企業の経費削減アイデアとは?ポイントと注意点を解説

物価や人件費の上昇が続くなか、「利益を確保するために経費を見直したい」と考える経営者や管理部門の担当者は少なくありません。しかし、やみくもに支出を切り詰めると、従業員の士気や商品・サービスの品質を損ない、かえって業績を悪化させてしまうおそれがあります。
本記事では、企業が経費削減に取り組む目的から、削減対象となる経費の種類、費目別の具体的なアイデア、失敗しないための注意点までを解説します。
企業における経費削減の目的
経費削減とは、事業活動に不要な支出をなくし、利益率を高める取り組みのことです。企業の利益は「売上-経費」で決まるため、利益を増やす方法は、売上を伸ばすか経費を減らすかの2つしかありません。売上増は市場環境に左右され時間がかかる一方、経費削減は自社の意思決定だけで着手でき、削減額がそのまま利益に上乗せされるため即効性が高いのが特徴です。たとえば、利益率5%の企業が100万円の利益を上乗せするには2,000万円の売上増が必要ですが、経費削減であれば100万円の支出をなくすだけで同じ効果が得られます。
「経費削減」と「経費節減」「コストカット」の違い
経費削減と似た言葉に「経費節減」や「コストカット」があります。経費節減は、電気をこまめに消す、コピー用紙の使用枚数を減らすなど、「使用量を抑える」取り組みを指すのが一般的です。これに対して経費削減は、契約プランの見直しやペーパーレス化のように、「支出そのものをなくす・発生する仕組みを変える」取り組みを指します。本記事では、従業員の我慢に頼る節約ではなく、仕組みを変えることで持続的に支出を減らす「経費削減」を中心に解説します。
経費削減に取り組むべき理由・メリット
経費削減は、業績が悪化したときの緊急対応と捉えられがちですが、本来は平時から取り組むべき経営戦略です。
主なメリットとしては、まず価格競争力の強化が挙げられます。原価や販管費を抑えられれば、同じ価格でも利益を確保しやすくなり、価格面での柔軟な対応が可能になります。また、経費が減れば損益分岐点が下がるため、売上が一時的に落ち込んでも赤字になりにくく、経営が安定します。さらに、削減によって生まれた資金を、設備投資や新規事業、人材への投資に振り向けられる点も大きなメリットです。
削減対象になる経費の種類と優先順位
経費削減を効率的に進めるには、まず自社の経費を「固定費」と「変動費」に分けて把握し、優先順位を付けることが重要です。
固定費(賃料・人件費・水道光熱費など)
固定費とは、売上の増減にかかわらず毎月ほぼ一定額が発生する費用です。代表的なものに、オフィスの賃料、人件費、水道光熱費、通信費、システム利用料、保険料、リース料などがあります。固定費は一度削減すれば、その効果が翌月以降も継続して積み上がるため、削減インパクトが大きいのが特徴です。
変動費(消耗品費・広告宣伝費・交通費など)
変動費とは、売上や活動量に応じて増減する費用です。消耗品費、広告宣伝費、交通費・出張費、外注費、原材料費、荷造運賃などが該当します。一つひとつは少額でも、積み重なると大きな金額になります。購買ルールや申請基準を整備することで削減しやすいのが特徴です。
削減の優先順位の付け方
すべての経費を同時に見直すのは現実的ではありません。優先順位を付ける際には、「削減効果の大きさ」と「事業・従業員への影響の小ささ」という2つの軸で考えるのがおすすめです。
縦軸に削減効果、横軸に事業への影響を取ったマトリクス図を作成し、各費目を配置してみましょう。「削減効果が大きく、影響が小さい」領域にある費目(使われていないシステムの解約、電力契約の見直しなど)から着手すると、社内の抵抗が少なく成果も出やすくなります。反対に「削減効果は大きいが影響も大きい」費目(人件費や品質関連コストなど)は、慎重に検討する必要があります。
【費目別】企業の経費削減アイデア
ここからは、費目ごとに具体的な経費削減のアイデアを紹介します。
オフィスコストの削減
リモートワークやフリーアドレスを導入して出社人数を減らせば、必要なオフィス面積を縮小でき、賃料や光熱費を大幅に削減できます。賃料は固定費のなかでも大きな割合を占めるため、オフィスの縮小・移転やシェアオフィスへの切り替えは、特に効果の大きい施策です。
