暦年贈与とは?7年持ち戻しルールの延長や相続時精算課税との違いを解説

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暦年贈与とは、年間110万円におよぶ基礎控除の金額を利用して、毎年少しずつ財産を動かす相続対策の方法です。また暦年贈与は、制度の内容が変わったことで、相続税の対象期間が3年から7年に延長されました。そのため、短期間での節税効果が期待しにくくなりました。

また、相続時精算課税制度にも、新たに年110万円の基礎控除が設けられたことから、どちらの制度を選ぶかの判断も難しくなっています。

そこで本記事では、暦年贈与の変更内容を解説するとともに、暦年贈与と相続時精算課税のどちらを選ぶべきかについても解説します。

目次

暦年贈与(暦年課税)とは?

暦年贈与とは、年間110万円の基礎控除を利用した相続の手法です。しかし、正しく理解せずに行うと、思わぬ問題が発生する可能性があります。まずは暦年贈与について、基本的な仕組みをチェックしていきましょう。

年間110万円の非課税枠がある

暦年贈与では、贈与される人につき、年間110万円までが非課税となります。この110万円は、複数名から贈与された場合にも、すべての金額を合計して非課税枠を適用します。

たとえば、父から100万円をもらい、母からも100万円をもらったとしましょう。その場合、もらった金額が合計200万円となり、110万円の基礎控除を超えた90万円が課税対象となります。

贈与税の税率構造は異なる

贈与税は、基礎控除の110万円を超えた金額に課税されます。税率では、父母や祖父母から成人への贈与に「特例税率」が適用され、一般税率より優遇されることが特徴です。

たとえば300万円以下なら10%、400万円以下なら15%といった具合に、金額が大きくなるほど税率も上がっていきます。この税率差を理解して贈与のタイミングや金額を調整することで、より効率的な財産の移動が可能になるでしょう。

生前贈与加算が「7年」に延長

2024年度の税制改正により、相続対策における暦年贈与の効果が、制限されることになりました。ここでは、税制改正によって、どのように状況が変化したかについて解説します。また、経過措置と100万円控除の特例についても、併せてチェックしていきましょう。

相続開始前の持ち戻し期間が「3年」から「7年」へ

従来では、相続開始の3年以内に贈与を受けていた場合、3年分の贈与金額が相続財産に加算されていました。しかし、2024年度の税制改正によって、期間が7年に延長されました。その結果、生前贈与の節税効果が縮小されることになったのです。

改正の背景には、相続税の課税ベースを拡大し、税収確保をはかる政府の意図があります。相続開始前の持ち出し期間の延長によって、今後の相続対策では、長期的な計画がより重要になるでしょう。

いつからの贈与が対象?経過措置のスケジュール

新たな7年ルールは、2024年1月1日以降の贈与から適用されます。しかし、実際に加算期間が7年になるのは、2031年以降です。2024年から2030年までは、段階的に延長されます。

【段階的に延長される例】

  • 2025年に相続が発生: 2023年1月1日以降の贈与(約2年分)が対象
  • 2027年に相続が発生: 2021年1月1日以降の贈与(約6年分)が対象
  • 2029年に相続が発生: 2019年1月1日以降の贈与(約8年分)が対象
    (※ただし、加算されるのは相続開始前である7年以内の贈与のみ)

上記のように、経過措置により急激な税負担増は避けられますが、贈与計画の見直しは必須だといえます。

延長期間中の「100万円控除」特例

税制改正では、緩和措置も設けられています。具体的には、延長された4年間(死亡前3年超〜7年以内)に行われた贈与については、その期間の総額から100万円を控除することが可能です。

たとえば、延長期間中に総額300万円の贈与を行っていた場合、100万円を控除した200万円が相続財産に加算されることになります。ただし、この控除は延長期間全体で100万円の上限があるため、活用する際には慎重に検討する必要があるでしょう。

どちらを選ぶべき?暦年贈与 or 相続時精算課税制度

税制の改正により、相続時精算課税制度にも大きな変更が加わりました。そのため、暦年贈与と相続時精算課税制度について、どちらを選ぶべきかと悩む人も見受けられます。

ここでは、改正で使いやすくなった相続時精算課税制度を含め、暦年贈与と相続時精算課税制度、どちらを選ぶべきかを判断するためのポイントを解説します。

相続時精算課税制度にも「年110万円控除」が新設

相続時精算課税制度が改正され、年間110万円までの贈与であれば、贈与税の申告が不要になりました。しかも、この110万円までの贈与は、将来の相続時に相続財産に含めて計算する必要がなくなったのです。

