合同会社から株式会社へ変更するには?変更のメリットや手続きの流れを解説

合同会社として事業をスタートしたものの、会社の成長とともに、株式会社への変更を考える人も多いのではないでしょうか。株式会社に変更すると、信用や資金面でメリットがある一方、運営の手間が増えるなどの注意点もあります。そのため、合同会社のままがよいのか、株式会社へ変更すべきなのかと迷うケースも少なくありません。
そこで本記事では、合同会社から株式会社へ変更する方法やメリット・注意点、具体的な手続きの流れについて解説します。
合同会社から株式会社へ変更できる?
合同会社から株式会社に変更する際、組織変更という手続きをすることで、株式会社に変更できます。ここでは、手続きの概要や、新設との違いについて解説します。
組織変更の手続きで対応できる
合同会社から株式会社へ変更する場合は、会社法で決められた「組織変更」という手続きを行います。組織変更とは、会社の法人格を維持したまま、会社形態だけを変更できる制度です。近年では、事業拡大・資金調達・採用強化などを目的として、合同会社から株式会社へ変更する企業も増えています。
会社を設立し直す方法との違い
合同会社を解散して新たに株式会社を設立する場合には、法人格が別になります。一方の組織変更では、法人格を維持したまま会社形態だけを変更できるため、既存の取引関係や契約を引き継ぐ点が特徴です。会社を新設し直すより「組織変更」を行うほうが、実務上の負担を抑えやすいでしょう。
契約や銀行口座を引き継ぎやすい
組織変更では、法人格を維持したまま株式会社へ移行できます。そのため、既存の取引契約や銀行口座、顧客との継続契約なども、基本的にそのまま引き継ぐことができます。たとえば、毎月継続している取引契約や、既存顧客との契約を一から結び直さずに済むでしょう。金融機関や取引先への変更届は必要ですが、新会社を設立する場合と比べるとスムーズに移行しやすい点が特徴です。
合同会社と株式会社の主な違い
ここでは、合同会社と株式会社の主な違いについて解説します。それぞれの特徴を知ることで、合同会社のままがよいか、株式会社へ変更すべきかを判断しやすくなるでしょう。
資金調達の方法
合同会社では、出資者から資金を集めて事業を運営します。対する株式会社では、株式を発行できるため、より幅広い資金調達が可能です。たとえば、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を受けたり、将来的には株式上場を目指したりできます。
合同会社は経営の自由度が高い反面、大規模な資金調達には向かないケースもあります。そのため、事業拡大や外部投資を視野に入れるタイミングで、株式会社化を検討する企業も少なくありません。
社会的信用・知名度の差
日本では、合同会社よりも株式会社の数が圧倒的に多く、一般的にも「法人=株式会社」の認識を持つ人は多いでしょう。そのため、合同会社というだけで、不安を感じる取引先や求職者がいることも事実です。
合同会社だから信用が低いとは限らないものの、対外的な知名度や印象には差が出やすい傾向にあります。特に大企業との取引や採用活動では、株式会社であることが、一定の安心感につながるケースも見受けられます。
運営ルールと意思決定の自由度
合同会社は、出資者同士で会社運営のルールを柔軟に決めやすい点が特徴です。たとえば、利益配分を出資比率に関係なく決めることも可能です。
対する株式会社の場合には、株主総会や取締役など、法律上必要な機関を設ける必要があります。そのため、合同会社と比べると、運営ルールは厳格になるでしょう。ただし、組織としての透明性やガバナンスが重視される場面では、株式会社の仕組みのほうがプラスに働く傾向にあります。
採用活動への影響
採用活動では、会社名の印象が応募率に影響しやすいといえます。特に転職市場では、「株式会社」のほうが認知されやすく、安心感を持たれやすい傾向にあります。実際に、合同会社というだけで、応募を避けるケースも見受けられます。そのため、従業員の採用を本格化したいタイミングで、株式会社化を検討する企業も少なくありません。
合同会社から株式会社に変更するメリット
合同会社から株式会社へ変更すると、さまざまなメリットがあります。株式会社化によって得られる代表的なメリットは、以下の通りです。
社会的信用・対外的なブランド力が上がる
株式会社へ変更することで、取引先や金融機関からの印象が変わりやすくなります。特に日本では株式会社の認知度が高い傾向にあるため、合同会社よりも「しっかりした会社」というイメージを持たれやすいでしょう。実際に、名刺・会社案内・ホームページなどに「株式会社」と表記されていると、取引先や求職者が安心感を持ちやすくなります。