ペーパーレス化による印刷費・保管コスト・印紙税の削減
請求書、契約書、給与明細、社内稟議などを電子化すれば、用紙代やインク代、複合機の保守費に加え、書類の保管スペースや郵送費も削減できます。電子契約を導入すれば、紙の契約書に必要だった印紙税も不要になり、契約件数が多い企業ほど効果が大きくなります。
消耗品・備品の購買ルール見直し
文房具やコピー用紙などの消耗品は、法人向けの通販サイトでまとめ買いをすることで単価を引き下げられます。あわせて、発注担当者や承認フロー、在庫の上限を決めるなど発注ルールを整備し、過剰在庫や重複購入をなくしましょう。個人の節約意識に頼るのではなく、無駄が発生しない仕組みをつくることがポイントです。
水道光熱費の削減
電力・ガス会社の契約プランを見直したり、より安価な事業者へ切り替えたりすることで、使用量を変えずに料金を下げられます。また、LED照明や省エネ型の空調設備への切り替えも有効です。初期費用はかかりますが、削減効果が長期間続くため数年で回収できるケースが多く見られます。従業員に冷暖房の我慢を強いる節電とは異なり、働きやすさを損なわずに削減できる点がメリットです。
通信費・システム費の見直し
法人携帯やインターネット回線は、契約当時のまま放置されていることが少なくありません。利用状況に合わせてプランを見直すだけで、月額料金を抑えられる可能性があります。また、導入したものの使われていないシステムやサブスクリプションサービスの棚卸しを行い、不要なものは解約しましょう。自社でサーバーを保有するオンプレミス型のシステムをクラウドへ移行すれば、保守費用や更新費用の削減にもつながります。
交通費・出張費の削減
Web会議ツールを活用すれば、社内会議や取引先との打ち合わせのための出張・移動を減らし、交通費や宿泊費を削減できます。移動時間がなくなることで、その時間を本来の業務に充てられるため、生産性の向上にもつながります。
広告宣伝費の費用対効果の見直し
広告宣伝費は、媒体ごとの効果を数値で検証することが重要です。問い合わせ数や受注につながった件数、顧客獲得単価などを計測し、効果の低い媒体は停止または縮小し、効果の高い媒体に予算を再配分しましょう。広告費を一律にカットすると売上まで落ち込むおそれがあるため、「効果測定に基づく再配分」という視点で取り組むことが大切です。
業務のアウトソーシング・ITツールによる自動化
経理や総務、給与計算などのノンコア業務は、外部の専門業者へ委託することで、担当者の人件費や残業代を抑えられる場合があります。また、経費精算システムや勤怠管理システムなどのITツールを導入すれば、手作業による入力や確認作業を自動化でき、業務時間の短縮につながります。人手不足への対策としても有効です。
補助金・助成金の活用
経費削減の取り組み自体に活用できる公的支援もあります。たとえば、ITツール導入の費用を支援する「IT導入補助金」や、省エネ設備の導入を支援する補助金などが挙げられます。要件や公募時期は年度によって変わるため、最新の情報は各制度の公式サイトで確認しましょう。
税理士への相談による節税
経費削減とあわせて検討したいのが節税です。税理士に相談すれば、各種の税額控除や特例の活用など、適法な範囲で税負担を減らし、手元に残る利益を増やす方法についてアドバイスを受けられます。経費削減で支出を減らし、節税で納税額を抑えるという合わせ技によって、キャッシュフローの改善効果はさらに高まります。
経費削減を成功させる5つのステップ
経費削減を思いつきで進めると、効果が見えないまま形骸化しがちです。次の5つのステップに沿って、計画的に取り組みましょう。
STEP1:損益計算書から経費の現状を可視化する
まずは、損益計算書や勘定科目ごとの内訳をもとに、「何に」「いくら」使っているのかを可視化します。月次・年次の推移や、売上に対する比率を確認すると、増加傾向にある費目や、業界水準と比べて割合が高い費目が見えてきます。現状を数字で把握することが、すべての出発点です。
STEP2:具体的な削減目標を設定する
次に、「経費全体の10%削減」「通信費を年間50万円削減」といった数値目標を設定します。目標を数値化することで、削減の対象と方向性が明確になり、社内で共有しやすくなります。あわせて「半年以内」「今期中」など期限もセットで設定し、進捗を管理できるようにしましょう。
