反面調査とは?税務調査で取引先に調査が入る理由と回避するための対策を解説

税務調査が行われると、取引先や金融機関に対して、反面調査が実施されることがあります。税務署から関係者に連絡が入ると聞き、「何を疑われているのか?」「調査を回避したい」などと不安に思う人もいるでしょう。
反面調査は、申告内容や取引実態の裏付けで行われますが、適切に対応すれば実施の必要性を低くできる場合があります。そこで本記事では、反面調査が実施される理由や対象範囲をはじめ、回避できる可能性や対策についても解説します。
反面調査とは?
反面調査とは、税務調査を受けている対象者の取引先や金融機関など、第三者に対して行われる調査です。
納税者が提出した書類やデータだけでは事実を確認できない場合に、取引相手が保管している資料や回答と照合し、申告内容の正確性を確かめます。反面調査は、調査自体を目的とするものではなく、税務調査における疑問点を解消する補完的な手段です。
税務調査と反面調査の違い
通常の税務調査との違いは、確認の対象です。通常は、調査対象となった納税者本人に確認します。一方の反面調査では、仕入先や金融機関などの第三者に対し、取引の事実や金額を確認します。
また反面調査は、単独で行われるものではありません。本人への税務調査だけでは疑問点を解消できない場合に限り、申告内容や取引実態の補完的な調査として実施されます。
反面調査は法令に基づいて行われる
反面調査は、国税通則法に定められた「質問検査権」に基づく税務調査の一つです。調査官は、申告内容を確認する必要がある場合、取引先などの関係者に質問したり、帳簿書類の提示・提出を求めたりできます。
ただし、無制限に調査できるわけではなく、税務調査で生じた疑問点を確認する範囲で実施されます。
反面調査が行われる4つの理由
ここでは、反面調査につながりやすい代表的なケースを紹介します。調査が行われる4つの主な理由は、以下の通りです。
自社資料だけаでは確認できない
帳簿や請求書・領収書などから、取引内容を十分に確認できない場合、反面調査が行われることがあります。取引先の請求書や支払記録などを確認し、取引の有無や金額を裏付ける必要が生じるためです。
たとえば、外注費を計上していても請求書が残っていなければ、実際に業務を依頼したのか、外注先に確認される可能性があります。書類を紛失・廃棄している場合だけでなく、記載内容が不十分な場合も同様です。領収書などの証憑書類の扱いについては、以下の記事も参考にしてください。
▼関連記事:
「領収書とレシートの違いは?インボイス制度での注意点と併せて解説」
申告内容と書類に不自然な点がある
申告書に記載された金額と、帳簿や入出金記録などの書類内容が一致しない場合にも、反面調査が行われる可能性があります。特に確認されやすいのが、売上・外注費・仕入・現金取引です。
たとえば、請求額と帳簿上の数値が異なる場合や、預金口座への入金が売上として計上されていない場合が挙げられます。その際には、取引先側の帳簿や振込記録が照会されることがあるでしょう。
所得隠し・脱税などの不正取引が疑われる
売上の除外や架空経費など、不正が疑われる場合にも、反面調査が行われる可能性が高まります。本人が作成した帳簿や回答だけでは不正の有無を判断しにくいため、取引先が保管する資料から、客観的な証拠を集める必要があるためです。
たとえば、取引先が支払った金額よりも少ない売上しか計上されていなければ、売上の一部を申告から除外している可能性があります。また、実態のない仕入れを計上している疑いがあれば、支払先に業務内容や金銭の受領状況を確認されるでしょう。
税務調査に非協力的な態度を取った
調査官から求められた資料を正当な理由なく提出しない、質問に対して曖昧な回答を繰り返すといった対応も、反面調査につながる原因になります。
納税者から十分な情報を得られなければ、調査官は取引先などに確認し、実態を把握せざるを得ないからです。特に、存在する資料の提出を拒んだり、質問のたびに説明が変わったりすると、何かを隠していると疑われる可能性があります。