実態が重要ではありますが、対外的なブランド力を高めたい企業にとって、株式会社化はメリットになり得ます。
株式発行による資金調達の幅が広がる
株式会社になると株式を発行できるため、資金調達の可能性が広がりやすいでしょう。たとえば、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を受ける際も、株式会社のほうが受け取りやすいです。
また大きな資金が必要になる場合に、融資だけでなく出資という選択肢を持てる点は大きなメリットといえるでしょう。なお、資金調達や資金繰りについて詳しく知りたい場合には、「資金繰りが厳しいことの原因分析から改善策、資金調達まで徹底解説」も併せてご覧ください。
将来的な上場(IPO)が可能になる
合同会社のままでは、証券取引所への上場はできません。そのため、将来的に上場(IPO)を目指す場合には、株式会社への変更が必須となります。実際には、上場するための準備には長い時間がかかるため、早い段階で株式会社へ移行する企業も少なくありません。現時点でIPOを具体的に検討していなくても、将来的な選択肢を広げられる点は、株式会社化のメリットの1つといえるでしょう。
求人・採用で優秀な人材が集まりやすくなる
求職者の中には、株式会社のほうが安心感を持ちやすい人もいます。特に転職市場では、会社名だけで応募を判断するケースもあるため、株式会社化が採用面でプラスに働く可能性があります。また、株式会社にすることで、規模の拡大や成長性をイメージしてもらいやすくなる点もメリットです。採用を強化したいタイミングで、会社形態を見直すことは、1つの戦略にもなるでしょう。
取引先・金融機関からの評価が向上する
取引先や金融機関によっては、株式会社であることを取引条件としているケースがあります。特に大企業との取引では、与信や契約の都合上、株式会社が求められることも少なくありません。また、融資審査の際にも、株式会社のほうが評価されやすい場合があります。事業拡大に伴い、より大きな取引を目指す企業にとっては、株式会社化が後押しになることもあるでしょう。
変更前に知っておきたい注意点
株式会社化には多くのメリットがある一方で、注意すべき点もあります。主な注意点は、以下の通りです。
費用と時間がかかる
合同会社から株式会社への変更には、一定の費用と時間が必要です。登録免許税などの法定費用だけでも10万円程度かかるほか、司法書士や税理士など専門家へ依頼する場合は別途で報酬が発生します。また、債権者保護手続きの期間も必要になるため、一般的には完了まで2〜3ヶ月程度かかるケースが多いでしょう。
株主総会・取締役会など運営の手間が増える
株式会社になると、株主総会や役員変更登記など、法律で定められた手続きが必要になります。機関設計によっては取締役会や監査役の設置が求められる場合もあり、合同会社と比べて運営負担は増えやすくなるでしょう。
また、決算公告など株式会社特有の義務も発生します。自由度の高い運営を重視している企業にとっては、運営する際の手間を負担に感じる可能性があります。
柔軟な利益配分ができなくなる
合同会社では、出資の比率に関係なく、利益配分を自由に決められる点が特徴です。しかし、株式会社化すると、原則として持株比率に応じた配当となります。そのため、特定メンバーへ柔軟に利益を還元していた場合には、運営方針の見直しが必要になる可能性があります。経営者同士の関係性や将来的な利益設計も踏まえたうえで、株式会社化を検討することが大切です。
合同会社から株式会社へ変更する手続きの流れ
合同会社から株式会社へ変更する際は、会社法に基づいて手続きを進める必要があります。ここでは、合同会社から株式会社へ変更する際の流れについて見ていきましょう。
STEP1:組織変更計画書の作成
まずは、組織変更計画書を作成します。組織変更計画書とは、合同会社から株式会社へ変更する際の内容をまとめた書類です。具体的には、株式会社に変更する日や新しい商号、機関設計や発行可能な株式の総数などを記載します。
また組織変更計画書は、会社法という法律で必要となる重要書類であり、後続の登記の手続きにも関わります。法務局のテンプレートを参考に作成することも可能ですが、不安がある場合には、税理士や司法書士などの専門家へ相談すると安心です。
STEP2:株式会社としての役員・機関設計の決定
