 相続放棄、限定承認の決定 | ・相続放棄、限定承認は3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きする必要がある ・延長も可能だが、3ヶ月以内に申し立てが必要 ・上記手続きをしない場合は自動的に単純承認したとみなされる |
| ③4カ月以内 | 故人の確定申告(準確定申告) | ・4カ月以内に申告が必要 ・1/1~3/15までに他界し、前年の確定申告をしていない場合は、前年、他界した年の2年分の申告が必要 |
| ④相続税申告まで | ・遺産分割協議書の作成 ・不動産の所有権移転の変更登記 ・その他財産の名義変更 | |
| ⑤10ヶ月以内 | ・相続税申告 | ・他界したことを知った日から10ヶ月以内に申告が必要 |
| ⑥1年以内 | ・遺留分侵害額請求 | ・遺留分侵害額請求:特定の相続人が財産の配分が不利になった場合、財産を多く取得した人に請求できる制度 ・原則として相続発生や遺留分侵害を知った日から1年以内に請求が必要 |
| ⑦1年後以降 | ・相続税の税務調査 ※1 | ・必ず対象になる訳ではないが近年の調査件数は上昇傾向 |
※1 相続税の税務調査については、「相続税の税務調査に選ばれやすい家庭の特徴とは?」の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてください。
【どこが違う?】自分で対応できるケースと専門家に頼んだほうがいいケース
財産が預貯金のみで相続人が少数であるなど、シンプルな相続の場合は自力で対応が可能でしょう。しかし、財産に不動産が含まれている、必ず相続税額が発生するケースなどは、専門家のサポートを受けるのがおすすめです。特に、相続人同士でトラブルがある場合は、第三者が入る方が円満に解決しやすいといえます。
見極め方の詳細については、「相続税の申告に税理士は必要か?依頼すべきケース・不要なケースを解説」の記事でも紹介しているので、ぜひご一読ください。
相続を専門家に依頼する5つのメリット
ここでは、相続を専門家に依頼する主要なメリットを紹介します。
①煩雑な手続き・書類収集の手間を大幅に削減できる
第一に、時間や労力のかかる作業を代行してもらえることで、自身の手間を大幅に軽減できるメリットがあります。主に平日でしか対応が難しい戸籍の取り寄せや、役所・法務局への往復など、相続人の生活や仕事に影響なく進めてもらうことが可能です。
②相続税の特例適用で「依頼費用以上」の節税になる可能性がある
このメリットは専門家の中でも税理士の独壇場といえますが、非常に効果の高い、相続税の節税につながる可能性が高まります。小規模宅地等の特例の適用判断や、二次相続まで見据えた分割提案など、依頼費用を超えるほどの最善の節税実現が可能になるでしょう。
③期限切れ・申告ミスなどを回避しペナルティのリスクを防げる
相続が発生してからの諸手続きには、期限があります。各書類の提出期限はもちろんですが、相続税の申告期限超過には大きなリスクが伴います。追徴課税や延滞税の発生など、回避したいリスクは専門家への依頼で解消できます。
また、正しい相続税納税のためには「正しい財産評価」が不可欠で、相続の基本ともいえます。専門家のサポートを得ることで、リスクのない確かな相続につなげられるでしょう。
④相続人同士のトラブルを未然に防ぎ第三者として調整してもらえる
専門家への依頼は、「争族」を未然に防ぐ効果があります。感情的になりやすい遺産分割では、中立的な専門家が入ることで、円満解決につながりやすくなるでしょう。
⑤制度の変更に確実に対応してもらえる
2024年(R6)4月から義務化された不動産の相続登記ですが、期限は「取得を知った日から3年以内」とされています。専門家へサポートを依頼すると、このような制度の変更を見逃すことなく、確実に適切な対応をしてもらえるでしょう。
参考:政府広報オンライン|不動産の相続登記義務化!過去の相続分は?所有不動産を一覧的にリスト化する新制度も開始!