反面調査の対象範囲と内容
反面調査の対象や確認内容は、すべてのケースで一律ではありません。確認が必要な内容に応じて、調査先や調べられる範囲が決められます。
ここでは、反面調査の対象となる相手先や、一般的な調査内容について解説します。
調査対象となる相手先
反面調査の対象になり得る相手先は、販売先・仕入先・外注先・業務委託先・取引銀行などが挙げられます。必要に応じて、元従業員や納税者の代理人に質問が行われる場合もあるでしょう。
ただし、関係者すべてが一律に調査されるわけではありません。どの相手先を調査するかは、疑問が生じている取引内容や、調査の進行状況などを踏まえて判断されます。
確認される書類と質問内容
反面調査では、帳簿や請求書・契約書をはじめ、領収書や預金口座の入出金記録などが確認されます。また帳簿書類に限らず、調査目的を達成するために必要と認められる資料も確認の対象になり得ます。
口頭での質問では、取引金額や契約に至った経緯などを聞かれるのが一般的です。また反面調査で得られた資料や回答は、納税者側の帳簿や説明と照合されます。双方の内容が一致しなければ、追加資料の提出や、さらに詳しい説明を求められる可能性があるでしょう。
反面調査の一般的な流れ
まず、納税者本人への税務調査で、取引の有無や金額について疑問点が見つかります。納税者側の資料や説明だけでは解決できない場合、調査官が取引先などに連絡します。連絡の手段は、電話・文書や訪問など、さまざまです。
その後、取引先が保管している書類やデータなどを確認し、担当者から取引内容の聞き取りを行います。そこで得られた情報は、納税者側の申告や説明と照合されます。内容に食い違いがあれば、納税者に再度質問したり、追加の資料提出を求めたりする流れです。
反面調査は拒否・回避できるのか?
反面調査の連絡を受けた場合、拒否や回避はできないのかと思う人もいるでしょう。対応の可否は、調査の必要性や置かれている状況によって異なります。
ここでは、反面調査を拒否できるケースや交渉の余地、日程変更や守秘義務との関係について解説します。
正当な理由がなければ拒否できない
反面調査に対し、正当な理由がないにも関わらず応じないと、罰則の対象になる可能性があります。
国税通則法第128条では、質問に答えない、虚偽の答弁をする、検査を拒む、正当な理由なく資料の提示・提出に応じないといった行為について、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。
▼参照元:
e-Gov法令検索
ただし、税務当局も必要性を説明し、相手方の理解と協力を得ながら調査を進める方針を示しています。不明点がある場合は、拒否するのではなく、対象や目的を確認しましょう。
必要性がない場合は交渉の余地がある
納税者本人が必要な書類やデータをすべて提出しており、その内容から取引の事実を十分に確認できる場合は、反面調査を行う必要性が低いと主張できる余地があります。
取引先への調査は、企業の信用や取引関係に影響を及ぼす可能性があるため、「どの疑問点を確認する調査なのか」「自社資料では確認できないのか」と説明を求めることが考えられます。
ただし、最終的に判断するのは税務当局です。経営者が一人で必要性や法的範囲を判断するのは難しいため、税理士に状況を説明し、調査官と交渉してもらう方法が現実的です。
日程変更の申し出は可能
担当者の不在や繁忙期など、やむを得ない事情がある場合は、日程変更を申し出ることが可能です。
ただし、調査を先延ばしにする目的で日程変更を繰り返すと、非協力的な対応と受け取られる可能性があります。「担当者が出張中である」「帳簿を外部倉庫から取り寄せる必要がある」など、変更が必要な理由を具体的に説明しましょう。
代替日を複数提示し、調査に協力する姿勢を示すことも大切です。
取引先による情報提供は守秘義務違反になるのか
