個人事業主と法人の経費の違いとは?法人化のタイミングや節税メリットを比較

個人事業主として仕事を続けるなかで、税金が高いと思ったり、経費にできる範囲が限られていると感じたりすることはありませんか?そのような際に気になるのが、法人化による節税のメリットです。
個人事業主と法人では、経費の範囲や考え方に違いがあります。経費として計上できる金額が変わることで、課税対象となる所得が異なり、結果として手元に残るお金にも影響するケースが見受けられます。本記事では、両者の経費の違いを整理したうえで、法人化によって得られる節税効果や検討すべきタイミングについて解説します。
個人事業主と法人の経費における違い
まずは、個人事業主と法人の経費の違いについて知ることが大切です。ここでは、個人事業主と法人の経費について、主な違いを解説します。
経費として認められる範囲の広さ
個人事業主の場合、経費は「事業に必要か」という視点で判断されます。一方の法人では、事業の維持や発展に資する支出であれば、比較的広く認められる傾向にあります。
たとえば福利厚生費や研修費なども計上しやすく、結果として経費にできる範囲が広がるケースも多いでしょう。同じ支出でも、個人事業主と法人では、税務上の扱いに差が生じやすいといえます。
給与を経費にできるか
個人事業主は、事業主と個人が同一とみなされるため、自分自身に支払う「給与」という概念がありません。そのため、事業で得た利益がそのまま自分の所得となり、自分への支払いを経費として計上はできません。
対する法人の場合には、会社と個人は別の存在として扱われるため、従業員に支払う給与や、経営者への役員報酬は原則として経費として処理することが可能です。
社会保険料の取り扱いと負担
個人事業主の場合、社会保険料は生活保障の支出と位置づけられるため、事業の経費ではなく所得控除として処理されます。保険料は原則として、全額が自己負担です。そのため、課税対象となる所得を減らす形で税負担を軽減できます。
対する法人では、社会保険への加入が原則義務となり、保険料は会社と個人で折半されます。このうちの会社負担分は「法定福利費」として経費計上できます。
法人化すると経費にできる主な節税項目
個人事業主が法人化すると、経費にできる項目が増えます。法人化した場合、経費にできる主な節税項目は、以下の通りです。
役員報酬と給与所得控除
法人の場合、役員報酬を会社の経費として計上できます。すると会社の利益が減り、会社にかかる税金を抑えることが可能です。さらに、役員報酬を受け取る個人側では「給与所得控除」が適用され、収入の一部が差し引かれたうえで課税されます。このように、個人事業主のままと比べて、会社と個人の両方で税負担を抑えられる点が特徴です。
役員報酬の具体的な決め方や注意点については、別記事「役員報酬の決め方完全ガイド|基本ルール・設定のポイント・注意点」もあわせてご確認ください。
役員退職金
法人では、将来の退職時に役員退職金を支払うことが可能で、その支給額は会社の経費として計上できます。個人事業主の場合、自分自身に退職金を支払って経費にはできません。そのため、役員退職金を経費にできることは、法人ならではの特徴だといえます。
なお、受け取る側でも退職所得として優遇された課税が適用される点も特徴です。
社宅制度
法人契約で住居を借り上げる社宅制度では、家賃の大部分を会社が負担し、その分を経費として計上できます。一般的には8〜9割程度を会社負担とし、残りは個人が負担する形となります。
一方、個人事業主の場合には、自宅の一部を事業で使用している場合でも、家賃を全額経費にはできません。仕事で使用している割合に応じて経費を分ける「家事按分」が必要となるため、経費にできる範囲が限定されます。
生命保険料・倒産防止共済
法人では、経営者の万が一のリスクに備える生命保険料や倒産防止共済の掛金を、条件に応じて全額または一部を経費として計上できます。これにより、会社の利益を抑えながらリスク対策を講じることが可能です。また、法人では会社契約として保険に加入できるため、経費化の選択肢や活用方法の幅が広い点も特徴です。個人事業主でも制度を利用できるものの、経費として扱える範囲には違いがあります。
出張日当
法人では、出張時に交通費や宿泊費といった実費とは別に、「出張日当」を支給することが可能です。交通費や宿泊費は実際にかかった分を経費として処理しますが、出張日当はあらかじめ定めた金額を支給できる点が特徴です。
日当は会社側では経費として計上でき、受け取る個人側では非課税扱いとなるケースがあります。
個人事業主が経費計上する際に注意すべきポイント
個人事業主として経費を計上する際には、いくつかの制約や注意点があります。経費として認められる範囲が限定される点も、法人との違いの一つです。ここでは、個人事業主が経費計上を行う際に押さえておきたいポイントについて紹介します。
家事按分の根拠を明確にする
家事按分とは、仕事とプライベートの両方で使用している費用を、利用割合に応じて分けたうえで経費として計上することです。
実際に、自宅を事務所として利用している場合、家賃や光熱費を全額経費にすることはできません。そのため、使用している部屋の広さや使用時間などを基準に、仕事で使っている分だけを経費として計上します。また税務調査の際に説明できるよう、割合の根拠を明確にしておくことが大切です。
領収書・レシートの保管と電子帳簿保存法への対応
経費として認められるには、領収書やレシートの適切な保管が不可欠です。原則として保存期間は7年間とされており、電子取引については、データ保存が義務化されています。電子帳簿保存法に対応していない場合、経費として認められないリスクもあるため、保存方法のルールを理解しておくとよいでしょう。
「事業関連性」を説明できる証拠を残す
接待交際費などは、事業との関連性が不明確な場合には、経費として認められない可能性があります。そのため、「誰と・何の目的で」支出したのかについて、メモや招待状などで補足することが重要です。事業の関連性を示せる記録を残しておくことで、公私混同を疑われるリスクを下げ、税務調査にも適切に対応できます。
個人事業主が法人化を検討すべき基準
個人事業主として事業を続けるなかで、法人化すべきか迷うタイミングは訪れることがあるでしょう。ここでは、法人化を検討する際の目安となる基準について解説します。
利益(所得)が800万円を超えたとき
個人事業主は累進課税により、所得が増えるほど税率が上がり、最大で60%(住民税 及び事業税を含む)に達します。一方、法人税の実効税率は約23〜34%程度に収まるため、一定以上の利益が出ると税負担が逆転する可能性があるでしょう。目安として、所得が800万円を超えるあたりから、法人化を検討する人が増えます。
売上高が1,000万円を超え、消費税の納税義務が生じるとき
個人事業主は売上高が1,000万円を超えると、原則として消費税の課税事業者になります。このタイミングで法人化すると、資本金などの条件によっては、最大2年間の免税期間が適用される場合があります。消費税負担を抑えられる可能性があるため、法人化を検討すべきポイントの一つです。
節税対策や法人化の相談は二見達彦税理士事務所にお任せください
個人事業主と法人では、経費の扱いや税務戦略が異なり、選択次第で税負担や手元に残るお金に差が生まれます。そのため、自分は法人化すべきかや、どのタイミングで法人になるのが適切かと迷われる方も多いのではないでしょうか。このような判断は、売上や利益の状況、今後の事業方針によって最適解が異なります。
二見達彦税理士事務所では、現状の収支や事業内容をもとに、法人化の適切なタイミングや具体的な節税対策についてご提案しています。現状の整理だけでも構いませんので、お気軽にご相談ください。