次に、株式会社として必要な機関設計を決定します。たとえば、取締役を誰にするのか、取締役会や監査役を設置するのかなどを整理し、その内容を定款にも反映させます。合同会社とは異なり、株式会社では法律上求められるルールが増えるため、将来的な運営体制も見据えて設計することが大切です。特に、今後の採用や資金調達を考えている場合には、外部から見たガバナンス体制も意識するとよいでしょう。
STEP3:社員全員からの同意取得
合同会社から株式会社への組織変更を行うには、原則として出資者である社員全員の同意が必要です。会社法で定められている要件であり、書面による同意取得が求められます。複数の出資者がいる場合には、事前に変更理由や今後の方針を共有したうえで、十分に話し合っておくことが大切です。後からトラブルにならないよう、議事録や同意書も適切に保管しておくとよいでしょう。
STEP4:官報公告による債権者保護手続き
組織変更を行う際には、債権者保護手続きとして官報公告を行います。官報公告とは、取引先や債権者に対して、会社形態が変更されることを知らせる手続きです。また公告後は、最低1ヶ月間ほど待つ必要があります。この期間中に債権者から異議申し立てがなければ、次の登記手続きへ進むことが可能です。
STEP5:合同会社の解散登記と株式会社の設立登記申請
最後に、法務局へ組織変更の登記申請を行います。登記が完了すると、正式に株式会社として事業を継続できるようになります。その後は、税務署・年金事務所・金融機関などで、各種の変更手続きも必要です。漏れがないよう、事前にチェックリストを作成しておくとスムーズでしょう。
株式会社への変更を検討すべきタイミング
合同会社から株式会社への変更について、どのタイミングで行うべきか悩む経営者も少なくありません。ここでは、株式会社化を検討しやすい代表的なタイミングについて解説します。
取引先・金融機関から求められた
取引先や金融機関から、株式会社のほうが望ましいと言われた場合に、組織変更を検討するケースは多いです。特に大企業との契約では、社内の規定上、株式会社であることが条件になることがあります。また、融資や取引条件の面でも、株式会社のほうが有利になる場合があります。ビジネス上で支障が出始めたタイミングは、変更を具体的に考えるサインだといえます。
外部から出資・投資を受けたい
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を受ける場合、多くは株式会社であることが前提条件になります。合同会社では株式発行ができないため、出資スキームに制約が出やすいからです。今後、事業拡大に向けて外部資金を積極的に活用したいと考えている場合には、早めに株式会社化を検討しておくとスムーズでしょう。
従業員を採用し、事業を拡大したい
組織を拡大し、採用を本格化したい時も、株式会社化を検討するタイミングの1つです。求職者によっては、会社形態が株式会社であることを、応募判断の1つにしているケースも見受けられるからです。実際に、合同会社よりも株式会社のほうが、安心感や成長性をイメージできる候補者も多いでしょう。
上場(IPO)を視野に入れ始めた
上場(IPO)を目指す場合、株式会社を検討する必要があります。なぜなら、上場できる必須条件の1つに「株式会社である」ことが含まれるからです。
また上場の準備には、内部統制やガバナンス整備など多くの時間が必要になるため、早めに株式会社へ変更する企業も少なくありません。具体的な上場計画がなくても、「将来的な上場への可能性を残しておきたい」と考えた段階で、変更を検討するとよいでしょう。
会社の売却・M&Aを検討し始めた
M&A市場では、株式会社のほうが有利に働く傾向にあります。なぜなら、株式会社は株式譲渡によって経営権を移しやすく、M&Aの手続きを進めやすいからです。
また投資家や買収企業から見ても、株式会社のほうが一般的であり、理解しやすい傾向にあります。そのため、将来的に会社売却やM&Aの可能性を考えている場合には、株式会社化を検討するケースが多いでしょう。
株式会社に変更する場合、専門家の活用がおすすめです
合同会社から株式会社への変更は、会社法に基づく手続きが必要であり、専門的な知識が求められます。内容に不備があると、手続きがスムーズに進まない可能性もあるでしょう。
また、会社の状況によって最適な進め方は異なるため、事前に専門家へ相談すると安心です。
二見達彦税理士では、合同会社から株式会社への変更に伴う税務対応だけでなく、司法書士資格を活かした登記手続きのサポートも行っています。会社の状況に合わせて対応するので、合同会社から株式会社への変更を検討している場合には、お気軽にご相談ください。