相続の相談ができる専門家と得意分野
相続の相談先は、主に次の6つがあります。
- 市役所・区役所
- 金融機関(信託銀行)
- 税理士
- 司法書士
- 弁護士(法テラス)
- 行政書士
これらのうち、ここでは③~⑥のいわゆる「士業」の各得意分野について解説します。
税理士|相続税の申告・節税対策の専門家
税務のプロである税理士は、相続税が発生しそうなケースの第一相談先であり、下記の強みを持ちます。
- 相続税申告を任せられる
- 税務調査の対応、対策を任せられる
- 正確な財産評価ができる
- 二次相続までの長期的目線の節税対策の提案
司法書士|不動産の相続登記・名義変更の専門家
法務局の手続きに精通し、登記に関するプロである司法書士は、相続において下記の強みを持ちます。
- 不動産の相続登記、名義変更など相続人の権利を正しく守ってくれる
- 相続に関しての一般的な手続き全般の身近な窓口となる
弁護士|遺産分割トラブル・紛争解決の専門家
トラブル解決のプロである弁護士は、相続において下記の強みを持ちます。
- 相続人間の交渉、調停などを第三者という立場で解決する
- 遺留分侵害額請求の手続きを任せられる
- その他もめ事全般の解決を任せられる唯一の専門家
行政書士|遺産分割協議書など書類作成の専門家
行政手続きのプロである行政書士は、相続において下記の強みを持ちます。
- 費用が比較的リーズナブル
- 書類作成が中心で遺産分割協議書や財産目録などの書類作成に長けている
- 登記や申告が不要なシンプルなケースに向いている
【ひと目で分かる】各士業に依頼できる業務とは
前項では、各士業の強みを紹介しましたが、ここでは「士業に依頼できる具体的な業務」を以下にまとめます。
| 税理士 | 司法書士 | 弁護士 | 行政書士 | |
|---|---|---|---|---|
| 遺言書作成 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 法定相続人調査 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 相続財産調査 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 遺産分割協議書の作成 ※2 | △ | △ | 〇 | △ |
| 遺産分割でのトラブル解決 | △ ※3 | 〇 | ||
| 相続税申告 | 〇 | |||
| 不動産名義変更 | 〇 |
※2 遺産分割協議書の作成は全士業対応可能だが代理人としての交渉ができるのは弁護士だけ
※3 法務大臣の認定を受けた認定司法書士については140万円以下の遺留分侵害額請求の対応が可能
相続の手続きはどの専門家に頼むべき?状況別の判断基準
次のパターンにあてはまる相続は、依頼すべきおすすめの専門家がいます。ここでは、状況別の判断基準についてみていきましょう。
相続財産に不動産があるケース
相続財産に不動産がある場合は、司法書士が第一候補であるといえます。スムーズな相続登記を任せられるでしょう。
相続税の申告が必要なケース
相続財産額が基礎控除額を超えて、相続税が発生しそうな場合は税理士がおすすめです。さまざまな特例の適用可否も含めて、有利な相続税申告を任せられるでしょう。
相続人同士でもめている/もめそうなケース
トラブルがある、または発生しそうな場合は、税理士への依頼が有効です。交渉・調停が必要なケースは弁護士の独占業務であるため、安心して任せられるでしょう。
書類作成だけ依頼したいケース
複雑な財産評価や不動産の変更登記、申告が不要で書類作成のみの場合は、行政書士への依頼がよいでしょう。他の士業よりも割安で、業務を任せられるでしょう。
専門家に相談する前に準備しておきたいこと
専門家への依頼を決めたら、次は事前準備です。ここでは、実際に専門家に相談する前に、相続人がしておくべきことを紹介します。
【事前準備】相続財産・相続人をおおまかに把握しておく
法定相続人がだれであるかや各人の現在の状況、どのような財産があるか(不動産・預貯金・有価証券など)を、事前に整理しておくとよいでしょう。また、遺言書の有無についても確認しておきましょう。※4
※4 自宅だけでなく公証役場や法務局で預かっている場合もあるので注意が必要
【相談がスムーズに】持参すべき書類とは
専門家に依頼するまでに揃えておくべき資料は、以下のとおりです。
- 被相続人の戸籍謄本
- 不動産がある場合は登記済権利証、固定資産税納税通知書
- 預金通帳
- 遺言書 など
相続の手続きには自分の状況に合った専門家選びを
これまでの内容からも分かるように、オールマイティな専門家は存在しません。重要なのは「自分の状況に合う専門家をみつける」こと。そのためには、まずは「法定相続人の把握」と「相続財産の整理」から始めるようにしましょう。
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