これまでの相続時精算課税制度では、累計2,500万円までの贈与であれば贈与税はかかりませんでした。しかし、相続が発生した際には、過去に贈与した金額の合計額が相続財産に加算されて計算されていました。つまり、贈与税は先送りされるだけで、相続税の節税効果はあまり期待できなかったのです。

しかし新しい制度では、年間110万円までの贈与は相続財産から完全に除外されました。そのため、長年にわたり贈与を続けることで、相続税を減らせます。

暦年贈与が向いている人

暦年贈与は、相続人以外(例:子の配偶者/孫)に財産を贈与する場合に有効です。なぜなら、相続人以外への贈与は、原則として相続開始前7年以内の贈与であっても、相続財産に加算されないからです。

特に、相続が発生するまで時間に余裕がある若い世代にとっては、暦年贈与は大きなメリットがあるでしょう。毎年110万円までの贈与は贈与税がかからないため、この非課税枠を活用し、長く贈与を続けることで、将来の相続財産を減らせるからです。

たとえば、30代の人が毎年110万円ずつ複数の人に贈与した場合、数十年間で数千万円もの財産を相続税の対象から外せます。ただし、税務署から贈与と認めてもらうには、贈与を継続的に行っている記録を残すことが大切です。

相続税の基礎知識については「相続税の基礎控除とは?計算方法から申告不要のボーダーラインまで解説」も併せてご参照ください。

相続時精算課税が向いている人

相続の発生が近い高齢の方で、年間110万円の非課税枠を有効活用したい場合は、相続時精算課税制度が適します。

相続時精算課税制度を利用した場合、年間110万円までの贈与であれば、相続の開始直前であっても、財産が相続財産に加算されないからです。つまり、相続間近であっても、非課税枠を最大限に利用して、財産を次世代に移転できるのです。

また、将来的に価値が上がることが見込まれる財産(例:不動産/株式)を早めに移転したい場合にも、相続時精算課税制度は有効です。相続時精算課税制度では、贈与時の評価額で相続税を計算するため、値上がりする可能性の高い財産を早めに贈与することで、その後の値上がり分を相続税の課税対象から外せるからです。

暦年贈与の「否認」を防ぐ3つの注意点

暦年贈与を成功させるには、税務調査で否認されないことも大切です。特に「定期贈与」「名義預金」「契約の実態なし」の3つのリスクは、多くの家庭で見落とされがちです。ここでは、それぞれの詳細についてチェックしていきましょう。

「定期贈与(連年贈与)」とみなされない工夫

定期贈与とは、最初から総額を決めたうえで、分割払いしている贈与のことです。そのため、「1000万円を10年間で毎年100万円ずつ贈与する」と決めていると、初年度に1000万円の贈与があったとみなされる可能性があります。

これを防ぐには、毎年新たに贈与契約書を作成し、贈与時期や金額を少しずつ変えることが大切です。たとえば今年は11月に110万円、来年は12月に105万円といった具合に変化をつけることで、その都度の独立した贈与であると証明できます。

「名義預金」のリスクと回避策

名義預金とは、「名義の人」と「実際に管理する人」が異なる預金のことです。たとえば、子や孫の名義になっているものの、実質的には親が管理している預金が挙げられます。通帳や印鑑を親が保管し、子が自由に使えない状態では、贈与として認められません。

名義預金とみなされることを防ぐには、受贈者本人が通帳や印鑑を管理し、実際に自分の意思で使用できる環境を作る必要があります。たとえば、定期的に残高を確認させたり、一部を実際に使用させたりすることで、所有者であることを証明できます。

贈与契約書の作成と銀行振込の徹底

贈与の事実を客観的に証明するには、たとえ少額であっても、贈与契約書を作成することが大切です。

契約書には、贈与する財産の金額や贈与した時期、贈与者などを記載します。また受贈者の署名や押印を明記し、日付も忘れずに記載しましょう。

さらに、現金で手渡しするのではなく、銀行振込を利用することが大切です。通帳に記録が残ることから、贈与の事実を証明しやすくなります。これらの書類は、将来の税務調査に備えて大切に保管しましょう。

家族構成と資産状況に合わせた戦略を

暦年贈与は7年間の持ち戻しルールの影響を受け、節税効果が以前より限定的になりました。一方で、相続時精算課税制度の改正により、新たな選択肢も生まれています。それぞれの制度のメリット・デメリットを理解し、ご自身の状況に合った最適な方法を選ぶことが大切です。贈与が税務署に否認されないよう、適切な手続きと記録を残すことも必須です。

また、最適な相続対策は、ご家庭の状況によって異なります。二見達彦税理士事務所では、お客様の状況に合わせたオーダーメイドの相続対策をご提案しています。ぜひお気軽にご相談ください。

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