法人税の実効税率とは?計算方法・表面税率との違いを解説

法人税の実効税率とは、決算でいくらの納税が発生するかを計算するための税率です。会社に課される法人税には、「法人税」「地方法人税」「法人住民税」「法人事業税」「特別法人事業税」の5種類ありますが、実効税率はこれらすべての税金の合計を算出する税率になります。
この記事では、実効税率の基本的な計算の仕方について、表面税率・法定実効税率との違いも交えて解説します。
法人税の実効税率とは
法人税の実効税率とは、実際の納税額に最も近い数字を導き出す税率です。単なる税率の合計ではなく、各企業の状況によって変わる実質的な税負担を表す指標となるため、決算書に反映される数字と近いものになるのが特徴です。
経営者が実効税率を理解すべき理由
事業を行ううえで、経営者が実効税率について深く理解すべき理由は「将来を予測する」ためです。実効税率を活用して納税額を事前に把握し、資金繰りや事業計画に活かすことで、さらなる事業の発展につながるでしょう。
実効税率と法定実効税率との違い
実効税率とよく似た言葉に「法定実効税率」がありますが、全く違うものになります。法定実効税率は納税地によって異なり、実効税率との違いは次のとおりです。
| 実効税率 | 法定実効税率 | |
|---|---|---|
| 税率 | ・「利益」ではなく「課税所得※1」に基づく税率<br>・実際の納税額に最も近い | ・法律で定められた理論上の税率 |
| 主な用途 | ・決算、投資家への情報開示 | ・事業計画策定 |
※1 課税所得:会計上の「利益」から、事業税の損金算入、そのほか損金不算入など諸々の事情を加味して算出される
法人税の表面税率とは
「表面税率」は実効税率に似た意味合いを持ちますが、こちらも違うものになります。以下で、実効税率との違いについてみていきましょう。
実効税率と表面税率との違い
表面税率の特徴は次のとおりです。前項の実効税率と比較してみてください。
| 表面税率 | |
|---|---|
| 税率 | ・税法上定められた各税率を単純に合わせた税率 ・理論上の税率のため実際の納税額とはズレが生じる |
| 主な用途 | ・税負担の基準となり企業分析の国際比較の指標になる |
実効税率と表面税率が生まれる理由
前述したように、実効税率では法人事業税の損金算入や、そのほかさまざまな要素を考慮して課税所得が圧縮されるため、「実効税率<表面税率」となるしくみになっています。
実効税率の計算に関わる5つの税金
実効税率では、「法人税」「地方法人税」「法人住民税」「法人事業税」「特別法人事業税」の5つの税金が計算されます。
①【国税】法人税
法人税額=課税所得×税率-税額控除額
法人税は上記の計算式で算出されます。税額の基準となる課税所得とは、おおまかにいうと「収益(益金)-費用(損金)」のことで、法人税はほかの4種の税を計算するためのベースとなる基幹的な税です。また、いわゆる中小企業の最低税率は15%で、課税所得800万円をボーダーラインとして税率が変わります。資本金や所得規模によって税率が変動するのが大きな特徴です。
参考:国税庁|法人税の税率
②【国税】地方法人税
地方法人税額=法人税額×10.3%
地方法人税は2014年(H26)に創設され、上記の計算式で算出されます。「地方」という名称であっても国に納める税金で、もともと地方公共団体の法人税割の一部を国に納めるように移行されたもので、法人が負担するトータルの税額は変わらないようになっています。
また、国に納めるように移行されたのは、地方公共団体間で税収の格差が生まれないようにすることを目的に、国から自治体に分配する方式をとるためです。
③【地方税】法人住民税(法人税割・均等割)
法人住民税には、「都道府県民税」「市町村民税」があり、さらに「法人税割」と「均等割」で構成されています。※2
【都道府県に納める税金】
・都道府県民税法人税割
・都道府県民税均等割
【市町村に納める税金】
・市町村民税法人税割
・市町村民税均等割
※2 法人税割は「法人税額」、均等割は「資本金」と「従業員数」が基準となる
法人住民税の使いみちと注意点
法人住民税は、道路整備や上下水道の整備などのインフラの維持、消防や警察、教育まで、幅広い公的サービスを支えている税金です。
また、注意したいのが事業所の数です。法人住民税は、事業所ごとの自治体に納める必要があるので、基本的には納税額が増えることになります。しかし、同一の都道府県、市町村内であれば「1事業所」とカウントする地方公共団体がほとんどなので、本店以外の事業所開設を検討する場合は留意するようにしましょう。
「事業所」として判断される条件は次のとおりです。自己所有であるかや登記の有無などは関係なく、すべての条件を満たすものが事業所とみなされます。
・人的設備を満たしている(人が働いている)
・物的設備を満たしている(事業を行う場所や設備がある)
・事業として継続性がある
④【地方税】法人事業税
法人事業税は都道府県に納める地方税ですが、法人住民税とは全く性質が異なります。法人住民税は法人の事業所そのものに課税されますが、法人事業税はその名のとおり、法人が行う「事業」に対して課される税金です。
分割基準(各地方公共団体にいくらずつ納税するかを決定するための基準となるルール)も異なります。前述したように、法人住民税は資本金と従業員数がベースになるのに対して、法人事業税は業種も関係していて、いくつかの基準があるのが特徴です。付加価値割・資本割・所得割・収入割の4種類あり、各法人によってさまざまな組み合わせで課税されます。