STEP3:削減対象と優先順位を決める
可視化した経費と目標をもとに、どの費目から着手するかを決めます。前述のとおり、「削減効果の大きさ」と「事業・従業員への影響の小ささ」の2軸で評価し、影響が小さく効果の大きい費目から優先的に取り組むのが基本です。各施策の担当者・期限・想定削減額を一覧にしておくと管理しやすくなります。
STEP4:従業員に目的を説明し、全社で実行する
経費削減には現場の協力が不可欠です。ただし、突然の削減指示は「会社の経営が危ないのではないか」という不安を招きかねません。経営者自らが、削減の理由や、削減によって生まれた資金の使い道(賞与への還元や設備投資など)を説明し、前向きな取り組みであることを伝えましょう。従業員からの改善提案を募る提案制度や、成果に応じたインセンティブを設けるのも効果的です。
STEP5:効果を測定し、PDCAを回して継続する
施策を実行したら、施策ごとの削減額を定期的に測定し、目標に対する達成状況を確認します。効果の薄い施策は原因を分析して見直しましょう。経費削減は一度実施すれば終わりではなく、事業環境の変化に合わせて見直し続ける継続的な活動です。
経費削減で失敗しないための注意点
経費削減は進め方を誤ると、かえって企業の損失を大きくしてしまいます。次の点に注意しましょう。
安易な人員削減・賃金カットは行わない
人件費は削減効果が大きく見えますが、安易な人員削減や賃金カットは避けるべきです。残った従業員の業務負担が増え、長時間労働や離職を招くおそれがあります。人材が流出すれば新たな採用・教育コストが発生し、生産性低下も重なって、結果的に損失のほうが大きくなりかねません。
社員教育・研究開発など「未来への投資」は削らない
研修費や研究開発費は、削っても短期的には業績への影響が見えにくいため、削減対象になりやすい費目です。しかし、従業員の成長機会を奪えば、モチベーションの低下や離職につながります。また、研究開発の停滞は中長期的な競争力の低下を招きます。これらは「経費」ではなく「未来への投資」と捉え、安易に削らないようにしましょう。
商品・サービスの品質に関わるコストは慎重に判断する
原材料の品質を落としたり、品質管理の工程を省いたりすると、顧客に不利益を与え、信頼を失うおそれがあります。同様に、セキュリティ対策費の削減も危険です。情報漏えいやシステム障害が発生すれば、損害賠償や対応費用など、多大な損失につながります。
従業員のモチベーションを下げる施策を避ける
福利厚生の一方的なカットや、過度な冷暖房の制限、備品の極端な制約など、従業員の働きやすさを損なう削減は、士気の低下を招きます。モチベーションが下がれば生産性も落ち、削減額以上の損失を生む可能性があります。
短期成果を求めず、長期的視点で取り組む
短期間で大きな成果を出そうとすると、本来必要なコストまで削ってしまうリスクが高まります。経費削減は、数カ月から年単位でPDCAを回しながら、少しずつ効果を積み上げていくものです。無理のない計画で継続できる仕組みをつくりましょう。
経費削減の取り組みは二見達彦税理士事務所にご相談ください
経費削減は、業績悪化時の緊急対応ではなく、平時から継続的に取り組むべき経営戦略です。固定費と変動費を可視化し、「削減効果の大きさ」と「事業・従業員への影響の小ささ」で優先順位を付けたうえで、仕組みを変える施策から着手することが成功のポイントです。一方で、人員削減や教育費・品質関連コストの削減など、企業の将来や信頼を損なう施策は避けなければなりません。
とはいえ、「どの経費から手をつければよいかわからない」「削減目標をどう設定すべきか判断できない」と悩む経営者の方も多いのではないでしょうか。二見達彦税理士事務所では、損益計算書をもとにした経費の現状分析から、優先順位の設定、節税対策や補助金活用まで、税務と経営の両面から経費削減をサポートしています。自社の経費を見直したいとお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
▼関連記事
節税と脱税の違いとは?税金を正しく抑えるためのポイントを解説
福利厚生で賢く節税!会社も社員も豊かになる仕組みとは?