反面調査を受けた取引先が、税務署に請求書や取引内容を提示した場合、「自社との守秘義務に違反するのではないか」と疑問に思う人もいるでしょう。反面調査は、税務職員の質問検査権に基づいて行われます。そのため、取引先が調査に必要な範囲で資料を提示し、質問に回答しても、基本的に守秘義務違反には該当しません。
ただし、秘密保持契約の内容や、医師・弁護士などに課される職業上の守秘義務によって扱いは異なります。個別のケースについては、法令を確認すると良いでしょう。
反面調査の可能性を下げる対策
反面調査を確実に回避する方法はありませんが、税務調査への備えや対応次第で、実施される可能性を下げられる場合があります。ここでは、経営者が日頃から取り組める対策や、税務調査を受ける際の注意点について解説します。
日頃から必要書類を正確に保管しておく
反面調査につながる大きな要因は、自社の資料だけでは取引の事実を確認できないことです。そのため、日頃から帳簿を正確に記帳し、請求書や領収書などを取引ごとに整理しておきましょう。
また定期的に、帳簿の金額と請求書、預金口座の入出金記録が一致しているかなどを確認することも重要です。特に、現金取引や外注費・業務委託費などは、相手先や業務内容が分かる資料を残す必要があります。電子データについても、電子帳簿保存法などのルールを踏まえ、必要な期間にわたり検索できる状態で保存しましょう。
税務調査には協力的な対応を心がける
税務調査では、調査官の質問に回答し、求められた資料をできるだけ速やかに提出することが大切です。資料を意図的に隠したり、曖昧な回答を繰り返したりすると、申告内容への疑念が深まり、取引先への確認が必要と判断される可能性があります。
すぐに回答できない場合は、推測で答えるのではなく、資料や担当者に確認してから回答する旨を伝えることが大切です。確認できる事実と資料に基づき、落ち着いて対応しましょう。
調査官の質問に一貫した説明ができるよう準備する
税務調査では、一貫した説明をすることが重要です。たとえば、経営者と経理担当者で説明が異なったり、質問されるたびに取引の内容や目的が変わったりすると、調査官に疑念を持たれる可能性があります。その結果、取引先への確認が必要と判断されることもあるでしょう。
調査前には、対象となる年度の大口取引や特殊な取引、金額が大きく変動した勘定科目などを確認します。回答が分からない場合は無理に答えず、資料や担当者に確認してから、正確な内容を回答することが大切です。
税務調査の立ち会いを税理士に依頼する
反面調査のリスクを抑えるには、税務調査の事前準備や立ち会いを税理士に依頼すると良いでしょう。
税理士が帳簿や証憑書類を事前に確認すれば、不足する資料や、調査官から質問されやすい取引を把握しやすくなります。税務調査の当日は、税理士が質問の意図を整理し、調査官へ説明することも可能です。また、求められた資料の範囲や反面調査の必要性に疑問がある場合には、調査官へ理由を確認し、対応範囲について交渉を行ってもらえるでしょう。
税務調査における税理士の役割や、立ち会いを依頼するメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。
▼関連記事:
税務調査は税理士に任せるべき?立ち会いを依頼するメリットや税理士の選び方を解説
反面調査が不安なら税務調査に強い税理士へ相談を
反面調査は、納税者側の帳簿や説明だけでは取引の実態を確認できない場合に、第三者へ事実確認を行う調査です。資料の不足や帳簿との矛盾、不正の疑いなどがあると、実施される可能性が高まります。
取引先への調査による影響を抑えるには、日頃から帳簿を正確に管理し、税務調査に誠実に対応することが重要です。また、反面調査の必要性や範囲に疑問がある場合は、専門知識を持つ税理士から、調査官へ説明してもらう方法があります。
二見達彦税理士事務所は、税務調査の事前準備から当日の立ち会い、調査後の対応まで一貫してサポートしています。反面調査の可能性を指摘された方や、取引先への影響に不安を感じている方は、お気軽にご相談ください。