また、最大の特徴は「翌期に損金算入できる」ことで、実効税率を下げる重要な存在であることです。※3
※3 次項の「特別法人事業税」も翌期に損金算入可能
参考:総務省|法人事業税
⑤【国税】特別法人事業税
特別法人事業税は法人事業税をベースに課される国税で、地方公共団体の税収の地域格差是正のために創設された税金です。納税義務者は、法人事業税の所得割または収入割を納税する法人となっています。
ここで注意すべきは、特別法人事業税は「国税」であることです。一旦、都道府県に納付しますが、都道府県は国に、国が人口配分に沿って各地方公共団体に分配するしくみになっています。
法人税全般については「法人が支払う税金の種類は?納税時期をわかりやすく解説」の記事も紹介しているので、ご一読ください。
法人税の実効税率の計算方法
ここでは、具体的な実効税率の計算の仕方をみていきましょう。
実効税率の計算式
実効税率の計算式は、次のとおりです。
実効税率=法人税率×((1+地方法人税率+法人住民税率)+(法人事業税率×(1+特別法人事業税率)) ÷ (1+法人事業税率×(1+特別法人事業税率)
計算式で表面税率と差が出るしくみ
実効税率の計算式は一見複雑ですが、要になるのは「法人事業税率」「特別法人事業税率」の損金算入です。次項で具体的な数字を用いて、そのしくみについてみていきましょう。
【シミュレーション】標準税率での計算例(実効税率 約33%)
ここでは、東京23区内に事業所が1箇所、資本金1億円以下の中小企業、課税所得900万円、法人住民税は標準課税と仮定して、具体的な実効税率について検証していきます。
| 課税標準 | 税率 |
|---|---|
| 法人税:課税所得 | 23.2% ※4 |
| 地方法人税:法人税額 | 10.3% |
| 法人住民税:法人税額 | 法人税割7% ※5 |
| 法人事業税:課税所得 | 最大で7% ※6 |
| 特別法人事業税:法人事業税額 | 37% ※7 |
※4 今回は所得800万円以下の法人税の軽減税率は考慮していません
※5 法人住民税均等割は資本金・従業員数によって異なる
※6 所得400万円以下の部分は3.5% 400万円超800万円以下の部分は5.3%、800万円超の部分は7%
※7参考:東京都主税局|特別法人事業税
【計算式(%は少数に変換)】
0.232×(1+0.103+0.07)+0.07×(1+0.37) ÷ 1+0.07×(1+0.37)
= (0.272136+0.0959)÷1.0959=0.3358299・・・・ 約33.58%
ここで注目すべきは、実際は1年目と2年目とでは実効税率が異なる可能性があることです。理由は、「法人事業税・特別法人事業税は翌期に損金算入できる」ので、事業税が発生する次の事業年度は課税所得が減少するからで、具体的には下記の計算になります。
・今期経費計上できる法人事業税額:1年目の課税所得900万円×7%=63万円 ・今期経費計上できる特別法人事業税額:法人事業税額63万円×37%=23万3,100円 ・今期の課税所得:900万円-86万1,000円=813万6,900円
上記のように、課税所得の減少が実効税率を下げる要因となり、前述した計算式は「平均税率」を求める公式となります。
【新設】防衛特別法人税とは
実効税率にも関わるもので、2026年(R8)4月1日以後に開始される事業年度から、日本の防衛費確保のための防衛特別法人税が課税されることになりました。しかし、法人税額が500万円以下の場合は非課税となるので、大半の中小企業は実質0円となる可能性が高く、今回の実効税率の解説には盛り込まれていないので注意してください。
実効税率をうまく活用するには
事業で実効税率を活用する際には、いくつかの留意すべきポイントがあります。重要な3つを以下で紹介するので、参考にしてください。
最新の税制改正を把握する必要がある
税率や特例はほぼ毎年改正されるため、最新の情報で計算する必要があります。特例が自社にあてはまるか、今までと同じ条件の特例ルールであるかなど、法の変更は常に所得の変動に関わるので、注意するようにしましょう。
納税資金確保の目安となる
実効税率の活用で納税額を概算で知っておくことで、資金不足のリスク回避や今後の事業予測にも役立ちます。設備投資や融資申し込みのベストタイミングが把握でき、攻めと守りのコントロールがしやすくなるでしょう。
判断に迷う場合は税理士へ相談する
ここまで、実効税率についての基本的な説明をしてきましたが、計算式を見ても分かるとおり、計算間違いや判断ミスなどのリスクが高い項目といえます。事業税の損金算入にタイムラグがあることや、法人税額を基礎にして税額を計算したりすることから、このように複雑な公式となっています。そのため、自社にとっての「最適解」を知るためには、専門家への相談が手堅く有効な手段となるでしょう。
まとめ
実効税率は、実際の納税額を知って実質的な会社の資金を把握するためのもので、これからの事業予測や資金繰りにはかかせません。
二見達彦税理士事務所は、実効税率の計算はもちろんですが、各法人の諸条件を考慮した正確な納税予測や融資のご提案など、あなたの会社の将来についての最善のサポートが可能です。次期決算の納付額の確保に不安のある方、これからの資金計画にお悩みの方は弊所の無料相談をぜひご活用ください。
